嵐、ジェジュン……この時代に求められる深いメッセージ性を感じさせる作品 新譜からピックアップ
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昨年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)で初披露された嵐のニューシングル『カイト』、切ないラブソングを中心にしたジェジュンのカバーアルバム第2弾『Love Covers II』。この時代に求められる、深いメッセージ性を感じさせる5作をピックアップします。
(関連:NHK2020ソング 「カイト」 スペシャルムービー)
●嵐「カイト」
2019年末の『NHK紅白歌合戦』で初披露された「カイト」が、ついにCDリリース。NHK2020ソングとして制作され、嵐と米津玄師によるコラボレーションが実現したこの曲は、未来に対する希望やアスリートへのエールが込められているわけだが、自己犠牲的な努力を強いることなく、楽曲の主人公自身が一人で抱いた目標や夢に向かって少しずつ進んでいくことの素晴らしさ、愛しさを描いている。それを象徴しているのが〈いつもの右ポケットに/誰も知らない物語を/密かに忍ばせて〉というフレーズだ。国民的スターでありつづける嵐、新しい世代を代表するアーティストである米津が、東京2020に向けた楽曲を通し、“あなたはあなたであればいい”というメッセージを伝えたことには大きな意義があると思う。メンバー一人ひとりの歌声をじっくり味わえるアレンジも、楽曲のテーマを際立たせている。
●ジェジュン『Love Covers II』
オリコンウィークリーチャートで1位を記録した『Love Covers』に続く、カバーアルバム第2弾『Love Covers II』が到着。コロナ禍の渦中、「皆様が大変な今の時期に、自分に何ができるのかを考えまして、皆様が知っている楽曲を歌って、早く自分の唄声を届けさせていただくのが良いかと思い」(ジェジュンのコメントより)という動機で制作された本作には、「たしかなこと」(小田和正)、「セカンド・ラブ」(中森明菜)、「別の人の彼女になったよ」(wacci)、「逢いたくていま」(MISIA)などを収録。大切な人、愛する人への深い思い、いまは離れている人に向けた切ない感情を綴った楽曲を切々と歌い上げている。社会のムードに合わせて、“みんなが聴きたい歌を歌う”ことにフォーカスした作品だ。
●ヨルシカ『盗作』
ボカロPとしても活躍しているn-buna、女性シンガーのsuisによるバンド、ヨルシカ。1stアルバム『だから僕は音楽を辞めた』、2ndアルバム『エルマ』で“音楽を辞めることにした青年と、彼から送られてきた手紙に影響を受け、音楽を作り始める女性”の物語を描いたヨルシカは、新作『盗作』において、“オリジナリティとは何か?”というテーマを掲げた。先行する音楽、映画、文学などの影響を受けながら、〈まだ知らない愛を書きたい。/この心を満たすくらい美しいものを知りたい。〉(「盗作」)という渇望を綴った本作は、このバンドの創作に対する強烈なモチベーションに直結している。ギターロック、エレクトロ、ファンクなどを融合させたサウンドメイク、楽曲に込められた物語性/メッセージ性を生々しく響かせるsuisのボーカルも最高。
●DAOKO『anima』
DAOKO自身が作詞・作曲した楽曲を、彼女自身がビートメイカー、アレンジジャーとともに制作したニューアルバム『anima』。ドラムンベース的なテイストを取り入れた「ZukiZuki」、R&Bとエレクトロを融合がせた「Sorry Sorry」など、音楽的なハイブリッド感覚はさらに進化。DAOKO特有の言語感覚をたっぷり含んだリリック、抽象的にしてエキゾチックな雰囲気のボーカルを含め、個性と大衆性を兼ね備えた作品に仕上がっている。タイトル曲「anima」の〈悲しいがな我々は/ひとつにはなれない〉〈どうか争いがおきませんように〉というラインも絶品。個であることを肯定し、分かり合えないことを受け入れたうえで、多様な社会を生み出したい。この曲の歌詞からは、そんなメッセージを感じ取ることができる。
●Girls2『私がモテてどうすんだ』
ドラマ『アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!』『魔法×戦士 マジマジョピュアーズ!』、『ひみつ×戦士 ファントミラージュ!』の主演キャストによるガールズ・パフォーマンスグループ・Girlsの新作EP『私がモテてどうすんだ』。映画『私がモテてどうすんだ』の主題歌として制作されたタイトル曲は、華やかなバンドサウンド、ソウルと歌謡曲が混ざり合うメロディが印象的なアッパーチューン。さらに注目すべきは〈恋も愛もくだらないわ〉〈情熱で生きてんの〉〈なにレベル分けして変えてんの?〉などのフレーズがちりばめられた歌詞。不器用ながらも自分らしく恋愛にぶつかろうとする姿もまた、この曲の魅力だろう。(森朋之)