矢田悠祐が再びチャーリィの人生を歩む「アルジャーノンに花束を」開幕
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ミュージカル「アルジャーノンに花束を」公開舞台稽古より。(撮影:宮川舞子)
矢田悠祐が主演を務めるミュージカル「アルジャーノンに花束を」が、昨日10月15日に開幕。これに先駆け14日、公開舞台稽古が実施された。
これはダニエル・キイスの同名小説を原作に、荻田浩一が脚本・作詞・演出を、斉藤恒芳が音楽を手がけるミュージカル。2006年、2014年、2017年に続いて今回が4度目の上演となり、矢田は前回からチャーリィ役を続投する。出演者には矢田のほか、大月さゆ、元榮菜摘、青野紗穂、大山真志、長澤風海、和田泰右、戸井勝海、水夏希が名を連ねた。
32歳になっても幼児程度の知能しかないパン屋の店員チャーリィ・ゴードンに、「大学の先生が頭を良くしてくれる」という話が舞い込んできた。申し出に飛びついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に連日検査を受けることに。やがて手術を受けたチャーリィは天才的な頭脳を手に入れたが……。
ステージ中央には、欠けた車輪のような大きな舞台美術が鎮座している。この装置には常に、回転する車輪の影が投影されており、その様子はネズミの回し車を連想させた。また上手と下手には数本のポールが立てられ、これによって時折、ステージ全体が動物のケージであるかのような印象を観る者に与える。
物語の冒頭では、チャーリィが検査を受ける研究施設のシーンが描かれる。薄いグレーのロングコートをかっちりと着込んだ研究員たちが一糸乱れぬダンスを披露する中、チャーリィは1人だけ踊りのテンポについていけない。よろめきながらも懸命に体を動かす姿からは、彼の純真さや好奇心が垣間見えた。
ゆったりとした長袖にオーバーオールを着ていたチャーリィのいでたちは、ストーリーが進むごとにプルオーバーに細身のパンツ、白シャツにベスト、そしてスーツと、より大人びたものになる。次々と変わる衣装はまるで、チャーリィが短期間で急激な変化を遂げたことを示すかのよう。
チャーリィは知能の成長と共に、家族とのつらい記憶を思い出す。子供時代、母から「女性に近付いてはいけない」と強く叱責された経験がある彼は、自身が通う施設の担任アリス・キニアン(水)や、アパートの隣人で画家のフェイ・リルマン(青野)といった女性たちとうまく関係を築けずに悩む。劇中ではチャーリィの母(大月)をはじめとした女性キャストが、いずれも赤い衣装をまとって踊る演出が取り入れられ、彼のトラウマを視覚的に表した。
矢田は、声色や歌い方、口調を使い分け、「ぼくわかしこくなりたい」とたどたどしく歌っていたチャーリィの変貌を巧みに表現。幼い心に高い知能を宿し、そのバランスが取れずに葛藤する場面では、悲しくも力強い歌声を聞かせる。水は、チャーリィからまっすぐな恋心をぶつけられて戸惑いながらも、彼に寄り添い続けようとするアリスの優しさを、慈愛に満ちた笑みをたたえて演じた。
アルジャーノン役の長澤は、ファーの付いた白いニットキャップに白いツナギ姿で登場。チャーリィとアルジャーノンが検査で競争する場面では、チャーリィと向かい合って鏡写しのような振付を披露し、観客を惹きつけた。またストラウス博士やパン屋の店主、チャーリィの父などに扮する戸井の、温かな人間味がにじむ演技も見逃せない。
開幕を迎えた出演者たちのコメントも到着。矢田は「公演日程はかなりハードですが、毎公演この作品で何か一つでも感じていただければと、チャーリィとしての人生を毎回歩んでいます。万全の対策でお待ちしておりますので、是非劇場までお越しください」とコメントしている。上演時間は休憩20分を含む、約2時間50分。公演は11月1日まで行われる。
矢田悠祐コメント
このような状況の中、初日を迎えることが出来まして、ひとまず安心しております。公演日程はかなりハードですが、毎公演この作品で何か一つでも感じていただければと、チャーリィとしての人生を毎回歩んでいます。万全の対策でお待ちしておりますので、是非劇場までお越しください。
大月さゆコメント
「アルジャーノンに花束を」出演のオファーをいただいた時は、とても嬉しくて夢のようで! でも、それが危うくなってしまった今年の初めごろ。悔しい未来に備えながらも、希望の火を消さないでいたあの時間。
こうして初日を迎えられること、そしてお客様がいらしてくださることに深く感謝してこの公演をやりきります!
青野紗穂コメント
「アルジャーノンに花束を」に関われた事とても嬉しいです。そして無事に初日を迎えられた事が何よりも嬉しいです。まだまだ警戒体制が解けない中、沢山の方のお力添えがあってこその私達だなと、実感しています。この当たり前に出来ていた事に規制がかかった今だからこそ改めて感じられた「感謝」を忘れずに、全員無事に千穐楽を迎える事を願って頑張ります!
戸井勝海コメント
2006年の初演の博品館劇場に再び戻ってこられたことに大きな喜びを感じています。自粛期間中の様々な経験の中で、私がいちばん欲しいものは家族の笑顔だと思い知らされました。コロナで傷付いたりギスギスしている心に、チャーリーが賢くなりたかったワケ、そして純粋な彼の言葉が何かをお届けできたら幸いです。
水夏希コメント
アルジャーノンに花束を。いよいよ開幕しました。初演の博品館に戻って参りました! やる度にチャーリィの魅力に虜になり、チャーリィの生き様が胸に刺さります。美しい音楽と、沢山のメッセージが込められた台詞の一言一言に揺さぶられる2時間半。存分に浸っていただきたいと思います。
ミュージカル「アルジャーノンに花束を」
2020年10月15日(木)~11月1日(日)
東京都 博品館劇場
原作:ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」(ハヤカワ文庫)
脚本・作詞・演出:荻田浩一
音楽:斉藤恒芳
出演:矢田悠祐 / 大月さゆ、元榮菜摘、青野紗穂、大山真志、長澤風海、和田泰右 / 戸井勝海 / 水夏希