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「今だからこそ共感できる作品」木ノ下歌舞伎『糸井版 摂州合邦辻』内田慈×土屋神葉インタビュー

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インタビュー

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内田慈×土屋神葉 撮影:佐藤友理

ロームシアター京都「レパートリーの創造」シリーズ第二弾作品 木ノ下歌舞伎『糸井版 摂州合邦辻』が10月に東京・あうるすぽっと、11月に京都・ロームシアター京都にて上演される。250年前から文楽や歌舞伎として愛されてきた今作は、大名家のお家騒動に翻弄される継母・玉手御前と義理の息子・俊徳丸の関係性を描く物語だ。昨年の初演に引き続き玉手御前を演じる内田慈、今回俊徳丸役に初挑戦となる土屋神葉に話を聞いた。

木ノ下歌舞伎主宰の木ノ下裕一が監修・補綴・上演台本を、FUKAIPRODUCE羽衣の糸井幸之介が上演台本・演出・音楽を務める今作。内田、土屋とも、糸井の演出作品には度々参加している。

土屋 糸井作品の魅力はなんといっても歌。歌詞も素敵ですし、ふつうの曲には出てこないような音の運びや不思議なハモりがある。それがクセになるんですよね。

内田 私も糸井さんの魅力といえば最初に出てくるのは音楽で。作品が終わってもふと口ずさみたくなるような曲なんです。それから、糸井さんってジェントルマンなのにロッカーのようで、丁寧なのにバン! と振り切れられる人。その真逆の要素が作品に入っているんですよ。

初演では、激しい情念を抱え、シーンごとに思いがけない振る舞いをする玉手御前という役の「パーツがつながらず困った」と語る内田。

内田 一度演じた今では、全てが必然に感じます。全て先を読んでいたわけではなくて、不器用だったかもしれない点も含めて。正しいかわからなくても、やるしかないと必死に行動していた人。木ノ下先生の「玉手御前の行動は彼女なりの世界平和のためだと思ってみたら?」とのアドバイスから、彼女が“自分の周りの世界を平和にしたい”と思っての行動だったと捉えることができ、スッと自分の中に入ってきました。

一方の土屋は、俊徳丸という役について、「白紙です」と笑う。

土屋 歌舞伎でこの作品を観た印象だと、線が細くて中性的なイメージです。でも今回はどんな雰囲気にするかも含め、(稽古場で)共演者の皆さんとお会いして、まわりのお芝居を観て、その上で自分の役割を探していけたら……。すべては稽古で決まると思います。

木ノ下歌舞伎では、作品の稽古に入る前にまずその演目の歌舞伎を「完コピ」することが知られている。

内田 お父さん役の武谷(公雄)さん、お母さん役の西田(夏奈子)さんは稽古開始1カ月前に「完コピ稽古始めた?」と連絡を取り合ったらしいですよ。(完コピ稽古初挑戦となる土屋へのアドバイスを尋ねると)土屋さんはお若いし、記憶力もいいでしょうから大丈夫!

昨年の初演時とは社会状況が大きく変わった。最後にふたりに、2020年のいま「摂州合邦辻」という作品を上演することについて語ってもらった。

内田 コロナによって死生観が変わり、死が以前よりも身近になる中で、「摂州合邦辻」はまさにどう生きてどう死ぬかがテーマの作品です。現代を生きる人間が、数百年前の死生観を背負って演技をする。それを生で観るという形でしか伝わらないものがあると考えています。私にとってもこの機会は必要で、この作品に携われることがどんなに嬉しいか、と今感じています。

土屋 戯曲って普遍的な側面があって、特に今回は数百年前に作られたものを今上演するわけですが、いつ上演されてもその時々に人は意味を見出すんじゃないか、と思います。今はコロナという特殊な状況ですけど、だからこそ共感を得やすいかもしれない。ある意味でこの作品を理解するとっかかり、共通項を皆さんが持っている状態なんじゃないかって。だからこそ、いろんな方に観ていただきたいと思います。

ロームシアター京都 「レパートリーの創造」シリーズ第二弾作品
木ノ下歌舞伎『糸井版 摂州合邦辻』
10月22日(木)~26日(月)東京・あうるすぽっとにて
11月2日(月)・3日(火)京都・ロームシアター京都 サウスホールにて

東京・京都公演ともに本日9月20日(日)10:00よりチケット発売

取材・文:釣木文恵 撮影:佐藤友理

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