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タラレバ娘が見つけた、ライフハック 別れ道が増える“女の30代”をどう生きるか

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リアルサウンド

 「あのとき、あーしてタラ」「もっと、こーしてレバ」と、女子会で“タラレバ”言っていた、倫子(吉高由里子)・香(榮倉奈々)・小雪(大島優子)の“タラレバ娘”が、スペシャルドラマ『東京タラレバ娘2020』(日本テレビ系)で帰ってきた。

 レギュラー放送をしていた『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)から、もう3年も経ったことに驚かされる。いや、むしろ開催されるはずだった東京オリンピックが中止になった今の2020年にも驚きだが……。

 あれから3年、社会は大きく変わってきた。劇中で小雪が心の中でつぶやいていたように、東京では1人で生きていくことが、さらに珍しいことではなくなった。「結婚しないの?」なんてセクハラだと言われてしまう世の中に。さらに今年になってからは、人との距離に対してさらに敏感になり、女子会で盛り上がるのもはばかられるような雰囲気だ。

 だからこそ、より孤独が骨にしみるタイミングでの放送となったような気がする。結婚をしていても、結婚をしていなくても、恋愛や仕事がうまくいっても、いっていなくても……より幸せを求める私たちの悩みはつきない。だから、時々こうしてスペシャルドラマという形で、タラレバ娘からの盛大な「出動命令」がかけられるのは、なんだか心が弾む。

 倫子、香、小雪は、33歳になってそれぞれの人生を切り開いていた。新しい恋人と順調に進んでいる倫子。平成ギリギリ婚を果たした香。自分のお店を持つ夢を叶えようとしている小雪。変わっていないのは、今も女子会で盛り上がっていること。2020年も、第1出動(ひまだから集まりたい)、第2出動(仕事の愚痴を聞いてほしい)、第3出動(誰かの悪口をぶちまけたい)、第4出動(恋愛がらみの緊急事態)は健在だ。

 もちろん、今回のスペシャルドラマでかけられた出動命令は「第4出動」。倫子が自らプロポーズをして、結婚を決めたのだ。穏やかな愛を手に入れたという確信からか、全てのものに優しくなれる倫子。行く先々で「おめでとう」という言葉をもらい、つくづく結婚とは幸せを運んでくれるものだと噛みしめる。

 だが一方で、「結婚=ゴールイン」ではないことに香は直面していた。優しい夫は優柔不断で鈍感とも言えること。義母の干渉が日に日に強くなっていくのに、夫は「甘えればいい」と真剣に受け止めてくれない。2人で生きていくと思っていたのに、気づいたら積み上がる小さな違和感を1人で整理する日々。“これが私のしたかった結婚?”と、思わず自問自答してしまう。

 さらに、小雪は倫子が結婚することで、独身は自分1人だけになってしまったという現実をどうにか消化しようとしていた。親友が幸せになることは、心から祝福したい。でも、自分の中にある拭えない寂しさとどう向き合えばいいのか。きっと夢を叶えれば達成感でいっぱいになり、この孤独は消えていくはずだと言い聞かせながら。

 結婚しようとする倫子、結婚した香、まだまだ結婚が遠い小雪。ここに出産、子育て入ってくると、女の30代は一気に道が別れてしまったような気持ちになる。ライフステージが変わるというのは、そういうことだと頭ではわかっていても、学生時代から社会人になったときには感じなかった距離が生まれやすい。

 しかし、そんなことを言ってられない事態が待っていた。なんと倫子の結婚は、逆『卒業』(ダスティン・ホフマン主演映画)パターンで、新郎の元カノに持ち逃げされて破断に。小雪が「第3出動」で招集するも、倫子と香はお互いの余裕のなさゆえに大喧嘩に発展。虚しさを抱えた小雪は、マッチングアプリで出会った男性と何かが始まればと期待して一夜を共にするも、「何してんだろ」状態に……。

 1つうまくいくとトントン拍子にことが進み、人生ハッピーモードに突入! しかし、1つうまくいかなくなると、次々とネガティブブラックホールへと吸い込まれるあの感じ。きっと30代の女性ならば、「あるある」と共感せずにはいられないはずだ。だがブラックホールの中に、ずっといるわけにもいかない。八つ当たりしても自己嫌悪に陥るだけ。堕ちるところまで落ちたら自分で立ち上がらなければ。なぜなら「女子会だ」とは言いながらも、私たちはちゃんと大人の女だとわかっているから。

 口グセを「〜タラ、〜レバ」を「〜から」に変えていこう。それは、作中で倫子が披露したライフハックともいえる気づき。「そんな言葉尻一つで……」と思われるかもしれないが、人は言葉で絶望したり希望を持ったりする生き物だ。1つの言葉を変えただけで、そこからトントンとハッピーモードへ突入することだって十分ありうる。

 「タラレバ」を使わないポイントは、ネガティブの要因を過去に探すのをやめるということ。そのためにも、1つひとつの選択を後悔しないことが大切だと改めて感じる。自分が全力で考えて決めたことなら、たとえそれが望み通りの展開にならなかったとしても、「あーしてタラ」「こーしてレバ」と他の選択肢を思い浮かべて悶えることはしない。過去に戻ったとしても、その選択を必ずしたといえるものであれば。

 「あの経験があったから」「この出会いがあったから」「あなたがいてくれたから」「私が決めたから」……今の自分がある。そんなふうに生きていこう。これまで以上に明日が見えない時代だからこそ、ネガティブブラックホールを抜けるための手段は、なるべく多く用意しておいたほうがいい。

 ピンチのときに「出動命令」が出せる人とのつながりを大切にするのはもちろんのこと。先述したように、女性の30代は歩む道が大きく分かれるときがある。ましてや、このご時世でもある。だから1人でできることもどんどん試したほうがいい。口グセを変えるほかにも、Web上で味方を探してみたり、夢をいくつも持っておくことも素敵だ。数年後の自分に「あのときの私、よくやった」と言わせる選択をしてやろうではないか。そして、またいつか『東京タラレバ娘20XX』の「出動命令」がかかることを楽しみにしながら。

■放送情報
スペシャルドラマ『東京タラレバ娘2020』
出演:吉高由里子、榮倉奈々、大島優子、坂口健太郎、平岡祐太、石川恋、加藤諒、あ〜ちゃん(Perfume)、松下洸平、渡辺大知、金田明夫、田中圭、鈴木亮平
原作:東村アキコ『東京タラレバ娘』(講談社『Kiss』連載)
脚本:松田裕子
音楽:菅野祐悟
主題歌:「TOKYO GIRL」Perfume(ユニバーサルJ/Perfume Records)
チーフプロデューサー:加藤正俊
プロデューサー:鈴木香織(AXON)
演出:鈴木勇馬
制作協力:AXON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ