山田涼介はやっぱり弟ポジションが似合う! 『キワドい2人』で田中圭とコミカル演技頂上決戦
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バディドラマを観る楽しみは、なんといってもまず俳優同士の掛け合いにある。熱狂のうちに最終回を迎えた『MIU404』(TBS系)の綾野剛と星野源、その後に始まった『キワドい2人-K2-池袋署刑事課神崎・黒木』(TBS系)の山田涼介と田中圭。『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系)の中島健人&平野紫耀もいたし、放送中のドラマでは『未解決の女 警視庁文書捜査官』(テレビ朝日系)の波瑠&鈴木京香も。そして、10月にスタートする最強のバディドラマ『相棒season19」(テレビ朝日系)の水谷豊&反町隆史も控えており、この9月から10月にかけては、いろんな相棒がいっぱいだ。また、警察官ではないが、10月9日スタートの『タリオ 復讐代行の2人』(NHK)で裏稼業の男女を演じる浜辺美波&岡田将生も相棒にカウントしてよいのかもしれない。
そんな性別も年齢もさまざまな相棒たちの中で、『キワドい2人』の山田涼介と田中圭は、最も“芝居で戦っている”感じがする。恐ろしく反射神経が良く、コメディセンス抜群の2人による頂上決戦。これまで共演作品がなかっただけに、連続ドラマの主演ポジションを争うトーナメント戦の右端と左端から勝ち上がってきて決勝戦で初めて対戦しているようなイメージだ。と言っても、山田は10代から『左目探偵EYE』や『金田一少年の事件簿』など日本テレビ系土曜9時の“ジャニーズドラマ”枠で主役を張り、いわばシード権をもっていたようなもの。一方、田中は『WATER BOYS』(フジテレビ系)のアンサンブルのひとりから一作ごとにポジションアップしてきた叩き上げ。その2人が本作ではアドリブにはアドリブ、煽りには煽りで対応しているように見え、どちらも負けていないので、安心して楽しめる。第1話、正式にコンビを組めと命じられた2人が「ベビーフェイス」「塩顔ハラスメント」とディスりあい、「僕はちゃんと正しい捜査がしたいんです」「ほう~」と絶妙な表情でにらみ合う場面は笑ってしまった。うまい!
山田演じる新人刑事・神崎は優等生タイプでお人よし。池袋署に赴任してきたときのあいさつに「至誠一貫、真心を込めて誠心誠意勤めます」と、ややくどく「誠」という文字を3回も入れるほどの善意の人だ。田中演じる黒木は「正論だけで人は救えない」と考えるルール度外視の一匹狼タイプ。正反対の2人が出会うシーンでは、半グレ集団に捕らわれた黒木があと先考えずに拘束を解いてガス大爆発を招きそうになり、神崎は監禁され火事で死にそうという非常時にもかかわらずマニュアルどおり事を進めようとするという、行動からそれぞれの性格と弱点がよく分かるシーンになっていた。
実は『キワドい2人』は原作からかなりの部分がアレンジされていて、原作小説『K2 池袋署刑事課神崎・黒木』(『ルパンの娘』の横関大著・講談社文庫)では、神崎と黒木は腹違いの兄弟ではない。2人は同期の仲間で同年代、黒木は警察官だった神崎の父にあこがれて刑事を目指したというストーリーだ。こちらは王道のバディものとして読めるが、ドラマはなぜ異母兄弟というやや無理めの設定になったのだろうか。
山田涼介で兄弟ものというと、どうしても桐谷健太と共に上流階級の子息である兄弟を演じた悲劇的な『カインとアベル』(フジテレビ系)、それをみずからパロディとして演じたようなコメディ『もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~』(日本テレビ系)を思い出してしまう。これに今回、TBSも加わって、各局がこれだけ弟設定でドラマを作るほど誰もが認める“国民の弟”的ポジションなのか。兄に虐げられてこその山田涼介ということだろうか。たしかに、観る側もすっかりその定位置をインプットされているようで、第1話のラストで黒木が神崎に「俺、お前の兄貴だったわ」「よろしくな、弟」と言って証拠写真を突きつける場面、何も知らなかった神崎がうろたえる表情に(この展開、待ってた)と満足している自分がいた。目のぱっちりとした美形で、劇中でも「ベビーフェイス」と言われているように実年齢の27歳より若く見える山田。第1話のラストシーンで誘拐を自作自演した少女(関水渚)を力づける場面では、主演前作『セミオトコ』(テレビ朝日系)で見せたようなキラキラと輝くピュア男子ぶりを見せた。これで神崎が「謎はすべて解けた!」とあの決めセリフを言い出したら、完全に山田のドラマにおける集大成になる。
この後は、原作小説にあるように黒木が警察官として道を踏み外し、神崎はそれを許すのかどうかというシリアスな展開になっていくのかもしれないが、とりあえず第2話は第1話以上にハチャメチャでコミカルシーンが満載のよう。第1話では黒木の色男ぶりやアウトロー的なかっこよさ、神崎のエリートらしい生真面目さや優しさが印象的だったが、第2話ではそれをいったん置いておいて笑いに走る!? 同居生活を始めた2人が相棒としても兄弟としても全面的にいがみ合うことになり、山田&田中のコント的なやり取りが存分に楽しめそうだ。
金曜ドラマの前作『MIU404』のようにリアリティにこだわっていたり社会問題を考えさせたりする作品ではないが、山田と田中の化学反応がどんどん起こっていけば、タカ(舘ひろし)とユージ(柴田恭兵)がぶっとんでいたバディものの名作『あぶない刑事』(日本テレビ系)に近づいていく可能性もある。『あぶデカ』でいえば浅野温子が演じた薫のポジションは木村役の江口のりこ。木村はイケメン2人も特別扱いせず面白がっているような今っぽいキャラクターだし、これまた『あぶデカ』でいえば仲村トオルが演じた透ポジションのジェシー(諸星役)や中条静夫が演じた近藤課長ポジションの八嶋智人(末長係長役)もいい味出している。こう挙げてみると、かなり『あぶデカ』を意識しているキャラ設定のようだが、そんな期待と共に今後も楽しみにウォッチしたい。
■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。
■放送情報
金曜ドラマ『キワドい2人-KS-池袋署刑事課神崎・黒木』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:山田涼介、田中圭、関水渚、ジェシー(SixTONES)、奥山かずさ、江口のりこ、八嶋智人、椎名桔平
原作:横関大『KS 池袋署刑事課 神崎・黒木』(講談社文庫刊)
脚本:吉田康弘、皐月彩
主題歌:Hey! Say! JUMP「Your Song」(ジェイ・ストーム)
プロデューサー:中島啓介、塩村香里
演出:山室大輔、村尾嘉昭
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS