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超大型特番、作家育成、『ヒッパレ』路線……テレビ音楽番組の最新動向とは?

音楽

ニュース

リアルサウンド

 テレビ業界は夏の特番シーズンに突入し、もうすぐ秋の改編が迫っている。今年の音楽番組はさまざまな新路線の台頭や、大型番組の増加などが目立つ一方で、人気番組は一定の形を保ったまま、複数の番組が継続している。本稿では各番組を通して見えてくる、現在の音楽番組の傾向を分析したい。

作家育成、“ヒッパレ”路線…。新路線の台頭と安定の「トーク+ライブ」

 以前に当サイトでも紹介したが、『ミュージックステーション』の系譜上にある「トーク+ライブパート」の『MJ』(NHK系)や『LIVE MONSTER』(日本テレビ系)は安定した評価を得ており、両番組は今後も深夜帯の目玉音楽番組として継続していきそうだ。そして、ここに割り込んできているのが『UTAGE!』(TBS系)と『musicるTV』(テレビ朝日系)の2番組。
 
 前者『UTAGE!』は「番組オリジナルのプロ歌手集団であるUTAGEアーティスト達が、1990年代、2000年代の名曲、ヒット曲などをランキング形式に紹介し、それをカバーして歌う」というコンセプトで制作された、『THE 夜もヒッパレ』(日本テレビ系)路線の番組といえる。当初は早期の番組終了が危惧されたものの、無事にワンクールを乗り切った最近の放送では、楽曲をカバーされた本人が登場するという、モノマネ番組のような仕掛けも導入。さらに、舞祭組の“残念な”パフォーマンスは、もはや番組の見どころの一つになっており、毎回視聴者を楽しませている。

 後者『musicるTV』の目玉企画は「ミリオン連発音楽作家塾」。音楽機材やネット環境が充実した近年、急増している音楽作家志願者にスポットを当て、未来のミリオン作家を発掘する“音楽作家オーディション”というスタイルを打ち出している。MCのヒャダインと綾小路翔(氣志團)が、志願者の作る音楽について歯に衣着せぬ物言いで語る様子も好評のようだ。

各局が競い合う「超大型音楽番組」は視聴率増加の鍵を握る?

 これまで、「大型音楽番組」というと、2~3時間のものを指すことが少なくなかったが、最近では『音楽の日』(TBS系)や『音楽のちから』(日本テレビ)など、ゆうに10時間を超える「超大型音楽番組」が増加しつつある傾向がみられる。前者はSMAPの中居正広を司会に起用し、加山雄三や坂本冬美から、NMB48山本彩の弾き語り、さらにはクリープハイプにゲスの極み乙女。などの若手バンドまで出演する、全方位向けのラインナップで約13時間の生放送を届けた。後者は嵐の櫻井翔を総合司会に据え、同グループの15周年スペシャルライブを軸に展開した、約11時間の音楽番組だった。

 このような大型音楽番組がなぜ増加しているのか。リアルタイムでネット上の声を観察していたところ、「BGM代わりにちょうどいい」や「目的のアーティストが出るのは10分程度だけど、いつでるかという明確な時間がわからないから、とりあえずチャンネルは合わせておく」といった、興味深い意見がいくつも書かれていた。確かに、出演者自体は大きいブロックで時間帯ごとに分けられてはいるものの、はっきりとした出演時間は明記されていない。この「音楽が流れ続けるチャンネルを垂れ流す」といういわばラジオ的な試聴方法が、番組の視聴率増加につながっているのだとすれば、実に興味深い傾向である。

 大型番組の“ラジオ化”や、深夜枠の新機軸など、今期も制作側に様々な創意工夫が見られる音楽番組。秋の改編にも期待しつつ、これらの試みが下半期でどのように評価されるのかも追っていきたい。
(文=中村拓海)