めまぐるしく展開する賑やかな祝祭! CHAiroiPLIN『三文オペラ』上演中
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CHAiroiPLIN『三文オペラ』 撮影:HARU
CHAiroiPLINの踊る戯曲シリーズ『三文オペラ』が、現在、三鷹市芸術文化センター星のホールで上演されている。
ダンサー・振付家のスズキ拓朗を中心に結成され、ダンスと演劇が融合した、エンタテインメント性の高い舞台を繰り広げるCHAiroiPLIN。オリジナル作品を生み出す一方で、童話や文学作品など、幅広い題材を下敷きにした作品の上演も続けてきた。
「踊る戯曲」シリーズはその名の通り、過去の名作戯曲をもとにつくられる公演で、2014年からスタートしたもの。これまで、安部公房の『友達』、別役実の『マッチ売りの少女』などの作品に挑戦している。『三文オペラ』は2015年に初演以来、5年ぶりの上演となる。
『三文オペラ』といえばベルナルト・ブレヒトの代表作であり、これまで世界中で数え切れないほど上演されてきた戯曲。だがそのあまたの公演のなかでもCHAiroiPLIN版『三文オペラ』の賑やかさは、ちょっと他にはないと言ってしまっていいかもしれない。大勢のキャストが登場し、次々と目まぐるしく展開が変わっていく。衣装も舞台美術も、それに合わせてくるくると変化する。まるでさまざまな団体が入れ替わり立ち替わり短い演しものを上演していく文化祭のステージのような高揚感が常にあるのだ。新聞紙やブルーシートなど、身近な素材の小道具もそのイメージの一端を担っているかもしれない。
今作に限らないが、高尚に見えたり、とっつきにくかったりする原作でも、スズキがやわらかく噛み砕いて、ごく身近なものにしてしまう。また、セリフも歌もあるため、ダンス公演に対してハードルを感じている人もすっと作品に入り込むことができる。まさに演劇とダンスの「いいとこどり」だ。どちらかしか観たことがなくても、あるいは演劇もダンスも1本も観たことがなくても、一発で楽しめるのが彼らの魅力。特に今作では劇団「時々自動」のメンバーが生演奏として参加し、作品をさらに盛り上げる。
約90年前に書かれた『三文オペラ』が、2020年、未曾有の状況に置かれた私たちの前に、新たな祝祭として、現代を写す鏡として現れるさまを目撃したい。
文:釣木文恵
CHAiroiPLIN踊る戯曲『三文オペラ』
作:ベルトルト・ブレヒト
演出・振付・構成:スズキ拓朗
10月25日(日)まで
会場:東京・三鷹市芸術文化センター 星のホール
http://www.chairoiplin.net
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