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『仮面ライダーセイバー』はなぜポップに? エンディングダンスやふんだんなデジタル特撮の真意

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 現在、テレビ朝日系で放送中の特撮ヒーロー番組『仮面ライダーセイバー』(以下『セイバー』、2020年)は、令和になってからテレビに登場した2人目の仮面ライダー作品だ。小説家の神山飛羽真が、ワンダーライドブックという手のひらサイズの本型アイテムをベルトに装填して変身し、ライドブックに秘められた力を媒介にして戦う。この作品のエンディングテーマで、飛羽真たちレギュラー主人公がダンスを披露しているのが放送直後から話題を集めている。

 主人公たちがエンディングでダンスを踊る特撮ヒーローといえば、同じ東映制作のスーパー戦隊シリーズが有名で、『セイバー』と同じく日曜朝に放送中の『魔進戦隊キラメイジャー』(2020年)もまた、ダンスエンディングの伝統を引き継いでいる。『セイバー』のエンディングが話題になったのは、スーパー戦隊と同じ路線のダンスものという以外に、平成以降の仮面ライダーシリーズでエンディングが付いた作品が久しぶりという点も大きい。

 平成から放送が始まった仮面ライダーシリーズ、すなわち平成ライダーと呼ばれるグループは10作品を区切りに1期、2期と分類されながら、『仮面ライダークウガ』(2000年)から『仮面ライダージオウ』(2018年)まで全20作品あるのだが、この中で放送フォーマット上の独立したエンディングテーマが設けられたものは、『仮面ライダークウガ』と『仮面ライダー響鬼』(2005年)の2作品のみ。他の作品群では、ライダーと怪人のバトル中に流れるボーカル曲を、便宜上はエンディングテーマとして宣伝していた。つまり『セイバー』は実に15年ぶりに本編終了後にエンディングが流れるようになった仮面ライダーなのだ。メインターゲットの視聴者たる児童の中には、スーパー戦隊のようなポップなダンスが最後に流れる仮面ライダーを、新鮮な目で観る子どももいることだろう。

 『セイバー』の主題歌は、オープニング、エンディングともに作曲、演奏などで東京スカパラダイスオーケストラのメンバーが参加しており、エンディングのダンス振付は欅坂46の数々の楽曲に関わってきたダンスアーティストのTAKAHIRO(上野隆博)が担当している。音楽面もダンス面でも要注目の特撮ヒーローなのだ。また、ライドブックの持つ力として『ジャックと豆の木』や『アリとキリギリス』『ピーターパン』といった有名な童話をモチーフにした、テレビ特撮番組とは思えないほど豪華なデジタル特撮が多く用いられ、大人の視聴者でも感心する絵作りがなされている。

 エンディングのダンスの軽快さと巻き込まれ型主人公の面白さも相まって、作品全体の印象が明るい『セイバー』だが、令和最初の仮面ライダーだった『仮面ライダーゼロワン』(2019年)も、お笑い芸人を目指していた主人公が滑りがちなギャグを連発するという、子どもに受けやすいキャラクター付けが盛り込まれている。こうしたメインターゲットの児童の興味を惹くコメディタッチの演出は、『仮面ライダーW』(2009年)や『仮面ライダーオーズ』(2010年)など、平成ライダー2期に分類されるシリーズ以降は特に顕著で、登場人物の両目がハート模様になったり、ギャグマンガのキャラクターのような派手なリアクションを取ることが多い。デジタル合成の技術が進んだことで、実写の映像を漫画的に誇張する映像作りが簡便になった利点もあるのだろう。ライダーの変身場面と戦闘シーンもまた、戦隊ヒーローたちのようにCGエフェクトを多用した映像が多くなった。

 平成ライダーのすべてがシリアス一辺倒ではなく、子どもにとってキャッチーな登場人物のコミカル演出、視覚的に分かりやすいギャグ描写はあったのだが、それらの愉快な要素をグッと強めた映像作りが平成2期以降に多く散見されるようになったのも確かで、次第にスーパー戦隊の持つ楽しさの線に近くなってきた気がする。とはいえ、スーパー戦隊よりは対象年齢を若干あげて制作しているという仮面ライダーは、放送が進むごとに苦悩する主人公のドラマ性を深め、ハードな展開になるのが毎年のお約束なので、その意味では『セイバー』がどのような作品に成長してゆくか先が楽しみでもある。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■放送情報
『仮面ライダーセイバー』
テレビ朝日系にて、毎週日曜9:00〜9:30放送
原作:石ノ森章太郎
プロデューサー:井上千尋、水谷 圭、高橋一浩
監督:柴崎貴行、中澤祥次郎、ほか
アクション監督:渡辺 淳
特撮監督:佛田 洋
音楽:山下康介
出演:内藤秀一郎、山口貴也、川津明日香、青木瞭、生島勇輝、知念里奈、レ・ロマネスクTOBI、ほか
(c)2020 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/saber/
公式Twitter:@saber_toei