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細田守と「ウルフウォーカー」監督が“オオカミ”トーク、野性について共感し合う

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オンライントークの様子。上段左から時計回りに数土直志、細田守、トム・ムーア、ロス・スチュアート。

「ウルフウォーカー」の監督を務めたトム・ムーアとロス・スチュアート、そして日本のアニメーション監督・細田守によるオンライントークイベントが本日10月19日に実施された。

アイルランドに古くから伝わる、眠ると魂が抜け出しオオカミになるという“ウルフウォーカー”の伝説を題材にした本作。アニメーションスタジオ、カートゥーン・サルーンの新作で、「ブレンダンとケルズの秘密」「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」に続くケルト3部作の完結編だ。

細田は「『ソング・オブ・ザ・シー』をご覧になった方々は素晴らしい映画体験をされたかと思いますが、その上を行く作品を完成させたお二人の監督に心からおめでとうと言いたいです」と手放しで称賛。「美しい映画でありながら、同時に力強さもある」「冒頭の1カット目から“当たり前”なカットが1つもない。常に驚きに満ちていて、序盤だけでなく後半にまで続いていく」と怒涛の勢いで魅力を語っていく。

ムーアは「『ソング・オブ・ザ・シー』は優しいストーリーでしたが、今回はアクション満載にしたかった」と制作を振り返る。細田が「どこか児童文学のような香りもしました」と意見を述べると、スチュアートは「民話的な雰囲気は狙っていました」と返答。さらに「対比を強めるため、街は鉄格子のようなイメージで鋭角に描きました。一方で森は曲線を多く使い、自由を強調するように描きました」とビジュアル面についても言及した。

細田が手がけた「おおかみこどもの雨と雪」や「バケモノの子」と「ウルフウォーカー」は、“異形”が登場するという点で共通性があると言える。細田は「オオカミが人間によって“悪者”にされたというイメージはヨーロッパ的だと思います。人間の理想郷を築くにあたり、戦うべき相手として見られてきた。しかし善も悪もなく、彼らはただの動物。凶暴な側面がある一方で、実際は臆病だったり優しい面もある。そういうところから『おおかみこども』のような映画ができあがりました」と自身の考えを述べる。

その言葉に同意しながら、スチュアートは「もともとアイルランドではオオカミは共生する存在であり、敵ではありませんでした。しかし自然は敵であり、コントロールすべきものだという考えが原因で環境破壊が進んだ。人間は古の考え方を取り戻すべき」と主張。ムーアも「かつては自然も人間も対等でした。『おおかみこども』で雪と雨は自分のオオカミ性を隠すよう言われますが、誰しも野性を秘めているもの。私たちも自分の中の“野性”を取り戻すべき時代にあると思います」と続けた。

またムーアが「手描きアニメーションの世界は可能性に満ちている」と希望を見出すと、細田は「日本でアニメを作っている人たちに聞かせたい!」と目を輝かせる。さらにムーアは高畑勲の「かぐや姫の物語」に影響を受けたことを明かし、「ドローイングのままでもいんだと勇気をもらいました。高畑監督は最後まで実験を続けていたんだなと。そのこと自体がインスピレーションになりました」と説明。細田は「彼は本当に革命家なんですよ。なんで亡くなっちゃったんでしょうね。もっと僕らを啓蒙してほしかった」と静かに語り、ムーアから「大きな存在がいなくなってしまいましたが、我々はめげずに歩み続けるしかないですね」と声を掛けられると、「がんばっていきましょう」と自らを奮い立たせた。そして3人は「日本とアイルランドは離れているが気持ちは近いところにある」と語り合い、国境を越えて交流していくことを約束した。「ウルフウォーカー」は10月30日より東京・YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次ロードショー。

なお本イベントは、2021年3月12日から15日にかけて開催される東京アニメアワードフェスティバル2021のプレイベントとして行われたもの。トークの模様は、配給会社チャイルド・フィルムと映画祭のYouTube公式チャンネルで後日無料配信される予定だ。

(c)WolfWalkers 2020