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(G)I-DLE、ITZY、BLACKPINK、OH MY GIRL……今年の夏を制する“サマークイーン”は?

音楽

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リアルサウンド

 コロナ禍にも関わらず、韓国の大手音楽会社は好調だという。あまりの好調ぶりに海外の投資家の関心が集まり、新型コロナウイルス発生以前の水準に回復したとの報道もある。こうした盛り上がりの要因として、オンラインイベントの成功やCDの売り上げが大幅に伸びたことなどが指摘されているが、何よりも音楽としての魅力が衰えていないのがいちばんの理由であろう。中でもK-POPシーンをけん引するガールズグループの勢いと輝きは年を追うごとに増すばかりで、それを証明するように今年も中身の濃いサマーソングが多くリリースされた。

 まず押さえておきたいのは(G)I-DLEだ。デビュー当時からエキゾチックなナンバーを得意としていたグループだが、夏に入ってからはその持ち味がパワーアップ。ラテンフレイバーのダンスポップ「i’M THE TREND」と、トロピカルなムーンバートン「DUMDi DUMDi」をヒットチャートに送りこんだ。どちらの曲もキレのいいラップとボーカルがスリリングに交差する力強いサウンドメイクで、独自のアイドル像を作り上げたという自負が音の隅々から伝わってくる。オンラインの単独ライブ(7月開催)が成功裏に終わり上昇気流に乗る彼女たちは、両曲のヒットでさらにステップアップするのは間違いないだろう。

(여자)아이들((G)I-DLE) – ‘i’M THE TREND’ Special Clip
(여자)아이들((G)I-DLE) – ‘덤디덤디 (DUMDi DUMDi)’ Official Music Video

 TWICE、NiziUなどJYPエンターテインメントの所属アーティストは国内外を問わず人気があるが、ITZYもそのひとつで、特に日本での本格的な活動を望む声が多い。他のグループ以上にガールクラッシュ的な魅力を前面に出しており、歌詞も“あなたの基準に私を合わせようとしないで”(デビュー曲「DALLA DALLA」)、“私の中にあるdream/私は自信があるの”(1stミニアルバムリード曲「ICY」)、“私はただ私になりたいの”(2ndミニアルバムリード曲「WANNABE」)と、ひとつひとつの言葉が力強いのが大きな特徴となっている。

 だが8月17日に発表した3rdミニアルバムタイトル曲「Not Shy」は少しテイストが異なっていて興味深い。今までと同様に自信に満ちた女性を描いてはいるものの、相手の心の中を気にするような表現も見られるのが印象的だ。海外に進出するためのちょっとした軌道修正なのかもしれないが、国境を超えた活動が展開しにくい間は、こうした手直しを続けていくのではないだろうか。

ITZY “Not Shy” M/V

 2020年の夏を象徴する曲をひとつあげるとすれば、やはりBLACKPINKの「How You Like That」である。同曲は6月下旬に発売して2カ月以上経っているものの、現在までずっと主要チャートの上位にランクインし続けている。歌詞についてはすでにいろいろな解釈がなされているが、ガールクラッシュの代表格と呼ばれる彼女たちのイメージを強調した内容であるのは間違いない。ここでのメンバー4人はダークサイドからやってきたヒーローといった佇まいであり、善も悪も知りつくした上でポジティブに生きようとするその姿は、他のグループとは違うオーラがある。昨年リリースした「Kill This Love」ではサウンドの進化が著しかったが、「How You Like That」の場合は歌詞でさらなる深みを目指したようだ。

BLACKPINK – ‘How You Like That’ M/V

 さらにBLACKPINKは8月28日に「Ice Cream (with Selena Gomez)」というシングルも発表している。アメリカの人気歌手、セレーナ・ゴメスとのコラボレーション曲で、こちらは「How You Like That」のシリアスなムードとは打って変わって、かなり陽気でライトな仕上がりだ。タイトル通りの涼しげなサウンドや、“このキスがいちばん冷たい/だから彼は私をアイスクリームと呼んでいるの”といった歌詞は、暑い季節によく似合う。軽やかなボーカルからは余裕と貫禄が感じられ、彼女たちが世界的なセレブリティーになったことを痛感させられる。

BLACKPINK – ‘Ice Cream (with Selena Gomez)’ M/V

 海外アーティストとの共演となると、OH MY GIRLも忘れてはならない。彼女たちも8月28日にドイツ人プロデューサーのKeanu Silvaとコラボレーションした「Rocket Ride」をリリースした。アコースティックギターとエレクトロポップによる穏やかなサウンドはK-POPというよりはユーロポップと呼ぶのがふさわしい。メンバーの歌声もその雰囲気に合わせたのだろう、とても優しく歌い上げている。今年4月に「Nonstop」のメガヒットで知名度を上げた彼女たちは、どんなスタイルでも自分たちのカラーに染めることができるという点で高い評価を得てきた。しかしながら「Rocket Ride」のようなサウンドでも難なく対応できることに驚きを禁じ得ない。

「Rocket Ride」

 3密を避ける生活になって久しいが、こと音楽に関しては、新型コロナ以前よりもサウンドの密度が高くなっているようだ。セールス面や話題性に限れば、今年の夏はBLACKPINKのひとり勝ちであることは間違いない。ただし、他のグループも曲作りにおいてはトレンドを上手に取り込み、自分たちの色を打ち出したナンバーばかりで、勝敗をはっきりとつけるのは難しい。ガールズグループの真のトップ争いは、どうやら秋以降に持ち越しとなりそうだ。

■まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を開始。『ミュージック・マガジン』など専門誌を中心に寄稿。『ジャズ批評』『韓流ぴあ』で連載中。ムック『GIRLS K-POP』(シンコー・ミュージック)を監修。K-POP関連の著書・共著も多数あり。