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『半沢直樹』帝国航空編スタート 堺雅人と新たな登場人物たちの重厚な演技合戦にも期待

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 『半沢直樹』第5話(TBS系)で営業第二部次長に返り咲いた半沢直樹(堺雅人)は、頭取の中野渡謙(北大路欣也)から直々に帝国航空の担当を命じられる。帝国航空は巨額の負債を抱えて破綻寸前の状況にあり、東京中央銀行も700億円の債権を保有していた。一方、新たに国土交通大臣に就任した白井亜希子(江口のり子)が、大臣直属の「再建タスクフォース」を立ち上げ、一律7割の債権放棄を銀行に要求。当選2回の白井は、与党である進政党の重鎮・箕部啓治(柄本明)の後ろ盾を得て、支持率回復を狙う的場内閣の目玉人事として抜擢された。

 大阪西支店での5億円の債権回収にはじまり、老舗ホテルの再建や証券での買収交渉と続いて、今回、対峙するのは日本を牛耳る政治家たち。まるで倍々ゲームのように、半沢が倍返しすればするほど戦う相手も大きくなっていく。実は、中野渡が半沢を登用した陰には、大和田暁(香川照之)の推挙があった。無理難題を押し付けて、成功すれば自分の手柄、失敗すれば全責任を負わせるという大和田の魂胆を見抜いた上で、あえて火中の栗を拾う半沢。そこにはバンカーとしての強い信念があった。

 帝国航空が経営危機に陥った原因はどこにあるのか? 着任早々、社内を視察した半沢は、部下の田島春(入江甚儀)に「ここは腐ってない」と所感を伝える。半沢と単なるコストカッターとの違いは、数字の向こうに「人」を見る視点だ。「日本の空を守ってきた」誇りと気概は帝国航空から失われておらず、半沢は、帝国航空が必ず復活すると断言する。その反面、仕事をたらい回しにするなど縦割りの弊害も見られた。伝統を重んじるあまりセクション間の意思疎通が滞り、それが不正の温床になっていた。

 『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社/講談社文庫)を原作とする『半沢直樹』後半は物語のスケールが大きく、その分、登場人物も多い。半沢と対決するタスクフォースリーダーで弁護士の乃原正太を演じるのは筒井道隆。「トレンディ俳優」として知られる筒井のイメージと真逆の意外性のあるキャスティングに注目だ。開発投資銀行(開投銀)の担当「鉄の女」こと谷川幸代に扮するのは西田尚美。開投銀は帝国航空のメインバンクであり、開投銀の動向が債権放棄の鍵を握る。西田は、堺との共演は映画『南極料理人』(2009年)以来となる。また、タスクフォースと銀行の間で難しい舵取りを迫られる帝国航空社長の神谷巌夫を木場勝己、財務部長の山久登を石黒賢が演じる。さらに、新しく半沢の上司となった常務の紀本平八を段田安則が演じるなど、いぶし銀の実力派が名を連ねており、重厚な演技合戦が期待できそうだ。

 さて、半沢が示した再建案は内容を抜き出されて帝国航空社内に漏洩。反対派が講じた離間策によって、再建の機運は早くもしぼみかける。誰が情報を漏らしたのか? 谷川が言うところの「社内の不穏分子」をあぶり出すため、半沢は単身、伊勢志摩へ飛ぶ。そこで見たのは、政界とのつながりと役員の地位を利用した資金の還流だった。社員説明会の場で、「グレートキャプテン」の木滝英雄(鈴木壮麻)とともに、役員の黒い関係を暴く一幕は、これから始まる戦いの激しさを予感させるようだった。

 余談だが、社員説明会のシーンでは、池井戸潤原作による日曜劇場ドラマでおなじみの全員参加カットが見られた。昨今の情勢を受けて、撮影現場でも新型コロナウイルス感染症対策が徹底されているが、説明会のシーンも席の間隔を空けた「ソーシャルディスタンス仕様」。要所要所で集合カットを挟みつつも画面の迫力は減殺されておらず、効果的なシーンとなっていた。

 自ら進んで逆境に身を投じる半沢の胸にあるのは、顧客のために全力を尽くすことが、社会のため、ひいては銀行のためになるという揺るぎない信念だ。山久に語ったように、一見、スタンドプレーのようなパフォーマンスも自分のためではなく、クライアントを奮い立たせるためのもの。社内の不穏分子を叩き出し、足並みをそろえた帝国航空と半沢は、再建に向けて嵐の中離陸する。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
日曜劇場『半沢直樹』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、上戸彩、及川光博、片岡愛之助、賀来賢人、今田美桜、池田成志、山崎銀之丞、土田英生、戸次重幸、井上芳雄、南野陽子、古田新太、井川遥、尾上松也、市川猿之助、北大路欣也(特別出演)、香川照之、江口のりこ、筒井道隆、柄本明
演出:福澤克雄、田中健太、松木彩
原作:池井戸潤『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社)、『半沢直樹3 ロスジェネの逆襲』『半沢直樹4 銀翼のイカロス』(講談社文庫)
脚本:丑尾健太郎ほか
プロデューサー:伊與田英徳、川嶋龍太郎、青山貴洋
製作著作:TBS
(c)TBS