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『チア☆ダン』なぜスポーツ青春ドラマとして成立? 佐久間由衣ら登場人物から考察

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リアルサウンド

 全国大会出場を決め、「打倒!JETS」、そして「全米制覇」という目標にまた一歩近づいた福井西高校チアダンス部“ROCKETS”。事故で大ケガを負った顧問の太郎(オダギリジョー)の退院のめども立ち、すべてが順調にまわりはじめたと思った矢先、部長のわかば(土屋太鳳)が膝の靭帯を損傷。全治1ヶ月以上と診断されてしまう。

参考:目が離せない最終回に? 『チア☆ダン』土屋太鳳、怪我が原因で石井杏奈ら“Rockets”と衝突

 9月14日にいよいよ最終回を迎えるドラマ『チア☆ダン』(TBS系)。チーム発足からたった1年で全国大会出場という快挙を果たし、ROCKETSのメンバーたちの士気もさらに上がっていたが、大会を目前に控えた先週の第9話でチームの要であるわかばがケガをし、チーム全体に衝撃が走る。

 若手女優のトップを走るわかば役の土屋太鳳と、E-girlsとしても活躍中の汐里役の石井杏奈を筆頭に、今後さらに飛躍しそうな若手女優の名前がずらりと連なる『チア☆ダン』。その中でキャストの3番手にクレジットされているのが、NHKの朝ドラ『ひよっこ』で女優を目指す村一番の美少女・時子を演じていた佐久間由衣だ。

 今回、佐久間が演じているのは勉強一辺倒で“委員長”と呼ばれる桜沢麻子。麻子は、福井西高の教頭でもある父親の伸介(木下ほうか)の期待に応えるべく自分を抑えて勉強に励んできた優等生だったが、わかばや汐里に触発されてチアダンス部に入部したことで、本当の自分を見つけ、明るい性格に変わって自然な笑顔も増えた。

 『ひよっこ』の時子はしっかり者ではあったが、スポットライトを浴びる職業を目指す少女なのに本番に弱かった。麻子も時子と同じく本番に弱いという設定だ。第8話で描かれた進路について話し合う三者面談で、担任の杉原(本多力)は志望大学合格は確実で部活もがんばっていると麻子を褒めるが、伸介は高校受験に失敗した過去を引き合いに出し、麻子のメンタルの弱さを容赦なく指摘する。

 たとえ反論の余地がないほど正しいことを言われても、遠慮のない言葉はカチンとくるもの。うつむいて父親の言葉を聞く麻子も当然内心では苛立っているのかと思いきや、麻子は隣にいる父親をまっすぐ見つめて「大丈夫やよ。もう前の自分とは違うで」と穏やかに返し、にっこりと微笑んだ。その言葉に伸介は思わず頬をゆるめ、それ以上何も言わなかった。

 2人のこのやりとりは、麻子が努力を重ねて自信を得たことやROCKETSの存在がいい影響を与えていること、また、伸介が娘の変化を受け入れ、父と娘を隔てていた壁がなくなったことがわかる、とてもいいシーンだった。

 アメリカの映画やドラマでは、チアダンスやチアリーディング部の女子高生はスクールカーストの頂点にいて容姿端麗、プロムでクイーンに輝いて高校生活を華々しく終えるようないわゆるリア充の陽キャラ。それゆえに自信満々で鼻持ちならない性格の持ち主として描かれることがよくある。しかし、ROCKETSには誰ひとりとしてそのようなメンバーはおらず、歯に衣着せぬ物言いをする汐里や茉希(山本舞香)、はじめはヒール役だった望(堀田真由)でさえ、他人を見下したり誰かを陥れてでものし上がろうとするような邪悪さがない。

 麻子に想いを寄せる年下男子が登場したり、彼氏がいるメンバーがいたりと恋愛関係のエピソードも挿入されたが、注目の若手女優をこれだけ揃えているのに軽いタッチのガールズドラマではなくスポーツ青春ドラマとして成立しているのは、恋愛色が薄いからという理由よりも登場人物たちのこの清廉さによるものが大きい。

 また、キャストやストーリー以外で印象的だったのが、サンボマスターの楽曲だろう。曲に合わせて踊るだけでなく、セリフでも何度も口にして自分たちを奮い立たせる「できっこないを やらなくちゃ」。そして、仲間を思う彼女たちの心情そのものであり、大人からのエールのようにも聞こえる「輝きだして走ってく」。この2曲が最後のピースのようにドラマにぴたりとはまり、「全米制覇」という壮大な目標に向けて走り続けるひたむきな女子高生たちを輝かせてきた。

 福井を離れ、ROCKETSのメンバーは全国大会が行われる東京の会場へと向かう最終回。これ以上ないほど素晴らしい結果を出して大会を終えるのか、それとも努力しても報われないことはあるという人生の苦さを思い知らされるのか。はたまた視聴者の想像に委ねる形でエンディングを迎えるのか。いずれにしてもROCKETSの集大成となるダンスを最後までしっかりと見届けなくてはならない。(古閑万希子)