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『竜の道』竜二は想像力を掻き立てる存在? 高橋一生の“余白”の演技が生む説得力

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リアルサウンド

 復讐に燃える双子がついに王手に迫る。火9ドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』(以下、『竜の道』、カンテレ・フジテレビ系)が佳境を迎え、竜一(玉木宏)と竜二(高橋一生)が復讐相手を追い詰めるまであと一歩となる。そんな『竜の道』で双子の片割れ、竜二を演じるのが高橋一生である。

 育ての親を死に追いやられた双子の弟・矢端竜二は、国土交通省に勤める官僚であり、将来の事務次官候補とまで言われているエリート。順風満帆なキャリアに見える竜二だが、実は竜二がその地位にまで上り詰めたのは、すべてキリシマ急便社長の霧島源平(遠藤憲一)への復讐のためだった。

 本作では竜二と、双子の兄である竜一は復讐という同じ目的以外は対照的に描かれる。顔も違えば、立場も違い、性格も真反対。竜二がエリート官僚であれば竜一は裏社会に生き、竜二が静であれば竜一は動。そんな竜二には、キャラクターの背景をより踏み込んで知りたいと思わせる不思議な魅力がある。生い立ちやキャリアが詳細に描かれているにも関わらず、想像力を掻き立てる存在なのだ。

 その魅力を生み出しているのが、竜二を演じる高橋の芝居の力だ。『竜の道』での高橋は、その仕草や表情で多くを語らない。霧島の娘であるまゆみ(松本まりか)にひどい暴言を吐かれようとも顔色ひとつ変えず、まゆみの婚約者の三栗谷(尾上寛之)におぞましい陥れ方をされても冷静沈着に振る舞う。辛い過去を背負っているにも関わらず、そんなことはおくびにも出さずに、感情を押し殺し、ポーカーフェイスを貫くのだ。

 そして高橋は、その竜二の立ち振る舞いに“余白”を残すことを忘れない。この絶妙な余白はある種の“間”であったり“タメ”と呼ばれるものであり、「すべてを語らない演技」として視聴者に考える余地を与える。視聴者は、そんな竜二に対して、語られた言葉以上に多くのことを詮索したくなり、余計な想像さえ働かせてしまうだろう。高橋の演じる竜二に吸い寄せられ、そのポーカーフェイスの裏側を邪推しながらいつの間にか心を支配され、どっぷりと感情移入してしまうのが竜二の魅力なのだ。

 そんな竜二だが、感情をあらわにするシーンが描かれたこともある。竜二が竜一と密会した際に、竜二はふと心を開く瞬間がある。それは時に隠し事をする竜一への叱責であり、時に他愛もない冗談と共に見せる少年のような笑顔でもあった。ドラマが進むにつれ、竜二が感情をあらわにするのは竜一への強い兄弟愛があふれ出るときのみだと気づかされたとき、我々はどうしようもない悲しみと愛しさにかられるだろう。

 高橋はこれまでも様々な作品を通して幅広い役柄に挑戦してきた。『僕らは奇跡でできている』(カンテレ・フジテレビ系)での風変わりだがピュアな大学講師・相河一輝役、『みかづき』(NHK総合)での教えることに強い信念を持つ塾講師の大島吾郎役、『東京独身男子』(テレビ朝日系)での恋愛下手なエリート銀行マン・石橋太郎役など枚挙にいとまがない。しかし、こうして振り返ると、表面上は比較的温厚な役柄が多かったように思う。そんな中で『凪のお暇』(TBS系)で演じた我聞慎二は、人目もはばからず泣きわめく姿や自分の主張を押し付ける強引さなど、高橋の新たなイメージを広げるきっかけになった役でもある。

 『竜の道』ではさらなる境地へと進化を遂げた高橋一生が、今後、第1話冒頭の壮絶な暴力シーンの真相に繋がるであろう真実に迫る。「それでも俺はお前と行くぞ」と涙ながらに竜一を抱きしめた竜二にどのような悲しい結末があるのだろうか、その答えはもうすぐそこだ。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
『竜の道 二つの顔の復讐者』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:玉木宏、高橋一生、松本穂香、細田善彦、奈緒、今野浩喜、渡辺邦斗、 落合モトキ、西郷輝彦(特別出演)、松本まりか、斉藤由貴、遠藤憲一ほか
原作:白川道 『竜の道』 (幻冬舎文庫)
脚本:篠崎絵里子(「崎」は「たつさき」が正式表記)、守口悠介
音楽:村松崇継
主題歌:SEKAI NO OWARI 「umbrella」(ユニバーサル ミュージック)
オープニング曲:ビッケブランカ 「ミラージュ」(avex trax)
プロデュース:米田孝、水野綾子
演出:城宝秀則、岩田和行、紙谷楓、吉田使憲
制作:カンテレ、共同テレビ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ryu-no-michi/
公式Twitter:https://twitter.com/ryunomichi_ktv