FANTASTICSに託された本格的なディスコミュージック ドラマでも話題の「High Fever」一糸乱れぬダンスにも注目
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FANTASTICS from EXILE TRIBEの初主演作となる日本テレビ系ドラマ『マネキン・ナイト・フィーバー』の放送が開始された。
本作はFANTASTICSメンバーと水野美紀によるシチュエーションコメディ。渋谷PARCOの店内で「人間になりたい」という願いを密かに抱えていた8体のマネキン達(FANTASTICS)が謎の美女・招黄永遠(水野美紀)の能力により、店内でのみ人間として動けるようになったところから物語は始まる。招黄は、8体のうち1体だけは本物の人間にしてやれると言う。人間になれる条件は2つあり、1つは招黄の師事の下で「人間」について学ぶこと。もう1つは、歌とダンスによるショーで招黄をワクワクさせることらしい。第1話でもFANTASTICSによる振付で中森明菜の「DESIRE -情熱-」をパフォーマンスする姿が見られた。
見どころはやはり歌とダンスによるパフォーマンスと、アドリブという名のムチャブリだろう。第1話でも「人間になったら何がしたいか言え」という招黄のフリに対し一人一人懸命にセリフを搾り出す様子が、周囲のメンバーのリアルな表情もそのままに届けられた。
FANTASTICSはメンバー全員による演劇パートを組み込んだライブツアーを行っていた経験もあり、それぞれが自分自身をキャラクター的に演出することに長けている。この自由度の高いフォーマットの中でベテラン俳優・水野美紀の見事な狂言回しに導かれ、彼らがどのようなエンタテインメントを繰り広げてくれるのか期待していきたい。
さておき今回特筆したいのは、ドラマの主題歌である「High Fever」がディスコミュージックのオマージュとして非常に完成された1曲であり、なおかつFANTASTICSの新たな境地となり得ている点だ。
なお、同曲は11月11日のリリースに先立って各種配信サイトですでに先行配信が行われている。80年代のディスコ文化とともに隆盛したディスコミュージックは、主に2010年代以降その音楽性をリスペクトする次世代ミュージシャン達の楽曲により幾度かのリバイバルブームを起こしてきた。そしてThe Weeknd「Blinding Lights」の世界的かつ長期的な大ヒットを契機とし、J.Y.Park「When We Disco」などディスコへのオマージュが込められた楽曲が著名アーティストから続々とリリースされており、またもや盛り上がりを見せているのだ。
そんな中でLDHが世に送り出す本格的なディスコミュージックである「High Fever」は、1stアルバムのリリース以降も目覚ましく成長し続けているFANTASTICSへ託された。当初から「OVER DRIVE」や「WHAT A WONDER」などシンセサウンドを基調とした楽曲をモノにしてきた彼らは、この「High Fever」でも楽曲の音楽性を見事に表現しつつ、グループとしての個性を発揮することにも成功している。
まず、冒頭のシンセが鳴り響くイントロから、八木勇征が歌い始める〈ショーウインドウに映る〉というフレーズまでの流れ。この時点ですでにa-ha「Take On Me」などを彷彿とさせるサウンドとメロディライン、そして80年代当時の歌謡曲のような譜割りに思わずニヤリとさせられてしまう。
何より驚かされるのは八木・中島颯太のツインボーカルによる堂に入ったボーカリングだ。八木の艶やかで時にエモーショナルな歌声はこの曲の哀愁漂うディスコサウンドとマッチしており、楽曲全体の世界観の演出に大いに貢献している。そして八木の後を追う中島の澄んだ歌声は、当時の音像を再現した深いリバーブ(残響)によって“甘さ”が強調されており、かえってもともと備わっているシャープさと透明感が引き立つ形になっている。このコンセプチュアルな楽曲の中での“新たな一面”と、2人の対照性が互いを引き立て合うという“元来の魅力”を両立した実に聴き応え満載のボーカルラインだ。
もちろん、歌と音だけでこの曲は語り切れない。もともとパフォーマー集団として始まったFANTASTICSの真骨頂は、ダンスも含めた総合パフォーマンスで発揮される。先日の配信ライブ『LIVE×ONLINE IMAGINATION』にて「High Fever」が初披露された際には、パフォーマーの高速かつ一糸乱れぬ圧巻のダンスでビートの高揚感を増幅させることにより“FANTASTICSらしいディスコビート”を作り上げていた。なお、『マネキン・ナイト・フィーバー』のエンディングでは深夜の渋谷センター街で「High Fever」を踊るメンバーが見られるので、こちらも是非チェックしてみてほしい。また、同ドラマ内ではカップリング曲である「CANNONBALL」も挿入歌として使用されているが、こちらは一転してクラブミュージックを意識したようなラテン調のアッパーチューンとなっている。
各々が高い実力と人気を誇るJr.EXILE世代のグループの中で、FANTASTICSがよりテクノサウンドに特化したパフォーマンスという武器を獲得した意義は大きい。今後どのような進化を遂げていくのか、引き続き動向を見守っていきたいと思う。
■日高 愛
1989年生まれの会社員。『HIGH&LOW』をきっかけに大ファンとなったTHE RAMPAGEを中心に、LDH所属アーティストについて研究中。
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