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元GO!GO!7188 ユウ擁するバンド YAYYAY、ユニークな楽器編成となった経緯とは? 歌詞の世界観についても語る

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 またひとつユニークなバンドが誕生した。YAYYAYである。メンバーは、GO!GO!7188解散後はチリヌルヲワカを率いているユウ(Vo/Gt)、様々なバンドに参加しアーティストのサポートで名前を見ることも多い須原杏(Vn)と林田順平(Vc)、この3人に声をかけたのが札幌を拠点に幅広い音楽活動をしておりShizuka Kanata名義でソロ作を発表している田中一志(Arr/Prg/Mix)だ。

 記念すべき第1作『I’m Here』は、ユニークな楽器編成を生かし想像の上をいく個性的なサウンドと表情豊かなユウのボーカルが溶け合って、不思議なポップワールドを展開する。4人の馴れ初めから作品完成まで、Zoomを通じてのリラックスしたインタビューでたっぷり話してもらった。(今井智子)

“すごいミュージシャン”として紹介された須原杏と林田順平

ーーボーカル、ギター、バイオリンにチェロ、そして打ち込みとユニークな編成ですが、そもそもどのように4人が集まったのですか? 田中さんとユウさんは以前からのお知り合いだそうですが。

田中:ユウちゃんがGO!GO!7188のメンバーだったときに出したソロアルバム『てんのみかく』で、僕が「蜜月」と「小豆」のアレンジとサウンドプロデュースをさせていただいて。その時からのおつきあいですね。

ーー『てんのみかく』に関わったのは?

田中:当時GO!GO!7188のプロデューサーだった人が北海道出身で僕と一緒にいろいろやっていて。その彼の紹介ですね。その後に、僕がShizuka Kanata名義でソロアルバム『Divine Hokkaido』(2013年)を出した際にユウちゃんに参加してもらって。それからは、一緒に遊びに行ったりしてます。北海道のお父さんみたいな存在かな(笑)。

ユウ:北海道旅行した時に案内してもらったりとか。

ーー林田さんと須原さんはどういった経緯で参加することになったんでしょう?

田中:二人が参加しているGen Peridots Quartetのライブで、僕がプロデュースしているsleepy.abの成山剛(Vo)と山内憲介(Gt)がやってるユニットが対バンして。そこで初めて二人の演奏を見たのですが、あまりに素晴らしいので声をかけて無理やりお友達になりました(笑)。

Gen Peridots Quartet – Freesia

須原:4、5年前ですね。

田中:ユウちゃんにボーカルで参加してもらった曲が入った僕のソロの音源を、初対面で無理やり杏ちゃんに渡したんですよ。そしたら、反応をくれて仲良くなれました。

須原:(笑)。すごくいいアルバムで、一志さんに長々と感想を送ったんですよ。

田中:コアなラップが入るような「Happy Ending」という曲だったんですけど、それを気に入ったからって自分のイベントで使わせて欲しいって連絡きて(笑)。それが、ユウちゃんが歌ってる曲だったんです。

ーー当時からイメージしていたサウンドや方向性があったんですか?

田中:こういう弦の人たちがいたら、自分が思い描いているサウンドが即できるなと思いましたね。僕は弦が大好きなんですけど、クラシックではなくてロックとかクラブ系の音楽で。例えば順平くんがチェロでループ的なフレーズを弾いてたのがすごくかっこよくて。それは自分の中でやりたい音楽の一つと感じたし、須原杏ちゃんのアグレッシブな演奏も音がスッと入ってきた。やられた! って感じでしたね。その後、いろんなレコーディングやライブを手伝ってもらったりして深まっていった感じですね。

ーーなるほど、4人がつながりましたね。

田中:このバンドは、もともとバンドとしてスタートしたのではなくて、ユウちゃんが僕のソロアルバムを手伝ってくれるという話になってから、レコーディングを進めていくうちに“僕のアルバム”というより、みんなの個性があって成り立っているアルバムになっていった。だったらバンドというかたちのほうがいいなと僕の方から提案して、みんなが乗ってくれたという感じです。

ーーみなさんの気持ちが一つになった瞬間があったんでしょうね。どのように制作に向かわれたんですか?

田中:僕が『てんのみかく』に関わらせてもらったときのアレンジは、弦の編成が入ったものだったんですよ。新しく作る曲も弦の入ったものをやりたいなと思っていて。ユウちゃんに「こういうすごい二人がいるんだよ」って話して、この編成になっていきました。

ユウ:一志さんからまたソロプロジェクトをやるんだって話を聞いて、ぜひ参加させてくださいよみたいな話をしてたんですけど、作詞作曲もこんなにガッツリやることになるとは想定してなかった(笑)。それは想定外だったけど、それならチリヌルヲワカではやらないような曲をやってみたいと思って。二人のことは、一志さんから「すごいミュージシャンに出会ったから、絶対ユウちゃんと一緒にやったら面白いことになる」って聞いていました。弦楽器を取り入れた曲は、昔のソロアルバム以来。レコーディングでそんなにガッツリやったことがなかったので、すごく楽しみにしてましたね。

田中:最初は僕が「ダイバダッタ」と「Bitter & Sweet」を書いてユウちゃんに渡して。ユウちゃんにも「曲作ってよ」ってお願いしました。

ユウ:最初の2曲はデモをもらってたんですけど、それには英語っぽい歌詞がついた一志さんの仮歌も入ってて。でも私が日本語での詞にガラッと変えたって感じですね。

YAYYAY – I’m Here Trailer

メロディが呼んでくる言葉を歌詞として綴りたかった

ーーユウさんは、チリヌルヲワカでは詞曲ともにご自分で書いていますが、GO!GO!7188では作曲担当で作詞はアッコさんでしたね。他の人が書いた曲に歌詞をつけるというのは、珍しいケースかと?

ユウ:そうですね、GO!GO!7188では歌詞はひとつも書いてなくて。だから他の人の書いた曲に歌詞をつけるのは初めて。私は、曲を作るのは一番得意なんですけど、歌詞を書くのはもともと自信がないから、結構プレッシャーを感じるんですよ。最初は大丈夫かなあって心配だったんですけど、とにかくメロディが呼んでくる言葉を歌詞として綴りたかった。チリヌルヲワカで歌詞を書くと、辻褄があってないなとかメチャメチャ考えちゃって、すごい時間がかかるんですよ。そういう感じではなくインスピレーションで、詩的な感じにしたいなと思って。

ーー確かに今までのユウさんとは違う言葉使いを感じますね。

ユウ:そこは意識しましたね。今までの、チリヌルヲワカっぽい世界観を引きずりたくないというか。新しい世界観を歌詞にしたいというのは、全体的に意識してました。チリヌルヲワカだと、いろいろひねくれた表現とかやりがちなんですけど、もうちょっとストレートにしてみたりとか。チリヌルヲワカでは使わなそうなフレーズを使ってみるとか。歌詞の主人公のキャラが今までになかったようなものだったりとか。

「証明」チリヌルヲワカ

ーー「ひかりのみなもと」のように今までのユウさんにはなかった内省感や逡巡が見えるのが新鮮です。

ユウ:ありがとうございます。チリヌルヲワカだと私のパーソナルな部分が多いと思うんですよ。YAYYAYに関しては、私らしさをあまり出さないというのがあるかもしれない。主人公が私じゃないというか。架空の物語みたいなのが強いかもしれない。

YAYYAY – I’m Here Trailer

ーーその感じは「愛する人を間違えた」にもありますね。

ユウ:なんとなく、昼ドラのヒロインみたいな(笑)。ドラマっぽいイメージがありますね。

ーー「Bitter & Sweet」も綺麗な言葉が並んでいいですね。

ユウ:そうですね。わりとストレートな感じ。綺麗な言葉をストレートに。そんな風に言葉を使うのは、あんまりなかったと思います。

ーー「I’m Here」は唯一英語詞です。

田中:僕がトラックを作って仮歌も入れて送ったんですけど、ユウちゃんに「メロディも好きに変えていいよ」ってデモを渡したら、作り変えてくれたんですけどそれがメチャメチャ素晴らしい。

ユウ:仮歌はメロディも全然違ったんですけど、アルバム全体のバランスも考えて、なんとなく曲の雰囲気で英語にしたいなって。アルバムの中でクレイジーな存在にしたかったんですよ。それで英語に挑戦してみたって感じですね。すごく簡単な言葉を並べただけなんですけど。

ーー英語で「わかった!」って繰り返し歌ってて、最後に男の人の声で、日本語で「わかったって!」って。

林田:あの声は一志さんです(笑)。

田中:3人に無理矢理ボーカルブースに追い込まれました(笑)。

ユウ:一志さんの声を聴きたいって思ったんで。私が英語で歌ってるのに日本語でくる(笑)。

ーーこの曲がアルバムタイトルにもなっていますが、リードトラックなんですか?

田中:リードトラックというわけではないんですが、我々に合っている気がしたので。リード曲は「ダイバダッタ」で、MVも作ってます。コロナもあってみんなで集まれなさそうなので、素材を集めたものになると思います。

ーーレコーディングは、こんなご時世ですから大変だったのではないですか?

田中:ベースになる音を8割がた自分が作って、それをみんなに渡して。レコーディングを始めたのはコロナ流行の前だったんですよ。

ユウ:騒ぎになるちょっと前ぐらいにやってました。

林田:去年の夏頃に始めてましたよね。レコーディングの最後の方では、みんなマスクしてたような気がする。

須原:2月中旬ぐらいでしたね。

ーー弦のお二人はとても個性的な音を鳴らしていますが、どんな風にアレンジして演奏していったのでしょう? 

林田:「一志さん、こういうの好きだろうな」と思うものを弾いたりしてますね。こういう弾き方したら喜んでくれるだろうなって。それが自分も好きになったりする。

須原:一志さんは自由にやらせてくれるので、レコーディングをやりながら音を決めていったりしました。いびつになるように、奏法でも特殊なこととか、普通やらないことを探ってやって。それが結果として、このバンドにハマったかもしれない。

ーーずっとピッチカート(弦をはじく手法)で弾いていたり、面白いですよね。

須原:切り刻んで録ったり、重ねたりして面白いのが録れたかな。

ーー弦楽器はメロディ楽器というイメージがありますけど、そこから逸脱してるというか、オルタナティブな感じがします。

須原:いい意味で打ち込みっぽいというか。元々デモの時点で打ち込みっぽいアレンジだったから、それを生で弾いたらもっと違う感じにならないかなって。1曲全部指で弾いてるだけの弓を使わない曲もあります。普段はもっと滑らかにすることが多いんですけど、逆に打ち込みっぽくしたことが、一周まわって面白くなったと思います。

ーーユウさんは、この個性的な弦を弾くお二人と一緒にギターをプレイしてどうでしたか?

ユウ:デモをもらった時に、打ち込みで弦も入っていたんですけど、それを生に変えたらどうなるのかというのは想像もつかなかった。だから、すごい難しそうなフレーズを生で再現してるのにびっくりして。

ーーギターも触発されたり?

ユウ:ギターは、最初に自分がデモとして作ったものから変えてないんですよ。ギターを先に入れて、弦を乗せてくれたったって感じなので。それをそのまま一志さんが採用してくれました。

ーーギターとバイオリンとチェロという弦楽器だけで絶妙なバランスになっているのがこの作品の魅力だと思いますが、まとめる上でのご苦労とかありましたか?

田中:ユウちゃんの歌の個性が素晴らしいので、自然と歌が聴こえる音楽になるんですよね。歌がガッツリ中心にあって聴こえるので、周りが好き勝手に何やってもOKぐらいのつもりでアレンジできるんだと思うんですよ。

ーーなるほど。

田中:なので、僕も好き勝手にやってるし、弦の二人に渡した音も、打ち込みだと真っ平らな音になって面白くないんで、表情が立つように、二人に演奏してもらって混ぜ合わせたら、こんな風になった。

ーー須原さん林田さん、ユウさんのボーカルはどうですか?

林田:好きですよ。いろいろやってると、好き嫌いもなくはないんで、本当にいいと思うものはなかなかね。そういう人に出会えて、ありがたい。

須原:歌い回しとか、これ以外ないみたいな説得力があってすごいなと思ってました。普段話してる雰囲気と全然違うんですよね。圧倒されますね。ユウさんが歌えば完結するみたいな、まとまるところがあって。

ーーユウさん自身はボーカルでの新たなトライとかありましたか?

ユウ:ボーカルに関しては、自分の全力を発揮したかったんです。自分以外の人が作ったメロディを歌うことは、あんまりやっていないので、そういう意味でもすごく新鮮で楽しかったです。でも、やってみると全然違うんですよね。

ーー自分の体から出てきたメロディとは違う感じ?

ユウ:そうなんですよね。誰かが作った曲の方がいい歌を歌えるんですけど(笑)。今回もそれを感じましたね。

ーー田中さん作曲の「ダイバダッタ」とか難しそうですけど?

ユウ:そんなに難しくなかったです。自分で作ったメロディは、難しすぎて歌いこなせないことが多いんじゃないかって、自分で分析してて。本当は歌いやすいメロディを歌った方がいい歌が歌えるんだろうなと、なんとなく思ってます。


「ダイバダッタ」MV

ーーところで「ダイバダッタ」ってなんですか?

ユウ:うまく説明できないんですけど、仏教の言葉で、名前なんですよ。

須原:ほんとは漢字なんだよね。「提婆達多」。釈迦の弟子?

ユウ:歌詞にある〈タラッタラッタ〉と合わせて“ダイバダッタ”って入れたかったんですけど、うまく繋がらなかったんで、タイトルにしました。宗教に通じてる人からすると冒涜とか言われるかもしれないけど、かっこいいと思ったんで。

ーーそんな言葉を使おうと思うのがユウさんらしいけど、あまりポピュラーではない宗教用語をよくご存知でしたね。

ユウ:たまたまなんですけど、好きなんですよ、そういうの。詳しくないんだけど、自分の表現に使いたくなるっていうか。

ーーインストを2曲(「OJO」、「OHO」)がありますが、入れたのはなぜですか?

田中:弦の二人が素晴らしいんで、彼らの発想の中から生まれる曲も入れたいと思って、僕は全く関わらないで3人でセッションしてもらったんですよ。そうして一発で録音したものに僕が音を入れて、杏ちゃんが重ねて……という流れですね。

ーー「OJO」と「OHO」はタイトルが似てるので組曲的なものかと思ったんですが。

林田:そう思いますか?(笑)

須原:タイトルは特に意味がなくて。その文字の並びだと顔に見える、みたいな(笑)。YAYYAYというバンド名も意味がなくて。ユウちゃんと私で字面というか見た目で決めたんです。

ユウ:二つの文字が繰り返されるのが、中国のパンダみたいで。このバンドは中国っぽい名前が合うなというのがなんとなくあって。候補をいっぱいあげたなかで、YAYYAYが見た目にも面白くていいねって。

ーー第1作を完成させて手応えはいかがですか。

ユウ:とにかく4人の主役感がすごい。ほんとにすべての音の主張がすごい。ここまでインパクトがある作品ってなかなかないと思います。逆に、どう捉えられるか想像がつかないんですけど、それが楽しみですね。

須原:流行りとはまた別に、新しい音楽のかたちができたかなと思っていて。一志さんのディープな打ち込みに、ユウちゃんの芯があるボーカルと、弦っていうバランスのいい音の組み合わせによって出来上がった楽曲が、みなさんにも届けばいいなと思っています。

林田:さっきユウさんが言ったけど、1曲の中で全部が鳴ってる感じのオケに注目して聴いても面白いし、歌も面白いし、歌詞も素敵だから、いろんな聴き方ができると思います。いろんな注目点がありそうなので、人が聴いてどう思うか楽しみです。今後ももっといろんなことができたら面白いですね。

田中:気を使いあってバランスをとってるんじゃなくて、みんな好き勝手やってバランス良くなったら最高、という感じなんですよね。普通のレコーディングだと抑えるようなことを一切考えずに作って、それに対して順平くんと杏ちゃんが、さらに輪をかけたように表現してくれるのが楽しくて。音がすごく主張するんでまとめるのは難しいんですけど、演奏が歌に寄り添っていてしっかりしてるんで。このレベルのミュージシャンと音を作れる幸せというのを、感じてますね。

ーーライブで拝見したいと思っちゃいますね。

田中:コロナがなければアルバム発売した後にライブを考えていたんですが難しい状況なので、配信でもいいので1度はやりたいなと思ってます。

■リリース情報
『I’m Here』
<CD収録曲>
1.ダイバダッタ
2.ひかりのみなもと
3.愛する人を間違えた
4.OJO(Instrument)
5.Bitter & Sweet
6.I’m Here
7.OHO(Instrument)

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