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『ハコヅメ』藤聖子と川合麻依は“上司と部下”を超えた関係性に? ますます深まる二人の絆

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 地方警察官の姿をリアルに描く人気漫画『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』。新米の川合麻依は致し方なく公務員を目指すも、あまりの激務に疲労困憊。辞表提出を決心していたが上司・藤聖子との出会いにより、彼女の警察官としての人生は大きく変わっていく。

 おカタい題材を扱っているもののコミカルなシーンがメインで、スイスイと読み進められるテンポの良さがある。ドラマ化を熱望する声が多く挙がっており、いずれは動く彼らを見られるかもしれない。筆者も映像化を今か今かと心待ちにするファンの一人だ。

 そんな『ハコヅメ』最新14巻は、前巻にて登場した猿渡署長の過去を描く「奥岡島事件の恩賞」編へ突入。登場時は”隣に座っていたオーラのないおじさん”的ポジションだったが、実は当時、事件の中心となっていた重要人物である。

 猿渡だけでなく源の父親や、すでに退官している鬼瓦もこの事件に関与しているのだ。今までスポットが当たっていないキャラクターも登場し、20年前の出来事がどう語られていくのか、そしてどう完結していくのかに注目していきたい。

 警察官という責任の強い仕事だからこそ、その背景には様々なものが潜む。人の死は常に隣り合わせで、明日誰かがいなくなる可能性さえ高いのだ。一同が心を痛めた「同期の桜」事件が正にその象徴と言えるだろう。幸い桜は一命を取り留めたが、この事件が残した傷跡は大きい。だからこそ彼らは結束し、立ち向かっていく。

 最初は組織に疑問を持っていた川合も、今ではすっかりと馴染んでしまった。今までとは比べ物にならないくらいの頼もしさが出てきたほか、藤への尊敬は膨らんでいくばかり。ただ「藤が褒められると自分も嬉しい」とニヤついていたり、尊敬の方向がややズレていってる気もするのだが。

 そんな藤も藤で、ペアの域を超える面倒見の良さを発揮している。悲しみを隠す川合に胸を貸す、噛み切れないスルメを反対側から食べてあげるなど、まるで彼氏!?と疑ってしまうレベルの行動が目立つ。序盤からやや甘やかし気味の彼女だったが、物語が進むにつれてどんどん加速しているような……。

 それを全く拒否せず、あっさりと受け入れる川合がまた面白く、無邪気で可愛らしい。ついつい上杉が見ていて気まずくなってしまうくらい、二人はペアの間にある”壁”をゆうに超えていたのだろう。

 もちろん上司と部下であることに変わりはないが、時に姉妹に、時に恋人のように錯覚してしまうため読んでいると不思議な気分になってくる。きっと藤と川合を見て、同様の感情を抱く読者もいるはずだ。

 ただずっと一緒にいるからではなく、苦楽を共にしたからこそ培われた絆なのだろう。それぞれのペアにも多くの物語があるはずだが、特にこの二人の関係性は美しい。血が繋がった家族のように支え合い、いない時も想い合う絆の深さに羨ましいものさえ感じる。きっと辞表を持っていた当時の川合には、こんな出会いがあるなど考えてもみなかっただろう。

 コミカルとシリアスのバランスがちょうど良い本作は、幅広い人々が楽しめる作品だ。ただ警察官の出来事に触れられるだけでなく、川合や藤など登場キャラクターの成長も見届けることが出来る。今後も彼らがどんな活躍をするのか、今から楽しみで仕方がない。

■たかなし亜妖
平成生まれのサブカル系ライター。ゲームシナリオライターとしての顔も持つ。得意技は飲み歩きと自炊。趣味はホラー映画鑑賞。

■書籍情報
『ハコヅメ~交番女子の逆襲~(14)』
泰三子 著
定価:本体640円+税
出版社: 講談社
公式サイト