乃木坂46、「ジコチューで行こう!」は面白い試みがなされた楽曲? 『CDTVライブ!ライブ!』披露曲に注目
音楽
ニュース

乃木坂46が、8月10日放送の『CDTVライブ!ライブ!夏フェス4時間スペシャル』(TBS系)に生出演。番組内の「みんなが選んだ“夏ソング”」企画の中で「ジコチューで行こう!」「I see…」の2曲が披露される予定だ。そこで本稿では2曲の魅力はどんなところにあるのかを掘り下げてみたい。
「ジコチューで行こう!」は2018年8月8日にリリースされた21枚目シングルの表題曲。選抜メンバーは21名で、齋藤飛鳥がセンターを務め、鈴木絢音、岩本蓮加、梅澤美波が初の選抜入りを果たした。キュートな“ジコチューポーズ”の振り付けと、キャッチーなメロディが魅力的なアップテンポなナンバーだ。ライブでもよく披露され、盛り上がりを加速させる定番のナンバーとしてファンの間でも高い支持を集めている。中村太洸氏が監督を務めたベトナムのダナンを中心に撮影されたMVも、現地の花火大会を楽しむ無邪気なメンバーの姿が映されるなど見どころたっぷりだ。
タイトルの「ジコチューで行こう!」はパッと見ネガティブな意味で捉えられる可能性もある。実際、同曲が発表された当初は「乃木坂っぽくない」という意見もネット上で目にした。しかし実際に歌詞で表現されているのは、「限られた時間の中で自分らしくやりたいことをしよう」というストレートかつ前向きな内容だ。
作詞を手掛けたのは総合プロデューサーの秋元康。秋元といえば2013年に放送された『密着!秋元康2160時間 ~エンターテインメントは眠らない~』(NHK BSプレミアム)の中で、乃木坂46「春のメロディー」のMVをチェックした後、乃木坂46合同会社代表の今野義雄氏に対し「何をしたいのかわからない」「こんなのはAKB48グループみんながやっている。それだったら乃木坂はAKBの後を追いかけるしかない」「だから違う事をやれって言ってるじゃん」と痛烈なダメ出しをする場面があった。筆者は「ジコチューで行こう!」が発表された当時、歌詞を読んでそのシーンがパッと頭に浮かんだ。
当時の乃木坂46は『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に3年連続で出場を果たし、2017年の『日本レコード大賞』では「インフルエンサー」で初の大賞に輝いた。“AKB48の公式ライバル”としてデビューした彼女たちも大人気のアイドルグループへと成長していたが、〈みんなに合わせるだけじゃ/生きてる意味も価値もないだろう/やりたいことをやれ/ジコチューで行こう!〉という歌詞の内容を踏まえると、「もう一回り大きくなるために頑張れ」と秋元が乃木坂46メンバーにあてたメッセージのようにも思えたのだ。そしてこの歌を清純・爽やかなイメージの乃木坂46がパフォーマンスする“ギャップ”も、面白い試みだったように思う。
「I see…」は今年3月25日にリリースされた25thシングル『しあわせの保護色』初回限定盤Type-Dのカップリングとして収録された4期生のオリジナル楽曲。作曲を手掛けたのは過去に嵐の「Love so sweet」などを手がけた2人組ユニット・youth caseで、70年代のソウルミュージックやR&Bの影響を感じるディスコミュージックのリズムと、いわゆるJ-POP的なメロディが絶妙にマッチしたポップソングだ。
MVが公開されると「SMAPっぽい」という感想を抱いたリスナーも数多く現れ、SNS上で話題となり「SMAP感」というワードがTwitterでトレンド入りしたほどだ。言うまでもなくSMAPは国民的なアイドルグループで、長年にわたり時代の空気をつかみながら大衆に寄り添った楽曲を発表してきた。そういう意味でも「I see…」が「SMAPっぽい」と世間から評価されたのは、J-POPシーンの中で最高の褒め言葉だといえるだろう。
同曲でセンターを務めるのは8月8日に19歳の誕生日を迎えた、乃木坂46の次世代エースとして期待を集める賀喜遥香。これまでに行われたライブでもとびきりの笑顔を振りまきファンを魅了してきた賀喜だが、同曲のMVでも“これぞアイドル”と称えたくなるほどの眩しい姿を披露している。すでにYouTubeでの再生回数は1200万回(8月8日現在)を突破しているが、今後も4期生メンバーにスポットがあたる度に、この曲も再生回数を伸ばしていくことだろう。
乃木坂46がこれまでに発表した“夏ソング”は数多くあるが、「夏のFree&Easy 」「裸足でSummer」などの夏らしさが前面的に押し出された軽やかな楽曲もあれば、一方で「逃げ水」「ひと夏の長さより…」などの夏に別れを告げるかのような切なげな曲調もあったりと音楽性の幅は広い。
「I see…」が“夏ソング”に含まれるのかが最後まで疑問に残り、そんなことをグダグダと考えていたが、意地なんか張ってちゃもったいない。ただただゴールデンという時間帯で歌い踊る4期生の姿、そして「ジコチューで行こう!」のパフォーマンスを楽しみたいと思う。
■中山洋平
1983年生まれ。フリーランスの編集・ライター。ボウリング、洋服、ギター、サウナ好き。Twitter