シネワールド、米英での映画館休業を発表 コロナ禍がもたらす悪影響は広がる一方に
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シネワールドが、米国および英国事業の一時的な休業を発表。休業は約4万5000人の従業員に影響を与えるとともに、この発表を受け株価は40%以上下落することとなった(参照:Regal Owner Cineworld Confirms Temporary Suspension of U.S., U.K. Operations | Hollywood Reporter)。シネワールドは、先日には2020年上半期に約16億ドルの赤字計上を明かしており、不穏なニュースが続いている。
AMCに次ぐ世界第2位の大手映画館運営事業会社・シネワールドが、ロンドン時間の月曜早朝、米国および英国事業の一時的な休業を発表した。米国のリーガル・シネマズの536館、英国のシネワールドとピクチャーハウスの127館は10月8日より休業となった。これにより、シネワールド社の株価は、ロンドンの取引で47%下落を記録した。
「これは軽々しく決定したものではありません。すべての市場で安全で持続可能なを復帰を実現するために、地域の安全衛生ガイドラインの遵守や規制当局や業界団体との徹底的な連携を行い、全力を尽くしました」と同社CEOのムーキー・クライシンガーは述べている。
アナリストのエリック・ウォールド氏は、映画館事業において、コロナ禍による最新作上映の遅延は、業界に大きな悪影響をもたらす可能性があると分析している。
「新作を、最大のリターンを得られる形で製作スタジオが公開したいのは大いに理解できますが、一方で、映画館業界の維持に協力し、忘却の彼方へ追いやらないだろうと信じたいですね。映画館業界の再発は、業界自身の手の追えないところにあることを度々強調してきました。しかし、もし映画製作スタジオがリリースを先延ばし続けるならば、公開準備ができたときには映画館は残っていないかもしれません」
休業に際した発表されたシネワールドの声明においても、最新作上映の遅延からの影響が読み取れる。
「主にニューヨークを中心とした米国の主要市場が閉鎖されたままで、再開時期の見通しもなく、制作スタジオは新作映画の公開を躊躇しています。これらの新作がなければ、弊社では主要市場である米国と英国のお客様に、コロナ禍でも映画館に戻ってきたいと思わせるような、魅力的な新作映画を幅広く提供することができません」
深刻さを増し続ける、コロナ禍の映画館事業への影響。背後には、大きな収入が見込めない制作スタジオと上映する新作がなくなってしまう映画館事業という2者の対立構造が見え隠れする。経済的観点から見れば、一概に制作スタジオを非難することが難しいのは明白だ。だが、長期的に考えるともはや映画館がなくなってしまうということは決して非現実的な話ではない。その取り組み方こそ違えど、同じ「映画」業界において必要不可欠な両者。制作スタジオによる映画館事業への歩み寄り、また映画館事業での新作公開以外での収益獲得の模索が重要になってくるだろう。
■綾瀬くろ
92年生まれの海外在住経験ありのライター。カルチャーとテクノロジーが好きです。