アンジャッシュ 児嶋一哉、磨きがかかった“くどくない個性” 『半沢直樹』結末はいかに!
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いよいよ最終回を迎えるTBS系日曜劇場『半沢直樹』。シリーズ史上最大にして最強の敵である政界の大物・箕部啓治幹事長(柄本明)に挑む半沢直樹(堺雅人)の、現時点での最後の戦いが描かれる。そんななか、にわかに注目を集めているのが、秘書・笠松茂樹役で登場しているお笑いコンビ・アンジャッシュの児嶋一哉だ。
第8話の放送延期を受けて急遽生放送された特番『半沢直樹の恩返し』で、シリーズの演出を務める福澤克雄監督が、最終回で笠松が重要な役割を果たすと言及。児嶋自身は番組でどんな役割かについて語っていなかったが、現場のボスがそう言うからには、きっとキーマンとなる活躍が見られるのだろう。
また福澤監督は児嶋の起用理由について、自身が演出を務めた日曜劇場『ルーズヴェルト・ゲーム』(番組では『ノーサイド・ゲーム』と話していたが、児嶋は『ノーサイド・ゲーム』には出演していないので、『ルーズヴェルト・ゲーム』のことだと思われる)での演技を絶賛し「いいエンジンを持っている」と評していた。
新シリーズの「銀翼のイカロス編」から登場した笠松は、江口のりこ演じる白井亜希子国土交通大臣の秘書という役柄だ。原作にも白井大臣の秘書は出てくるが、名前もなく見せ場もない。ドラマのオリジナルキャラクターと言ってもいいだろう。
第9話までの登場シーンでは、白井大臣から、半沢の作成した帝国航空再建案の出来栄えを聞かれた際「見事な再建案だと思います。これなら自力復興は可能でしょう」と半沢を評価する場面や、箕部幹事長に自殺してしまった牧野副頭取の通帳のコピーを渡す場面、そして第9話では伊勢志摩ステートの不正なお金の流れを調べに来た半沢や森山(賀来賢人)の足取りを追う場面など、匂わせる部分はあるものの、そこまで物語に絡んでくる動きを見せていない。
半沢の敵となる政府側の人間であるが、半沢のバンカーとしての実力をあっさり評価するなど、オリジナルキャラクターであるため、最終的に半沢の敵となるのか味方となるのか分からない。かといって、含みだらけの芝居で視聴者を翻弄するわけでもない。
それなのに、なぜか気になってしまう……。以前、2016年に公開された三島有紀子監督の『少女』という映画に国語教師役で出演した児嶋の芝居を「くどくない個性」と表現した。強烈な個性を発揮するキャラクターを演じるわけではないが、なぜかあとを引くような余韻の残す芝居をする。
だからこそ、善か悪か分からないようなキャラクターを演じると、どうしても気になってしまう。『少女』のときも、子供たちに「夢をあきらめるな」と説きつつ、コンプレックスの塊として狂気的な面を持つ、ある意味で怖いキャラクターだったが、芝居は淡々としていた。
児嶋自身、笠松というキャラクターが、半沢にとって味方になるのか、敵となるのか分からないまま芝居に入っていたと話していたが、デフォルメされていないキャラクターを不気味に演じることにかけては一級品だ。
こうした児嶋の持つ俳優としての特性について、アンジャッシュのシュールなコントが原点にあるのかインタビューで聞いた際、「ボケとツッコミで逆を連発していくようなネタをやっていてもあまり受けがよくなかった。ずば抜けてセンスがあるわけでもなく、見た目の個性があるわけでもない。苦肉の策で、台本を面白くしてストーリー性のあるコントをやるようになった」と話し「後付になるかもしれませんが、こうしたコントの経験が、いまの役者の仕事に繋がっていたのかもしれない」と語っていた(引用:イジられキャラ確立で、相方・渡部とのイライラも緩和 アンジャッシュ児嶋)。
キャラの濃さでインパクトを残すのではなく、ストーリーのなかで「あれ、なんか気になるな」と存在感を示す。まさに強烈なキャラクターを強烈な俳優たちが熱量いっぱいに演じる『半沢直樹』のなかで、児嶋の「くどくない個性」は妙に気になる。
最終回、原作を読んでいるファンでも「どうなるんだろう」と期待に胸を膨らませる展開になっている。そんななか、児嶋演じる笠松はどんな一刺しを見せるのか……日曜の夜が待ち遠しい。
■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。
■放送情報
日曜劇場『半沢直樹』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、上戸彩、及川光博、片岡愛之助、賀来賢人、今田美桜、池田成志、山崎銀之丞、土田英生、戸次重幸、井上芳雄、南野陽子、古田新太、井川遥、尾上松也、市川猿之助、北大路欣也(特別出演)、香川照之、江口のりこ、筒井道隆、柄本明
演出:福澤克雄、田中健太、松木彩
原作:池井戸潤『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社)、『半沢直樹3 ロスジェネの逆襲』『半沢直樹4 銀翼のイカロス』(講談社文庫)
脚本:丑尾健太郎ほか
プロデューサー:伊與田英徳、川嶋龍太郎、青山貴洋
製作著作:TBS
(c)TBS