井上麻里奈、茅原実里、竹達彩奈、雨宮天ら豪華声優が歌う多彩な恋愛ソング 『デート・ア・ライブ』が生んだキャラソンの魅力
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今年はシリーズ最新作となる『デート・ア・ライブIV』の制作決定が発表され、9月にはPlayStation®4用ゲームソフト『デート・ア・ライブ 蓮ディストピア』も発売されるなど、長く愛される人気シリーズとなって久しい『デート・ア・ライブ』シリーズ。この作品から、人気声優陣が担当した歴代のキャラクターソングを集めたキャラソンベスト的な楽曲集『デート・ア・ライブ キャラクターソングコレクション』が発売された。
『デート・ア・ライブ』は、人智を超えた生命体・精霊によって大災害がもたらされている世界を舞台に、主人公の五河士道が「精霊とデートして、デレさせる」様子を描く作品。世界平和を守るための戦いが、「様々な精霊たちとのデート」に置き換わるというユニークなアイデアや、コミカルな日常描写に加えて、徐々に明かされていくキャラクターそれぞれの運命や業の深さなど、シリアスな要素も魅力のひとつになっている。TVアニメ第3期では精霊同士の関係性もより描かれるなど、作品の世界観はますます広がっているところだ。
そして、音楽面での特徴は、「主題歌」「劇伴」「キャラクターソング」といった各要素が、はっきりと違う役割で用意されていること。たとえばTVアニメ第1期から坂部剛が作曲を担当し、声優ユニット・sweet ARMSが歌う主題歌は、ストリングスアレンジを加えたロック曲が中心で、「激しさ」と「かろやかさ/華やかさ」「切なさ」など異なる要素をひとつにすることで、「戦争」を「デート」に置き換えたこの作品の魅力を表現するようだ。
また、同じく坂部剛が担当する劇伴では、主題歌とはまた違う角度から作品の魅力を表現。たとえば、戦闘シーンのBGMでは、壮大なオーケストレーションや声楽~オペラ的なコーラスといったギミックを加えた曲などで、精霊の神秘性やスケール感などが巧みに表現されている。
そしてキャラクターソングには、それぞれの魅力/人柄がより伝わるような楽曲が揃っている。もともとギャルゲー的な要素を持った作品であるからこそ、各キャラクターの人柄や魅力を伝えるキャラソンには、その個性が色濃く反映されているのだ。そのため、キャラごとに大胆に音楽性が違うのも、『デート・ア・ライブ』のキャラソンの特徴になっている。
さらに2013年より7年以上の歴史を刻む『デート・ア・ライブ』だが、なにより現在アニメシーンの第一線で活躍するような女性声優が参加する豪華なラインナップは特筆すべき点だろう。同作においても、『プリキュア』声優であり、2010年代アニメで様々な主要キャラを演じてきた井上麻里奈を筆頭に、ソロ歌手としても活躍する茅原実里や竹達彩奈、若手の人気株である雨宮天、佐倉綾音など、長い歴史のある作品だからこその幅広い声優が参加している。
『デート・ア・ライブ キャラクターソングコレクション』の1曲目は、リリコ(CV:積田かよ子)、幼馴染(CV:村井理沙子)、先輩(CV:月宮みどり)によるアニメ1期1話&13話のED曲「Hatsukoi Winding Road」。SF超大作のオープニングロール風の映像で作品の全体像を紹介しながら〈♪つ・ま・りデートデート! 精霊を~デレさせろ~!〉という歌詞に辿り着くセリフパートと、〈恋する星は美しい/わかりあえたら平和になる/愛をもって世界中を/恋し愛しで埋めつくそう〉というサビが印象的なエレポップで、作品の賑やかな雰囲気を象徴するようだ。
以降は、豪華キャストがボーカルを担当した、それぞれのキャラクターの魅力を掘り下げるような楽曲が並び、楽曲ごとにまったく違う音が楽しめる。たとえば、演歌~歌謡曲のような鳶一折紙(CV:富樫美鈴)による2曲目「恋色折紙」は、折紙の士道に寄せる(ややヤンデレ気味な)恋慕の気持ちと歌謡曲の相性は抜群で思わずニヤリとするファンも多いだろう。打って変わって誘宵美九(CV:茅原実里)による5曲目「monochrome」は、アイドルらしい可愛らしさが盛りだくさんなテクノベースの四つ打ちダンストラック。一方で八舞耶倶矢(内田真礼)&八舞夕弦(ブリドカットセーラ恵美)の「DOUBLE PUNCH LOVE」はデュエット形式のダンサブルでポップなギター・ロックで、四糸乃(CV:野水伊織)の「Lonely, Morning, Dreaming」はボサノヴァ曲になっている。
基本的には士道に出会う以前とデレて以降の恋愛感情という共通のテーマが基盤ではあるが、キャラクターの個性やバックストリートを通すことでここまでバラエティに富んだ作品に仕上がるのか、という発見もある。もともとギャルゲー的なハーレム要素だけではなく、それぞれのキャラクターが持つシリアスなバックボーンを丁寧に掘り下げる作品ではあるが、その奥行きがあるからこそ各キャラソンも際立ってくるのではないだろうか。
そんな楽曲の振り幅の広さはアルバム後半もさらに増していく雰囲気で、五河琴里(CV:竹達彩奈)による8曲目「melt」は、80年代~90年代を思わせるニューウェイブ風J-POP。一方で、やわらかなバンドサウンドとストリングスが絡み合う夜刀神十香(CV:井上麻里奈)の「美味しいデェト」、よく聴くとアンビエント~エレクトロニカ風のアレンジにも思える万由里(CV:雨宮天)の「Resolution」、エモーショナルなピアノ+バンドサウンドが印象的な園神凜緒(CV:佐倉綾音)の「Not Forget」など、1曲として同じような曲はなく、それがそのまま、作品に登場する登場キャラクターたちの個性豊かな魅力を象徴するようだ。
中には2000年代以降のヘヴィロック~メタルコアの流れを汲む七罪(CV:真野あゆみ)の「Bipolar emotion」など、かなりヘヴィに振り切れる瞬間も。スピンオフ『デート・ア・バレット』が作られるほどの作品屈指の人気キャラ・時崎狂三(CV:真田アサミ)「闇ノ向コウへ」は彼女のミステリアスなキャラクターとトレードマークのゴシック衣装を想起させるような壮大な楽曲。人を殺めることを厭わない狂三は、冷酷・無慈悲な性格ではあるが、他の精霊とは違い常に孤独を抱えて戦いに身を投じるキャラクター。そんな彼女の壮絶な人生や願いが反映された歌詞は、アニメと相まってファンにとったら感涙とも言えるストーリー性を帯びている。そして本編最後の五河士道(CV:島﨑信長)による「A.D.V / 僕の日常」は、ホーンアレンジ&歌詞の雰囲気がThe Beatlesの「Penny Lane」を思わせる日常賛歌で、すべての楽曲を包み込む曲になっている。
また、ボーナス曲として、野水伊織が作詞を担当する『デート・ア・ライブ 蓮ディストピア』のOP曲「甘言誘惑Receptor」/ED曲「Never Ending Love story」も収録。sweetARMSが歌う「甘言誘惑Receptor」は、クラブミュージックの要素も加えたテクニカルなバンドサウンドで「激しさ」と「かろやかさ」をあわせ持つこの作品の主題歌に新しい挑戦を加え、ED曲「Never Ending Love story」はシリーズ全体のテーマソングと言えるくらい『デート・ア・ライブ』の世界観に寄り添った歌詞が印象的だ。
そして何より、不揃いの楽曲が一枚にぎゅっと詰め込まれているようなアルバム全体の構成が、士道と精霊たちとの賑やかな「戦争=デート」の雰囲気を連想させる。この作品から『デート・ア・ライブ』の魅力を紐解いたり、改めて各キャラクターの魅力に向き合ったりするのも楽しいはずだ。
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。
■リリース情報
『デート・ア・ライブ キャラクターソングコレクション』
2020年10月21日(水)発売
¥2,500+税
商品ページはこちら
配信はこちら
<収録予定曲>
1. Hatsukoi Winding Road 歌:リリコ(CV:積田かよ子)、幼馴染(CV:村井理沙子)、先輩(CV:月宮みどり)
2. 恋色折紙 歌:鳶一折紙(CV:富樫美鈴)
3. ひつじの樹海 歌:村雨令音(CV:遠藤綾)
4. リトル妹ドロップス 歌:崇宮真那(CV:味里)
5. monochrome 歌:誘宵美九(CV:茅原実里)
6. DOUBLE PUNCH LOVE 歌:八舞耶倶矢(CV:内田真礼)、八舞夕弦(CV:ブリドカットセーラ恵美)
7. Lonely, Morning, Dreaming 歌:四糸乃(CV:野水伊織)
8.melt 歌:五河琴里(CV:竹達彩奈)
9. 美味しいデェト 歌:夜刀神十香(CV:井上麻里奈)
10. Resolution 歌:万由里(CV:雨宮天)
11.Not Forget 歌:園神凜緒(CV:佐倉綾音)
12. Bipolar emotion 歌:七罪(CV:真野あゆみ)
13. 闇ノ向コウへ 歌:時崎狂三(CV:真田アサミ)
14. A.D.V / 僕の日常 歌:五河士道(CV:島﨑信長)
他、収録予定。
■配信情報
『デート・ア・バレット』前編『デッド・オア・バレット』主題歌
「Infermata」「Only wish」
2020年8月21日(金)よりダウンロード配信スタート
配信はこちら
「Infermata」
作曲・編曲:坂部剛 演奏:Spotlight Kids
(『デート・ア・バレット』オープニング・テーマ)
「Only wish」
作詞:渡部紫緒 作曲・編曲:坂部剛 歌:Luiza
(『デート・ア・バレット デッド・オア・バレット』エンディング・テーマ)
「Only wish」Instrumental
※トップ画像 ©2013 K・T/F/DAL・P