Tani Yuukiが見つめる今の音楽シーンと自身の可能性【次世代シンガー・リレーインタビュー Vol.1】
音楽
インタビュー
Tani Yuuki
配信がスタートするや否や、飛ぶ鳥を落とす勢いで再生回数を伸ばすアーティストが増えている。まさにひとつの革命時代の到来だ。昨日まで名前も知られていなかった、そんな才能がSNS発でムーブメントを起こし、一瞬でチャートの上位に浮上する現象は、まるでシンデレラストーリーの序章を見ているかのよう。次世代シンガーとして開花するチャンスを、本人たちも思いがけず掴みはじめている。今回「ぴあ」では、YOASOBIや瑛人といったアーティストに続き、ネットでの動画投稿から広がりを見せはじめた若手シンガー3人に、根底にある想いを聞いた。そのインタビューを3日連続リレー形式で公開する。
第1回目となる今回は、TikTokに投稿した楽曲「Myra」の動画が注目され、国内サブスクチャートでも1位を獲得。さらに、Spotifyのグローバルチャートでは4位に輝き、ほか配信サービスでも世界のTOP 100入りを果たすTani Yuukiに、次世代シンガーとしての可能性、楽曲に込められた自身の体験についても話を聞いた。その瞳の奥には、謙虚さの中にもチャンスを掴もうとする野心が見え隠れしていた。
実体験を歌詞に落とし込んだ「Myra」
グルーヴを活かしたフロウとピアノのサウンドが心地良く響く「Myra」誕生のエピソードはどこにあったのだろうか。
「人それぞれ色んな失恋や別れがあると思うんですけど、誰しもその瞬間って悲しみとか怒りといった感情で壁を作って心を守っていると思うんです。涙だったり、刺のある態度だったり。でも時間が経って客観的になれると、違った景色も見えてきたりするもので、「Myra」はそんな誰しもが持っている景色や、僕なりの実体験のエピソードをもとに当時の一番素直な気持ちを汲んで作った曲なんです」
一躍、音楽シーンから注目される存在に
TikTokに投稿した「Myra」の動画からYouTubeに投稿したフルバージョンの動画再生回数も1600万回以上を超え(2020年10月時点)、サブスクチャートでも同曲が急浮上した。時代の流れが生んだヒットを彼はどう感じているのか。
「ありがたいことに音楽シーンの中にこういう形で入っていって、関わる人が急激に変わりました。曲を聞いてもらえるのは嬉しいことですし、本名で活動しているので“動画見たよ”ってしばらく連絡を取っていなかった友人からも反応が多かった。自分の知らないところでも知られるようになったのは嬉しいですね。TikTokで投稿した「Myra」の動画が一番バズったんですけど、ものすごい速さで“いいね”の数が伸びて、これまでの勢いとは明らかに違ったので一度はタブを閉じて(笑)。また開いたら通知が増えて本当に信じられなかったです。寝て起きたら夢だったんじゃないかって思うくらい」
ひとつの投稿が出会わせてくれた世界
LiSAの「紅蓮華」、DISH//(北村匠海)の「猫」をはじめ、人気アーティストの“一発撮り”が話題を呼んでいるYouTubeの人気コンテンツ『THE FIRST TAKE』の「THE HOME TAKE」への出演。再生回数は290万超え、名をはせるきっかけにもなった。
「この反響は大きかったですね。“出てることがすごいね”って言われました。はじめは僕も出られるとは思ってなかったんですよね。でも、以前から出たくて自身が所属していたオンラインボーカルグループ、WHITEBOXが所属するソーシャルクリエイターレーベル「Be」の方に話したんです。そしたら話を通してくれたみたいで、“出れるんですか?!”って(笑)。ひとつ夢が叶いました。TikTokをはじめて身の回りの環境もガラッと変わったし、そこからコラボも増えて、知らなかった人たちに「Myra」が出会わせてくれたので、僕自身の世界がすごく変わりました」
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♬ Myra - Tani Yuuki
Tani Yuuki -Myra / THE HOME TAKE(YouTube)
自身が語る、次世代シンガーの可能性
サブスクチャート上位に急浮上するまでには、確実にネットでのひとつのムーブメントがあったという。ネットが無かったらオーディションを受け続けていただろうと話す彼は、どのようにしてネットの世界へと飛び込んだのだろうか。
「WHITEBOXのメンバーがどんどん再生回数を伸ばしていて、可能性を感じたのが投稿をはじめた理由です。TikTokに投稿されているマッシュアップ動画(=複数の楽曲を編集して1つの曲にする音楽手法)をよく見ていたんですけど、楽器を弾かずにリズムだけで投稿しているので、“コード進行関係なく歌えるな”とか刺激にもなりました。TikTokは音楽に限らず可能性があると思っていて、バズらなくてもそこから手を伸ばしてくれる人もいるので他に繋がれば、それだけで道が開けることもある。僕の場合はカメラ直取りじゃなくて音を先に撮って動画を作品として投稿しようって意識はありましたけど、カバーだけで投稿して人気が出る人もいるし、そこは自由なのかなって。やりたいことがあるなら投稿してみたら良いと思います」
音楽との出会い
高校を卒業し、音楽の専門学校に進学。当時の話を聞くと、内申点が足りず「自分に残されたものが音楽だった」という意外な答えが返ってきた。しかし、ギターを手にしたきっかけといい、偶然が重なりながらも音楽が彼を呼んでいたようにも感じられた。
「親が音楽が好きでクイーンやエアロスミスが車ではよく流れていましたね。母はピアノ、父はバンドが好きでエレキギターを弾いてました。中学2年生の頃に、怪我をしたタイミングでおじいちゃんから貰ったアコースティックギターをストレス発散にはじめたのが音楽との出会いでしたね。体調が悪くて荒んだりするじゃないですか。その時におじいちゃんが声をかけてくれたんです。ギターとドラムが家にあって、“どっちやる?”って。3年生になって少し体調が良くなって、ゆずさんとかアコースティック系の方が好きだったのでアコースティックギターを選んで、スピッツの曲を練習しながら“コードが押えられない”とか言いながら弾き語りをはじめて、こんなに面白いんだって熱中しました」
自分と同じ状況の人たちを励ましたい
可能性を求めて、進んだ先で訪れた変化。彼の音楽に対する思いが、彼自身を成長へと導いたようだった。
「実は中学に通えない時期があって、内申点が足りなくて。自分に残ってたのは音楽だけだなって思ったんです。中学の時に体調を崩して、“同じ状況の人たちに元気になってもらえるような歌を届けたい”っていうのは僕の根本に凄くありました。なので、これしかないと思った。当時はピアノも教わったことがなく独学で、オリジナルを作り出したのも専門に進んでから。音楽をはじめて人前に立つようになって、それまでは結構引っ込み思案だったけど、少しずつ自分の主張をするように変わりました」
コロナで会えない人を想って綴られた新曲「Life is beautiful」
今月7日にリリースされた新曲は家族や恋人、大切な人たちに限られた人生の中でどれだけ会えるのか考えさせられた、当たり前が当たり前でなくなったコロナ禍の中で感じたことが綴られている。
「コロナ前から曲は作ってはいて、専門時代から関わってくれてた人達のことを僕視点で書こうと最初は思ってたんです。けど、そんな中でこんなことが起きてしまって、後半に入るにつれて今考えてることを歌詞しました。僕のあらゆるきっかけになった自分の居場所になっているグループ、WHITEBOXで定期的に集まってたものが三密になってしまうから集まれないっていう事が大きかったですね。僕が高校生の頃、後輩の男の子がリーダーのホワイトって子を紹介してくれて、後から入ったメンバーはホワイトくんがオンラインで声をかけて集めたメンバーで、それぞれ住んでる場所が地方だったりバラバラで数ヶ月に1回は集まってたけど、それができなくて」
【MV】Life is beautiful/TaniYuuki(Full ver.)
自身の歌詞について
「Myra」はサビ冒頭のストレートなメッセージ「愛してるよ」や、韻を踏んだ言葉遊び「Myra」「My love」「diver」といった歌詞が魅力。歌詞を書く上で影響を受けたアーティストについて聞いた。
「RADWIMPSの野田洋次郎さんがずっと好きで、言葉の選び方、それを組み合わせたときに生まれる意味だったりには強く影響を受けてます。歌詞は“あの頃の感情を素直に書いたらどうだろう?”って思うこともあるし、生活の中で感じているものが全てで、それを書きたい。作る上で共感してもらえるものを目指していて、そういう時ってしんどいものがあるので、それに寄り添えるようにっていうのは常に考えてます。『愛言葉』は僕が専門の最初に書いた曲で、やはり経験を元に書いた曲なんですけど、これからは実体験でなくイメージでも歌詞を書きたいですね。ヨルシカさんをはじめ物語をもとにした音楽も増えてますけど、そういうアーティストにも憧れているのでストーリーを作って登場人物視点の曲も書いてみたいですね」
音楽に関しては良いものを作るだけ
ヨルシカやEveなどの顔出ししないアーティストへの憧れもあったというが意図せずはじめから顔出しで活動していたという。そんな彼はアルバムでなく曲単体でヒットするシーンの現象をどのように捉え、今後どのように活動を夢見ているのか。理想のアーティスト像についても聞いた。
「紛れもないチャンスなので、無駄にしないように出来ることをやりたいですね。かと言って気負ってもうまくいかないだろうし、やりたいことをやりたいように全力でやってチャンスを掴もうと思ってます。中学の頃は言葉ではうまく表現できなかったけど、音楽だと出せる部分があって、そこは今でも変わらないし、これからもずっとあると思います。理想のアーティスト像は米津玄師さんですね。僕は歌詞もメロディも僕自身が聴いて鳥肌が立つものじゃないと良いと思ってもらえないんだろうなっていう基準があるんですけど、音楽に関しては凝ったことや理論抜きに良いものを作ってるだけなので、良いと思ってもらえる人に聞いてほしいし、自分の音楽には自信はあります」
撮影:石丸敦章 インタビュー・テキスト:後藤千尋
編集:ぴあ編集部
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「Myra」配信リンク
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「Life is beautiful」配信リンク
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