『ハイキュー!!』木兎光太郎 コート上のエンターテイナーはいつも誰かのスターだった
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バレーボールに青春をかける高校生達を描く『ハイキュー!!』。今回ピックアップするのは梟谷学園の主将でエースの木兎光太郎だ。梟谷学園と烏野高校は合同合宿で顔を合わせており、練習試合を重ねることで烏野高校躍進の一助となっている。春高では音駒と共に東京代表として出場した。
スパイカーとしての実力は折り紙付き、しかし強い“だけ”ではない、木兎光太郎の魅力に迫る。
敵も味方も、観客もノせるエンターテイナー
「正直、木兎さんの生態は未だよくわからない」そう語るのは梟谷学園の正セッター赤葦だ。
ハイテンションで、調子が良いときは相手チームの士気まで高めてしまう。全力で楽しそうにバレーボールをする姿に観客も心を掴まれ、声援を送る。背中を押された木兎はさらにノる。
サーブ、スパイクがパワフルなのはもちろんのこと、レシーブもうまく反射神経も抜群な木兎。絶好調なときは全国で5本指どころか3本指に入る、と言われるほどだ。しかし、調子が下がり、“しょぼくれモード”になると、これも手がつけられない。
「俺いつも クロスってどう打ってたっけ…?」
普段できていたことができなくなったり、目立ちたがりな性格が災いして、観客が少ないと調子が下がってしまう。
とはいえ梟谷は、そんな木兎を使いこなしている。普通は、エースの調子が下がればねらい目だが、そうはいかない。木兎の調子が戻るまで持ちこたえるし、なんなら逆転して見せる。木兎が引っ張るチームではなく、チームが木兎を引っ張るチーム。「6人で強い方が強い」ということを体現しているチームと言えるだろう。
木兎を映す セッター赤葦の存在
梟谷の正セッターである赤葦が、梟谷への進学を決めたのは木兎のプレーを見たから。
「…漠然と“スター”だと思った」
赤葦にとって、木兎は初めて見たときからずっとスターだった。木兎を観察し、分析し、どうやって好調を保つかを考え続ける。そして、一番近くにいるファンでもある。
「絶好調の木兎さんは見ていてとても気持ちいいですから」
木兎は性格上、派手なプレーばかりを好むように見えるが、練習はひたすら地道だ。ブロックされるのも、レシーブやサーブミスするのも、バテるのも楽しくない。全部決めて、拾って、勝てばずっと楽しい。バレーボールをずっと楽しくするにはどうすればいい? 木兎の答えは、勝つための練習を重ねること。そして、ずっと勝ち続けたい。初期衝動を失わず、練習を地道に続けられる選手なのだ。
試合中に調子が下がることはあっても、木兎はいつも楽しそうだ。それは「勝つ」という“楽しいもの”に向かって努力を重ねている自負があるからなのかもしれない。
「皆のおかげのエース」から「ただのエース」へ
時を経て、木兎はVリーグチーム、ブラックジャッカルへ入団。日向のチームメイトであり、そしてチームには宮侑もいる。チームメイトとなった宮侑は木兎にこう言う。
「俺のセットで決められへん時『調子が悪い』って言い訳せんといてな???」
圧のある言葉だ。しかし、木兎はケロッとして答える。
「ふっふっふ! 当然だ! 俺はただのエースだからな」
木兎の「普通」は「普通じゃない」。彼にとって、どんなボールも打ち切るのが普通のエースなのだ。梟谷時代は、調子が悪いときはチームメイトたちがフォローをしてくれていた。しかし、春高が終れば木兎は卒業だ。そのとき彼が決意したのは「ただのエース」になること。
楽しいことをしていたい木兎。それでも、春高の期間はもうすぐやってくるチームメイトとの別れを惜しんでいたのかもしれない。春高が始まったばかりのとき、赤葦に向かって、「やっぱりもっと皆とやりたかったなー!」と言っているのが印象的だ。
中学時代、木兎の熱心な練習に他の部員たちがついてこなかった。陰口を言いながら、こっそりと練習から姿を消す。でも梟谷のチームメイトは、言いたいことは言いつつ、みんな木兎を愛していた。
烏野高校が準々決勝で敗退した春高。梟谷は決勝に進出。しかし、一歩及ばず、準優勝に終わった。勝ちきれなかったのは自分のせいだという木兎に、チームメイトで同期の木葉が背中を叩く。
「お前…がんばれよ 超がんばれよ…!」
「めちゃめちゃめちゃ応援してっからな ただのエース!!」
「皆のおかげのエース」から「ただのエース」へ。そしてきっと、たくさんの「誰かのスター」になるのだろう。
(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))
■書籍情報
『ハイキュー!!』(ジャンプ・コミックス)既刊44巻
著者:古舘春一
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/haikyu.html