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『私の家政夫ナギサさん』自分の尺度の幸せを掴む難しさ メイの周囲に結婚相手候補が続々登場

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リアルサウンド

 理想の結婚相手は「今の生活を1ミリも変えなくていい人がいい」。

 わかる、わかるよ、わかりみが深いよ……と、すべての働く女子から聞こえてきそうな、セリフが飛び出した。『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)第4話。

参考:大森南朋、松重豊や光石研らとは一味違う“癒し系おじさん”俳優に 「何か裏がありそう」との声も

 仕事はバリバリこなすけれど家事は苦手なメイ(多部未華子)は、「いつかは結婚」と思いながらも、具体的に結婚している自分の姿が想像できない。母・美登里(草刈民代)から「メイには仕事も家事も両立できるようになってほしい」と育てられたメイ。だが、美登里は結婚と同時に仕事を辞めている。一番身近な大人の女性である“お母さん”から「自分のようになってはダメ」と言われてしまっては、他にロールモデルとなる女性を探さなければならない。だが、なかなかその「仕事も家事も両立」が難しいのだ。そんな完璧にやるなんて、24時間じゃ全然足りない。

 バリバリと仕事をこなすアラサー女性は、自分の花園を築いているタイミングだ。仕事も覚えて面白くなってきたところ。金銭的にも自由がきくし、オシャレも、旅行も、楽しい時期。自己投資した分だけ内面も外見も磨かれていく実感もある。だから「今の生活を1ミリも変えたくない」のだ。

 もちろん、頭ではわかっている。結婚とは1人でするものではないのだから、パートナーがいれば生活は変わらざるを得ないということを。きっと休日も好きなだけ寝てるわけにもいかないだろう。今よりも早起きして2人分の朝食を作って、2人分の洗濯をして、仕事から帰ってきたら2人分の洗濯物を取り込んで、畳んで……と、メイに至っては自分の分だってできていないのに、2人分もなんて想像できるわけがない。

 時間もお金も100%自分のために使っても足りないくらいの生活なのに、そこに誰かを入れる余裕なんて。でも、それを変えてもいいと思えるほどの相手=運命の人が、「いつか」現れるかもしれない。そんな淡い期待を抱きながら、今日も仕事に勤しむのだ。

 それはアラサー男性も一緒と言われるかもしれない。でも、まだまだ女性の多くが「家事をしなければ」という思いにかられてしまうのだ。嫁入り前の女が家政夫なんて雇ってたら世間体が悪いと感じるように。そこが、火曜ドラマの先輩である『逃げるは恥だが役に立つ』の平匡(星野源)さんとは異なるところ。同じ家事代行サービスでも男女逆転するだけで、「父親だ」なんてウソをつかなければならないのだ。

 でも、私たち視聴者は知っている。いっそ家政夫のナギサさん(大森南朋)と結婚すれば、メイの生活の変化が最小限で済むことを。しかも、ナギサさんも「お母さん」という夢が叶えられるということを。でも、そのメリットの合致にまだ彼らは気づいていない。そもそもメイにとって、ナギサさんは未だに謎多き存在だ。メイの父・茂(光石研)がいろいろと聞いてくれたおかげで、今は独身であることは明かされたものの、なぜメイの家族の問題をそこまで懸命にサポートしようとするのかなど、謎は深まる一方だ。

 「結婚を前提に」と告白してきた医師の肥後(宮尾俊太郎)。ライバルと睨んでいたはずなのに意外と話が合うことがわかった田所(瀬戸康史)。メイの周囲には結婚相手候補たちが続々と出てくる。「結婚はタイミングと勢い」というアドバイスを真に受けるなら、担当エリアからちょうど移動する肥後との「タイミング」はバッチリ。急接近をした田所との「勢い」もある。

 しようと思えば、すぐにでもできそうなメイの結婚。だが、結婚はゴールではなく、スタート。それまでお互いが1人で作り上げてきた花園を大切にしてくれる人と、新たな花園を2人で協力して築いていく始まりなのだ。果たしてメイは、母親の呪縛にもとらわれず、世間体に振り回されず、自分の尺度で幸せだと確信できる選択をすることができるのだろうか。

(文=佐藤結衣)