世界最大級の自主映画コンペ“PFFアワード”の魅力とは? 映画祭ディレクターが語る
映画
インタビュー
PFFアワード2020入選作品
9月12日(土)に東京の国立映画アーカイブで第42回ぴあフィルムフェスティバル(以下、PFF)が開幕する。本映画祭のメインプログラムは、世界最大級の自主映画のコンペティション“PFFアワード”。応募作品の長さやジャンル、応募者の年齢などの制限が一切ない中で集まった17本の作品たちがスクリーンで上映される。
1977年に「第1回ぴあ展〈映像部門〉」の名前でスタートした本映画祭は、長年に渡って自主映画を公募し、本アワードから多くの商業映画監督が誕生している。その審査方法も独特で、1作品につき3人のセレクションメンバーが作品を止めることなく鑑賞して一次審査を実施。その後の二次審査では審査員全員で合議を行う徹底ぶりで、応募する側もセレクションする側も長い時間と熱意を注いで入選作品が決定する。
「PFFの審査は点数をつけて良いものをあげていくようなものではないんです」と荒木啓子PFFディレクターは説明する。「ここにある入選作は私が良いと思って選んだものではなくて、16人のセレクションメンバーが徹底的に観て話し合った結果、“何かがある”と思ったものが残っている。ですから、仮に私が“何が良いのかまったく理解できない”と思ったとしても、その作品について熱く語る人がいて、結果的に自分はこの作品がまったくわかっていなかったってことがある……その繰り返しなんですよ」
今年はコロナ渦で審査も例年通りとはいかなかったが、広い会議場を確保するなどして二次審査はセレクションメンバーが例年通り、顔を合わせて徹底的に話し合って入選作が決定した。
「PFFはどのような作品を求めていますというお題は何もないですし、時間をふくめ規制は何もないわけですから、本当に純粋に何かをぶつけてくる人が勝つ映画祭だと思います。一番大切なのは“よくわからないけど、何かがある”ってこと(笑)。それを誰かが発見して、かたちあるものにしていく。それがPFFなんだと思います」
だからこそ、PFFは今年も東京・京橋の国立映画アーカイブで実際に観客が集まって、同じスクリーンで作品に向き合うことにこだわった。単に映画を集めてオンラインで鑑賞することはできる。人気作品を集めて上映することもできる。でもそれを“映画祭”と呼んでいいのだろうか?
「同じものを同じ場所で一緒に観る。それをつくった人と語ることができる。その作品を素晴らしいと思った人がいた時に、作り手と観客がお互いの存在を感じる。つまり“世の中、そんなに捨てたもんじゃない”っていうか、自分は“ひとりじゃない”っていう経験を積み重ねていかないと人間は弱くなっていくので、映画祭は生きる力を与える場所だと思っているんです。
人は自分以外の誰かの存在によって変化していくわけですし、生涯にわたって変化し続けないと創作はできない。映画祭の“何かを動かす”機能はとても大きいので、自分はひとりじゃない、自分はまだまだ小さい存在なんだって思える場所があるのはすごく大事ですよね」
新しい作品に出会い、つくった人と語り、何かが変化する。それは作り手だけでなく観客にも起こりえることだ。この秋、17本のまだ観ぬ映画たちが、観客に何らかの変化をもたらすことになるだろう。
第42回ぴあフィルムフェスティバル
9月12日(土)~26日(土)[月曜休館]
会場:国立映画アーカイブ(東京都中央区京橋3-7-6)
■「PFFアワード2020」入選作品
『アスタースクールデイズ』38分 監督:稲田百音(18歳/東京都出身/成蹊高等学校)
『霞姫霊異記』57分 監督:高階匠(31歳/東京都出身/映像制作会社勤務)
『こちら放送室よりトム少佐へ』10分 監督:千阪拓也(22歳/兵庫県出身/日本大学 藝術学部)
『頭痛が痛い』131分 監督:守田悠人(22歳/愛知県出身/酒屋アルバイト)
『タヌキ計画』41分 監督:チェ・ユシン(24歳/台湾出身/東放学園映画専門学校)
『追憶と槌』8分 監督:金井啓太(25歳/東京都出身/東京藝術大学 映像研究科メディア映像専攻)
『遠上恵未(24)』26分 監督:遠上恵未(26歳/東京都出身/ENBUゼミナール 映画監督コース)
『パンク』44分 監督:鈴木順也(31歳/神奈川県出身/横浜シネマ・ジャック&ベティ勤務)
『Fear of missing out』36分 監督:河内彰(32歳/兵庫県出身/会社員)
『フィン』36分 監督:小池茅(26歳/東京都出身/会社員)
『冬のほつれまで』67分 監督:多持大輔(24歳/茨城県出身/武蔵野美術大学大学院 造形研究科)
『へんしんっ!』93分 監督:石田智哉(22歳/東京都出身/立教大学 現代心理学部)
『MOTHERS』63分 監督:関麻衣子(22歳/東京都出身/日本映画大学)
『未亡人』54分 監督:野村陽介(23歳/埼玉県出身/東京藝術大学 美術学部)
『もとめたせい』30分 監督:矢部凜(22歳/滋賀県出身/京都造形芸術大学 芸術学部映画学科)
『屋根裏の巳已己』102分 監督:寺西涼(24歳/神奈川県出身/清掃員アルバイト)
『LUGINSKY』63分 監督:haiena(42歳/東京都出身/フリーランス)
※作品名50音順。上映時間、年齢、職業(学校名)は応募時のもの
チケット購入
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2021994
0570-02-9999 (Pコード:551-184)
※各回とも上映前日の23時59分まで発売
※発券手数料、システム手数料は、一切掛かりません。
※チケットの払い戻し、交換、再発行はいたしません。
※チケットは会場では発券できません。必ず発券して会場までお越しください。
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