眞島秀和が語る、『おじカワ』の経験と同作に寄せる想い 「人に優しくできるきっかけになったら」
映画
ニュース

人には言えない「好きなもの」を抱えるおじさんたちの微笑ましくも時にグッとくる日常を描いたドラマ『おじさんはカワイイものがお好き。』(読売テレビ・日本テレビ系)。おじさんたちの愛らしさと多様性時代にフィットした深いメッセージが反響を呼び、放送時間帯は深夜ながら毎回Twitterにトレンド入りするほどの人気を博した。
主人公・小路三貴を演じたのは、俳優の眞島秀和。普段は部下たちから憧れの視線を集める「イケオジ」だが、推しキャラ・パグ太郎のことになると愛が止まらない小路を、時にスタイリッシュに、時にチャーミングに演じ、視聴者の共感を集めた。最終回を終えた今、本作に寄せる想いを改めて眞島に語ってもらった。(横川良明)
「僕の推しは愛犬のハナちゃんです」
――大きな話題を呼んだ『おじカワ』が無事に最終回を迎えました。
眞島秀和(以下、眞島):撮影期間が1カ月強だったこともありますけど、本当にあっという間でしたね。僕もオンエアはほぼリアルタイムで観ていましたが、もう最終回かという感じで。いろんなところで話題にしていただけたことは本当にありがたかったですし、原作を読んだときから、心優しい登場人物ばかりなのがすごく印象的で。コロナのこともあって何かとギスギスしやすいこのご時世に『おじカワ』のようなあったかいコメディができて良かったなと思いました。
――改めてですが、小路さんと眞島さんご自身に共通点はあるのでしょうか。
眞島:小路さんにとってのパグ太郎のような、キャラクターや物に対する愛情はそこまでないですけど、僕は犬を飼っているので、僕が愛犬のハナちゃんを愛でる気持ちは、大きく言えば共通する部分かもしれません。
――眞島さんの推しは、ハナちゃんなんですね(笑)。
眞島:そうですね。もう毎日かわいいです(照)。うちの愛犬はいい匂いがするんですよ。他の人からするとただの親バカなんですけど(笑)。ふとしたときに愛犬の写真を見て励まされたりとか、そういうのはありますね。
――眞島さんも愛犬といらっしゃるときは、パグ太郎を前にした小路さんみたいになるんですか?
眞島:近いものはあると思いますよ。あまり人様に見せられるものではないところとか(笑)。なので、小路を演じるにあたっても、まずは愛犬をかわいがる気持ちを入り口に役をつくっていきました。
――真純(藤原大祐)に見つからないようにパグ太郎グッズを隠すところなど、小路さんのコミカルな面がすごく光っていました。コメディを演じる上で意識したことはなんですか?
眞島:ギャップですね。職場ではきちんと仕事をしているからこそ、パグ太郎を前にしたときのギャップが際立つ。そのメリハリを大事にするのと、あとはできるだけ「どこかにこういう人がいるかもしれない」と思える部分を残せるように意識していました。コメディだからと言って極端にやればいいわけじゃない。もちろん振り切った演技を求められるんですけど、そのさじ加減を間違えちゃいけないなというのは(熊坂出)監督ともよく相談していました。
――モノローグもとても面白かったです。
眞島:今回はモノローグがとても多くて。僕しかいない場面でモノローグが入るときは、現場で代わりにスタッフさんが僕のモノローグの部分を読んでくれるので、それを聞きながら間尺の調整をしていました。
――観ている分には面白いですが、演じている方は大変そうですね(笑)。
眞島:イメージできればやりやすくなってくるんですけど、撮影に入って最初のうちの何日かは出来上がりがどういう感じになっているのかわからなかったので、そこは難しかったですね。でも、モノローグが多かったおかげで、コメディ要素は表現しやすかった気がします。たとえばモノローグで遊びの部分を出せるところなら、生身のお芝居は真逆でどんどんシリアスにしてみたり。そのギャップで面白さが出せればということは意識していましたね。
「現場でパグ太郎を見ると癒されるようになりました」
――聞くところによると、今回の現場ではテストリハーサルがなく、すぐに本番だったそうで。
眞島:テストはほとんどなかったです。監督は基本的にモニターチェックもされないので、最初はどんな感じになるのかわからない、どこかふわふわした感じが自分の中にはありました。監督とは今回初めましてということもあって、この題材をどう料理されるんだろうというところからのスタートで。そこから、こういうふうに画をつないでいくつもりだからと監督の意図を聞いたり、いろいろコミュニケーションをとっていくうちに、演出の狙いがつかめてきて。そしたら、テストがないというやり方も緊張感があって面白いなと楽しめるようになりました。
――個人的には、シーンによって天候が荒れてるのがちょっと面白かったです(笑)。
眞島:そうなんです(笑)。時間がない中で撮り切らなきゃいけなかったので。第3話で急に雨が降ってくるところとかよく編集でつないだなと思います。あそこがまた(山本)未來さんがお上手なんです。(桐山)漣くんにアドリブで「相変わらず持ってるね、鳴戸くん、雨男」って言うんですけど、なんてうまいこと言うんだって横でびっくりしました。実際、今回は漣くんに関するところで雨のトラブルがたくさんあったので。本人は自分は雨男じゃないって頑なに否定していましたけど(笑)。
――全5話の中で特に印象深いシーンはどこですか?
眞島:いろいろありますけど、そうですね、今思い浮かぶのは、第1話でパグ太郎に追いかけられているシーンですね。目の前にイマジナリーパグ太郎がいて。なかなかないですからね、無言で迫ってくるパグ太郎にこっちが一方的にただ喋っている場面なんて。
――そのシーンもまさにそうですが、小路さんに切迫感があればあるほど観ている方は面白いんですよね。
眞島:まさにそれが監督の狙いで。だからこっちも一生懸命やるんですけど、スタンバイの合間合間で、ふと何をやってるんだろうとは思っていました(笑)。
――ちなみに、撮影が進んでいくうちにパグ太郎への愛着は深まりましたか?
眞島:どんどん湧いてきましたね。現場でイマジナリーパグ太郎がちょこちょこ歩いているのを見ると、ああ癒されるなと思うようになりましたし。今日撮影で使ったこのパグ太郎のグッズもうちにあるんですよ。家でちゃんとかわいがってます。ただ、うちの愛犬が上によく乗っかるんで、すごい潰れちゃっていますけど(笑)。
「翼くんは、キャラクターの筋道をものすごく考えている人」
――好きを大切にするという主題も素敵でしたが、小路さんとケンタくん(今井翼)を中心とした大人の友情劇としても胸打つものがありました。
眞島:なかなか大人になって新しく心打ち解けられる友達ってできないですからね。あんなふうに共通の趣味を持っている人同士、友達になれるのはいいですよね。
――小路さんとケンタくんの関係性が、お互いに相手を思っているからこそ遠慮しすぎちゃうところとか、男性の友情モノとしてはすごく新鮮でした。
眞島:そこについてはテストをしないという監督の撮り方がすごくうまく作用したなと思います。翼くんとは役柄についてそこまで深く話し合うということはせず。おかげでいい緊張感をキープできましたし、それが小路とケンタの関係にも出ていたんじゃないかなと。
――今井さんのお芝居はいかがでしたか?
眞島:翼くんは、ケンタだったらこうするといったキャラクターの筋道をものすごく考えている人でした。今回、見る人が見たらふたりの描かれ方がBLっぽいテイストに見えるところもあると思うんですけど、そこについても翼くんは真剣に考えて、よく監督とも相談していましたね。
――小路さんとケンタの関係が深まる過程は、確かにちょっとBLっぽくも見えました。眞島さんはどう捉えていましたか?
眞島:僕も最初に台本を読んだときに「あれ? そういう雰囲気なのかな?」とは一瞬思いました。それでプロデューサーに聞いたら、そういうことじゃないと。あれは友情なんだと言ってもらえたので、男の友情として演じました。
――ああやって相手はどう思っているんだろうとモヤモヤしながら友情を築いていくのって、男同士でも十分にあることなので、個人的にはすごく共感できました。
眞島:ドラマの中にもありましたけど、思っていることは言葉にしないと伝わらないんですよね。どうしても迷惑かなと遠慮しちゃうところもありますし。こんな距離感で嫌がられないかなって不安になったり。僕もよく考えますよ、そういうことは。ふたりを見ていると、とてもシンプルなことで人との距離感は変わるんだなと思いますね。
――おじさんたちで言えば、桐山さんの演じた鳴戸さんもとても面白かったです。
眞島:今回、漣くんとも初めましてだったんですけど、役者としてとことん振り切ったことができる人なんだなと驚きました。しかもそれを静かに自分でも楽しんでいる方だなと。
――あの「ぐぬぬ」の表情とか、見ててつい笑っちゃいませんでしたか。
眞島:おかしくて笑うというよりは、すごいなと感心しました。あれこそ本当に原作の漫画で描かれた絵をそのまんま形にしたようで。これは漣くん、かなり研究をしてきてるなと。
「もっと他人に優しくなれたらいいなと思います」
――小路さんは劇中では「イケオジ」と呼ばれていましたが、呼ばれている身としてはいかがでしたか?
眞島:非常にツラいものがありました(笑)。ハードルが高いですよ、イケオジって言われるのは。そういう設定だから割り切って演じますが、実際の僕はイケオジとは程遠いです。化粧水を塗るシーンとかも、どうやればイケオジなのか全然わからなくて。あのあたりは全部監督の指示にお任せしました(笑)。ご覧いただいたみなさんがどう感じたかはわかりませんが、そこはもう許してくださいという感じですね(笑)。
――でも、おじさんになったからこそ感じる良さもいっぱいありますよね。
眞島:たくさんありますね。今回の現場もそうでしたけど、年齢で言えば僕が年上なので、できる範囲でみんなのことをリードしたいなと思ったり。そういう気持ちが出てきたのは、ある程度年齢を重ねたからこそ。若い頃は視野が狭くて、まったくそんなところに思いも及びませんでしたから。
――そういえば、真純役の藤原大祐さんが別のインタビューで現場で眞島さんにすごくお世話になったという話をされていました。
眞島:大祐は実年齢を聞くとまだ子どもじゃんと驚いてしまうような年なんですけど、そう思わせない雰囲気で現場にいるので、僕もすごく安心して一緒にやれました。ただ、よくよく考えると、まだ16歳だから知らないこともいっぱいあると思うんですよね。だから、スタッフさんが話している専門用語で「あれ、どういう意味なんですか?」と聞かれたら教えてあげたり。役柄的にも甥っ子という関係だったので、なるべくよく話しかけるようにはしていました。
――眞島さん自身の思い描く、こういうおじさんでありたいとう理想像を聞かせてください。
眞島:(じっくりと考えて)年配の方とちょっとした雑談をしている中で出たひと言だったりが、後々振り返ったときに、あれは自分に対して気を遣ってくださったのかなと思う瞬間ってあると思うんですね。これまで僕自身も同業の先輩からそういう優しさを何度もいただいてきました。だからこそ、僕自身も押しつけがましくなく、さらりと優しさを出せる人になりたいですね。
――このドラマを観て、おじさんがかわいいものが好きなのはおかしいとか、そういう凝り固まった固定観念にまだまだ現代は縛られているんだなと感じました。眞島さんはこの作品を経て、もっと世の中がこうなったらいいのになと感じたことはありますか?
眞島:もっと他人に優しくなってあげられたら、世の中の雰囲気は柔らかいものになるんじゃないかなとは思いました。なんとなく感じている空気感なんですけど、今の世の中は他人に厳しすぎる気がしていて。世知辛い世の中だなと感じる瞬間が、みなさんにもある気がするんですね。でもこんなふうに自分の好きを大切にして、他人の好きを大事にすることができたら、きっともっと生きやすくなる人がたくさんいるんじゃないかなと。それってすごくシンプルなことだけど、だからこそ今のこの世の中に求められているんだと思うし、大げさな言い方かもしれませんが、このドラマを観たことが、そうやって何か人に優しくできるきっかけになったらいいなと思います。
――来年2月に発売されるBlu-ray&DVD BOXも楽しみにしています!
眞島:ありがとうございます。5話というととても短いお話で、ある意味深夜ドラマらしいゆるい部分もありますけど、コロナの影響で厳しい制約がある中、いい大人たちが真剣につくり上げた分、関わったみんなにとってとても大切な作品になったなと感じています。ぜひ僕たちの本気をBlu-rayやDVDでまた楽しんでもらえたらうれしいです。
眞島秀和のコメント動画も到着!
■リリース情報
『おじさんはカワイイものがお好き。』
2021年2月10日(水)Blu-ray&DVD発売
【初回限定生産 小路さんとお揃い!パグ太郎グッズ付きBlu-ray BOX】
価格:19,200円(税別)
【通常版 Blu-ray BOX】
価格:16,800円(税別)
<仕様>2020年/日本/カラー/本編+特典映像/16:9 1080i High Definition/1層/リニアPCM(日本語2.0ch)/1話~5話(全5話)/2枚組(予定)
【初回限定生産 小路さんとお揃い!パグ太郎グッズ付きDVD-BOX】
価格:16,050円(税別)
【通常版 DVD-BOX】
価格:13,650円(税別)
<仕様>2020年/日本/カラー/本編+特典映像/16:9LB/片面1層/ドルビーデジタル2.0chステレオ/1話~5話(全5話)/4枚組(予定)
※仕様は変更となる場合がございます。
【特典映像】※全商品共通
オリジナルメイキング/事前PR番組/キャスト紹介PV/1分予告動画/見どころ紹介番組など
【封入特典】※全商品共通
「おじカワ」大解剖!超豪華ビジュアルブック(48ページ)
出演:眞島秀和、今井翼、桐山漣、藤原大祐、山本未來、富田望生、愛加あゆ、水間ロン、佐藤正和、森七菜(語り)
原作:ツトム『おじさんはカワイイものがお好き。』(『COMICポラリス』連載中、既刊1~4巻(フレックスコミックス刊))
脚本:坪田文
監督:熊坂出
音楽:眞鍋昭大
主題歌:「落陽」サイダーガール(ユニバーサルJ)
チーフプロデューサー:前西和成
プロデューサー:小島祥子、熊谷理恵(大映テレビ)
制作協力:大映テレビ
制作著作:読売テレビ
発売元:読売テレビエンタープライズ
販売元:TCエンタテインメント
(c)ツトム・COMICポラリス/読売テレビ