大倉忠義&成田凌の新たな表情が 『窮鼠はチーズの夢を見る』はコロナ禍の今こそ観たい作品
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リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、中高一貫男子校育ちの島田が『窮鼠はチーズの夢を見る』をプッシュします。
『窮鼠はチーズの夢を見る』
「ソーシャルディスタンス」が求められる昨今ですが、その距離をなんとか縮めたいと思ってしまう1作が公開を迎えました。『窮鼠はチーズの夢を見る』です。
『ナラタージュ』『リバーズ・エッジ』『劇場』などこれまで数多くの恋愛映画を生み出し、熱心なファンも多い行定監督の最新作となる本作。役者の予期せぬ表情を切り取ることにも定評ある行定監督が今回主役に抜擢したのは大倉忠義です。そしてそんな大倉の相手役となるのが、成田凌。
大倉が演じるのは、女性のアプローチを断れない“流され侍”恭一。そしてそんな恭一を密かに想い続けた後輩・今ヶ瀬を成田が演じます。
今ヶ瀬(成田凌)の猛プッシュになぜか心を動かされ、動揺する恭一(大倉忠義)の表情には、ファンでなくても思わず心を揺さぶられてしまうのではないでしょうか。また成田演じる今ヶ瀬がとにかくキュートで小悪魔的。しかし、その裏にある純粋な恭一への想いが見え隠れするさまを観ると、誰もがこの2人を応援したくなってしまうのではないでしょうか。
これもやはり行定監督のディレクションあってこそ引き出せた表情かと思います。これまでも1対1の「純愛」を描き続けた行定監督だからこそ出せる“密室感”、特有の温度がこの2人にも生まれているのです。
同性愛を扱っていることが取り上げられることも多いですが、本作の鑑賞に異性愛・同性愛などの区別はさほど重要ではないと感じます。誰かに恋をした経験がある人なら誰もが思わず、「あ〜分かるな〜」と頷いてしまうでしょう。
それもそのはず、原作は『失恋ショコラティエ』の水城せとなの同名漫画。誰かを愛しているはずなのに傷つけてしまう、好きなのにそのことを言えない……恋愛ならではのじれったさや葛藤を詳細に表現してきた水城原作の良さが、映画として存分に活かされています。
1対1のリレーションシップをつぶさに観察してきた行定監督。1対1だからこその複雑さや傷を描き続ける水城。2人のオリジナリティーが足し算どころか掛け算で相乗効果を生んだ作品が本作かと思います。
一見、女性向けのように見えるかもしれませんが、男性諸氏こそ思わず納得してしまう部分も多々あるように思います。オンラインでのやりとりが増え、リレーションシップというものが希薄になりがちな昨今だからこそ、観るべき1作ではないでしょうか。
リアルサウンド映画部では、本作の作品評を2つ掲載しています(参照:『窮鼠はチーズの夢を見る』が捉える恋愛の“本質” 人はなぜめんどくさいのに恋をするのか、『窮鼠はチーズの夢を見る』は原作ファンも納得の出来 水城せとな作品のエッセンスがそこかしこに)。ぜひ、鑑賞前後でお読みいただけると嬉しいです。
■公開情報
『窮鼠はチーズの夢を見る』
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開中
出演:大倉忠義、成田凌、吉田志織、さとうほなみ、咲妃みゆ、小原徳子
原作:水城せとな『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は二度跳ねる』(小学館『フラワーコミックスα』刊)
監督:行定勲
脚本:堀泉杏
配給:ファントム・フィルム
(c)水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会/R15
公式サイト:http://www.phantom-film.com/kyuso/
公式Twitter:https://twitter.com/kyuso_movie