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恋愛モノで続編は珍しい? 『ルパンの娘』武内英樹監督が語る、コメディドラマの極意

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リアルサウンド

 昨年の第1シーズンの放送の反響を受け、10月15日より続編の放送がスタートする深田恭子主演ドラマ『ルパンの娘』(フジテレビ系)。

 横関大の同名小説(講談社文庫刊)をドラマ化した本作は、ミュージカルあり、パロディあり、なんでもありで笑いをもたらすなか、泥棒一家の娘・華(深田恭子)と警察一家の息子・桜庭和馬(瀬戸康史)の決して許されない愛を貫く姿で視聴者を引き寄せた。

 続編にはお馴染みのメインキャストに加え、新メンバーとして、橋本環奈が出演するなど、新シーズンの期待も高まっている。映画では『翔んで埼玉』『テルマエ・ロマエ』、ドラマでは『電車男』『のだめカンタービレ』(共にフジテレビ系)と名作を手がけてきた武内英樹監督に、コメディ作品作りの極意を教えてもらった。

「続きを描くことで新しいコメディができる」

ーー『ルパンの娘』前作の反響はどのように受け取りました?

武内英樹(以下、武内):前作の後半に視聴率がグーっと上がって、Twitterのトレンドで世界2位になり、話題になって嬉しかったですね。僕らも楽しみながら作っていて、このまま作り続けていきたいなという気持ちがあったので、視聴率やTwitterの反応が後押ししてくれて、続編に繋がっていきました。

ーー前作を撮り終えた時には、すでに物語の続きの構想はあったのでしょうか?

武内:大まかにはありました。このまま華(深田恭子)と和馬(瀬戸康史)の恋が成就して、結婚して、子供ができたり、家族はどうなっていくのか……続きを描くことで新しいコメディができるんじゃないかなという予感がありました。最初は本当に物語として成立するのか半信半疑だったんですけど、続編の脚本を作り始めてみると、意外と結構どんどん話を作れるなと。

ーー前作では描ききれなかった部分も今回は描かれると。

武内:例えば円城寺(輝/大貫勇輔)の背景とか。前作ではマツ(どんぐり)の過去が描かれて、華と和馬のおじいちゃん同士のいきさつを描くことができました。それぞれのキャラクターが濃い背景を持っているので、それを膨らませていけば、まだまだ色々できるんです。主人公の華にしても、実はものすごい過去やしがらみがあるんです。今作は、そういう隠されたエピソードがたくさん描かれて、飽きさせない内容になっています。今回は展開がすごく早いので、あっという間に数年が経ったり、びっくりするようなシチュエーションや設定が出てきます。

ーー新シーズンにあたり、橋本環奈さんの投入が大きいと思うのですが、どんなキャラクターに仕上げているんでしょうか。

武内:この作品は基本的にみんな真っ直ぐなんです。自分の与えられているベクトルと真っ直ぐに向き合って、そのベクトルがぶつかり合ってコメディが生まれる。橋本さんが演じる美雲は探偵で、生命をかけてLの一族を代々追っている、その一本木で突っ走るところがコメディに作用するように作っています。

ーー『ルパンの娘』のキャストは皆、演じている役で役者自身の持ち味を開花させている気がします。橋本さんの新たな一面を見せていきたいという思いはありますか?

武内:橋本さんは、福田(雄一)監督の作品に結構出ていて、もともと僕と福田監督はコメディの質が違うので、僕なりの表現方法に収まってくれれば、また新しい彼女の魅力っていうのは出るのかな。まだ変顔とかはそんなにしてないですね(笑)。

『ルパンの娘』制作現場は「文化祭」

ーー続編もまた、稲葉直人プロデューサー(『テルマエ・ロマエ』)と脚本家・徳永友一さん(『翔んで埼玉』)の最強チームです。

武内:徳永くんとはお互いにアイデアがポンポン出てくるし、感覚が合うんです。『ルパンの娘』は、僕が徳永くんと稲葉プロデューサーを繋いでいる部分もあるんですが、その3人が意外と親和性が高くて。こうしたらこうなるよね、ああなるよね、あはははって笑いながら作っていて、楽しいです。

ーーやっぱり観ていて楽しいドラマは、作ってる側も楽しそうですね。

武内:作ってる僕らが楽しまないと、楽しさは伝わらないのかなと思いますね。撮影、照明、音楽、脚本、美術も全部『翔んで埼玉』チームなので、チームワークがとても良く、毎日が「文化祭」みたいな感じで。今回こういう焼きそば屋作ったからどう? こういう迷路のアトラクション作ったけど、どうかな? みたいな。話数ごとに全く違う催し物ができるというのは『ルパンの娘』の良さだと思います。

ーー1人が率先してネタを出すのではなく、みんなでどんどん面白いアイデアが出てくると。

武内:本当にみんなで作っています。部下のADや美術、装飾の若手の意見も、「それ面白いね!」ってどんどん聞いて、色んな老若男女の意見を組み込められるというか。それを上手くまとめ上げる瞬発力は必要なんですが、色んな方法を駆使してやっています。

ーー現場の若手の意見は通りにくいイメージでした。

武内:全くそんなことないです。むしろバンバン出してほしいですよ。僕らの脳がどんどん老化してるから、若手のスタッフにもアイデアを聞いたほうがこっちも若さを保てる(笑)。絶対、そういう脳を生かしたほうが得なので、意見を出しやすい雰囲気作りは意識していますね。言われなくなると裸の王様になっちゃうので。

ーーここ数年のテレビドラマを観ているとSNSで話題になることがヒットの一因になってると思います。反響は気にしますか?

武内:楽しみに見ています。狙い通り楽しんでくれてるなと思うし、ちゃんとネタバラシしてあげたほうがいいのかなとも思っていて。みんなが映画のオマージュ的なネタに気づいてくれるんですが、そのまま放ったらかしにしているので、「合ってます」って答え合わせをするような使い方をしても面白いのかなと。気付かれない寂しいオマージュとかもあったりするので、そういうのを拾ってもらったりするのも(笑)。SNSを多用する人たちにマッチしてる作品なのかなっていうのは前回感じました。

ーーSNSの反響を参考にして、物語に取り入れることも?

武内:ありますね。視聴者のアイデアもいただけるということなので、そういう見方もあるんだと気づかされることが多いし、すぐに取り入れることも多いですね。その辺のフットワークは軽いです。前作だと『仮面ライダー』シリーズ出身俳優たちの共演がTwitterで話題になっていて、僕たちは『仮面ライダーキバ』のつながりで高岩(成二)さんと瀬戸さんの関係性があったというのは気付いてなかったんです。意図しないところでの食いつきが面白くて、物語の中で2人の関係性を深めようとしたら、さらにターボがかかって、盛り上がりました。藤岡(弘、)さんが初代ですから、40年分くらいの長い『仮面ライダー』の歴史に食い込めるのは本当ラッキー。改めて『仮面ライダー』の勉強もしましたね。

『電車男』『のだめ』『ルパンの娘』を名作コメディに仕上げる“秘伝のタレ”?

ーー『翔んで埼玉』をはじめとする、監督のどこか“ぶっ飛んだ作風”はいつ生まれたんですか?

武内:深津絵里さんと常盤貴子さんの『カバチタレ!』(フジテレビ系)の時に、ちょっとぶっ飛んでる設定なんだけど、2人がとても真剣に自分たちの生き様を表現してる姿を見て、“笑えるし感動する”ということがわかって。『のだめカンタービレ』もふざけたキャラだけど音楽に向かって真摯な2人が指揮者とピアニストとして音楽の高みを目指していくっていうギャップを描いたり。芯はすごいしっかりしてる話なんだけど、周りがどうやってふざけていくかっていうのは『カバチタレ』『のだめカンタービレ』とか、『電車男』もそうです。オタクなんだけど、オタクとしての矜恃があって、その美しさと気高さを描いているというのは、作りが似ています。『翔んで埼玉』もどれだけディスられても埼玉県民としての誇りを持っていて、その美しさに感動するっていう……どれも同じことをやってますね(笑)。『ルパンの娘』も泥棒の矜恃ですから。

ーー『のだめカンタービレ』は先日再放送(関東ローカル)もあって、改めてみんな大好きな作品なんだなと。どの作品もやはり役者とキャラクターのハマり具合が絶妙です。

武内:僕も15年ぶりぐらいに久々に観ました。キャスティングの時点で、この人が来るからこの人にやらせようっていうのはできるだけやらずに、役を脚本で作って、多少知名度が低くても、ハマっていることの方が大事だなと思っています。あとはできるだけ奇想天外な設定を作って、その設定を信じ込んでもらって、真面目にやってもらうだけ。みんなすぐふざけようとするから、『テルマエ・ロマエ』の時も阿部(寛)さんに「ふざけないでください」って言いました(笑)。コメディってみんなふざけようとするんですけど、それが1番スベるので。「とにかく真面目に、ふざけないでくれ!」というのは常に言っています。今回は瀬戸さんにも最初にそれをかなり言いましたしね。よく見ると全くふざけてないんですよ、瀬戸さんも深田さんもどんぐりさん、小沢(真珠)さんに関しても。

ーーどこまでふざけていいかどうかの、面白さを表現する塩梅は難しそうです。

武内:もう感覚で身についているものですね。『電車男』から『翔んで埼玉』までで継ぎ足した“秘伝のタレ”があるので、僕は感覚的に分かっているのですが、説明がなかなかできないものだから、まだそれが分からないセカンドディレクターが大変そうで。みんなどうしてもコメディ芝居って大袈裟にやってしまうんですが、そうすると違ったものになってくるので、「やりすぎだよ」「もっとやっていいよ」って常に管理してやっています。

ーー時代によって受け入れられるドラマの面白さも変化するなか、『電車男』『のだめカンタービレ』など、その時代を代表するようなヒット作を生み出してきた秘訣はなんだと思いますか?

武内:やってることは同じなんですよね。『電車男』の頃は、秋葉原が急に注目されているという世相があって。その時に起きている世の中の流行り、そこに対して敏感であることが大事なのかなと思います。その時に、その時代で何が求められているのかを感じる力はすごく大事で、そこに“秘伝のタレ”を持ち込んで同じフォーマットでやっても、その時代に則しているので新しいものに見えてくるんだと思います。

ーー『ルパンの娘』だと今の時代に求められている何を映しているでしょうか?

武内:やっぱり“家族愛”です。家族というものが少し希薄になっている中で「家族っていいよな」と伝えていけたら。特に続編では、近年では珍しく、今はコロナ禍で、家族がまとまっている状況も多いと思うので、タイミング的にはぴったりかなと。物語の中にも、泥棒の自粛をしたり、泥棒のリモートワークやってみたり、ちょっと世相を盛り込んでいます。みんなやっぱり今、それぞれの家族が大変で苦しみながら生きているなかで一服の清涼剤じゃないけど、これを観てホッと笑って、自分たちの家族もいいよねって思ってくれたら嬉しいですね。

ーーコロナ禍で自宅にいる時間が増えて、ドラマの楽しさを再確認した人も多かったと思います。

武内:そうですね。僕も自粛期間中は暇だったからかなり韓流ドラマとか観ましたよ。『愛の不時着』(Netflix)は勉強になりました。北朝鮮の兵士と金持ちで不遇のお嬢さんって、相当どマジな話ですよね。でも北朝鮮の住人キャラクターの使い方とか、部下の兵士たち4人組とか、いい塩梅でコメディを混ぜていて。シリアスな設定なのにコメディをぶち込んでくるのは作り方として、ちょっと似てるなとも感じました。とても共感できて、同じジャンルの作品として、こういうこともさらにできるんだっていう発見もありました。

ーー最後に監督が思う『ルパンの娘』の魅力を、続編への見どころも含めて教えてください。

武内:今は医療モノとか刑事モノが多い中で、『ルパンの娘』はとても異色に見えていると思うんですけど。良さはあまり何も考えずに観てもらって、“疲れない”、そして“楽しめる”ドラマです。何が出てくるかわからない、この話どこに向かっていくの? という感じで作ってるので、何が出てくるか楽しみにするおもちゃ箱みたいな感覚で観てもらえると嬉しいですね。テレビを付けたら「またアホなことやってる」っていう感じで、気楽に構えないで楽しんでいただけたらと思います。

■番組情報
木曜劇場 『ルパンの娘』
フジテレビ系にて、10月15日(木)スタート 毎週木曜22:00~放送
※初回15分拡大
出演:深田恭子、瀬戸康史、橋本環奈、小沢真珠、栗原類、どんぐり、藤岡弘、(特別出演)、松尾諭、大貫勇輔、信太昌之、マルシア、我修院達也、麿赤兒、渡部篤郎
原作:『ルパンの娘』 『ルパンの帰還』 『ホームズの娘』 横関大(講談社文庫刊)
脚本:徳永友一
プロデュース:稲葉直人
監督:武内英樹
制作・著作:フジテレビ 第一制作室
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/Lupin-no-musume2020/
公式Twitter:@lupin_no_musume
公式Instagram: @lupin_no_musume