窪田正孝×山崎育三郎×中村蒼、朝ドラを飾る三羽烏 『エール』で演じた偉人たちの半生
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ついに福島三羽烏が本格的に始動する。『エール』(NHK総合)第15週「先生のうた」では、裕一(窪田正孝)が「露営の歌」を作曲しそれが爆発的にヒット。裕一から歌手に推薦してもらった久志(山崎育三郎)は共に名声を上げることとなる。その曲をきっかけに裕一のもとにはさらなる軍歌の依頼が舞い込み、そこで今度は、鉄男(中村蒼)に歌詞を頼むことにするのだった。
福島三羽烏のモデルと言えば、福島県福島市出身の作曲家・古関裕而、作詞家・野村俊夫、福島県本宮町出身の歌手、伊藤久男の3人のことを指す。戦時歌謡「暁に祈る」でデビューし、代表曲には「岬の灯り」「福島音頭」などがある。ドラマ中では同級生である3人だが、実際に出会った時期は異なるという。作中では出征する恩師・藤堂(森山直太朗)の心に寄り添いながら「暁に祈る」を作詞することで、鉄男がスランプを抜け出す。
『エール』の中でも極めて注目されるキャラクターでもある鉄男と久志。3人の半生を辿れば、裕一を救い、応援し、嬉しいことも悲しいことも共有してきた。そんな彼らを演じる中村蒼と山崎育三郎もまた、今注目の役者だと言えよう。
そもそも裕一には吃音があり、幼少期から引っ込み思案な性格。藤堂先生と出会い、音楽の才能を見出してもらうまでは周囲と馴染むことさえできなかった。大人になってからも気弱で優しく、のんびりした性格であることは変わっていない。その実、頑固で自分の信念を曲げないところもあり、弟との軋轢など家族関係での苦労もした。そんな裕一を強い説得力を持って演じるのが窪田である。独特の高い声と狼狽えるような挙動で気の弱さを表現し、時に情けなく、愛らしく演じている。レコードが売れてヒットしようとも、鼻にかけた様子も見せないのは正に裕一らしさを表しているのだが、自然体で丁寧に作り上げていく窪田の手腕が感じられるシーンともなった。
そんな裕一を幼少期に救ったのが、中村演じる鉄男だ。“大将”の愛称で呼ばれる鉄男は、幼い頃から町のガキ大将。腕っ節も強く、男気溢れた性格だ。一方で、詩を書くなど繊細な心も持ち合わせており、誰よりも心に響く言葉を紡ぐことができる。東京に出てきてからは、生計を立てるためにおでん屋を営みながら作詞家を目指しており、福島三羽烏の中では一番の苦労人でもある。鉄男を演じた中村は、みんなのまとめ役ともいえる鉄男を男らしく堂々と演じる。一方で「鉄男の悲恋」が描かれたこともあり、中村だからこそ出せた哀愁を帯びた瞳や、優しさゆえの強がりなど複雑なシーンを繊細な芝居で演じきり、涙を誘った中村は、朴訥な鉄男の強さと細やかさの演じ分けで、多くの視聴者を虜にしたことだろう。
そして「露営の歌」を歌唱し、福島三羽烏の歌手という立ち位置から唯一表舞台に立つ久志を、山崎が演じる。突然現れては突然消え、藤堂先生の前でさえミステリアスな様子を見せた久志は、キザなモテ男だ。女性を見ればすぐに口説き、どんなところでも自分が頂点であろうという気概を持つ根っからのスター気質。裕一らと共に過ごすときは、弱い面や情けない姿も多くみせ、そのギャップもまた魅力的なキャラクターだろう。山崎はそんな久志をいつも振り切った芝居で熱演し、キラキラと輝くオーラを見せた。個性的な性格の久志だが、山崎の芝居にかかればユーモラスで愛嬌のあるキャラクターとして多くの人に親しまれている。
窪田、中村、山崎はそれぞれの個性で福島三羽烏を演じ、今回いよいよ3人でデビューを飾る記念すべき姿を披露することとなる。これまで3人がそれぞれの道で身を立てようと努力してきた姿を思うと、彼らがここまでこれたことに胸が熱くなる。
■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter
■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、中村蒼、山崎育三郎、森七菜、岡部大、薬師丸ひろ子ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/