特集:応援せずにはいられない! 映画界の“新たな才能“を探せ!
映像制作における技術も大きく進歩し、You Tubeや配信サービスなどの普及で、映像作品はより身近で手軽になった。そんなデジタルで作って簡単に配信することが可能なこの世界で、それでも仲間と共に映画をつくり、自身の伝えたい想いを発信する監督たちがいる。
その中でも編集部は、是枝裕和監督も惚れ込んだ『泣く子はいねぇが』の佐藤快磨監督という新たな才能に注目! 知れば知るほど、応援せずにはいられない、佐藤監督の活躍に大いに期待したい。
11月20日(金)公開
『泣く子はいねぇが』公式サイト/SNS
(C) 2020「泣く子はいねぇが」製作委員会
第1回:応援せずにはいられない! 注目を集める映画界の“新たな才能”
『カメラを止めるな!』(17)で大ブレイクした上田慎一郎監督に続け! とばかりに、映画界では新たなる才能が次々に登場!! この数年を振り返っただけでも、『あみこ』(17)の山中瑶子監督(現在23歳)、『少女邂逅』(17)の枝優花監督(同26歳)、『WE ARE LITTLE ZOMBIES』(19)の長久允監督(同36歳)、『新聞記者』(19)の藤井道人監督(同34歳)、『キスカム! COME ON,KISS ME AGAIN!』(20)の松本花奈(同22歳)などなど、新時代のクリエイターたちがスクリーンを席巻。身近になったデジタル機材と豊かな感性を武器に、自らの想いを全開させるオリジナリティ溢れる自由な作品を次々に発表し、同年代の若者を中心に、映画ファンの心を鷲づかみにしたのは記憶に新しい。
そんな若手監督の次なる新勢力として、ぴあがいま最もその才能に注目しているのが『泣く子はいねぇが』(11月20日公開)の佐藤快磨(さとうたくま)監督だ。
佐藤監督は2014年の『ガンバレとかうるせぇ』で「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」の映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)と観客賞をW受賞。同作は第19回釜山国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされるなど国内外の映画祭でも評価され、「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2015」に選出されて撮った仲野太賀と岸井ゆきの共演の『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』(16)、「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」短編部門観客賞に輝く『歩けない僕らは』(19)なども話題に。めきめきと頭角を現してきた。
“自分にしか撮れない映画”を追求した『泣く子はいねぇが』
『泣く子はいねぇが』はそんな佐藤監督が自らのオリジナル脚本を映画化した長編劇場映画デビュー作だが、同監督が“自分にしか撮れない映画”を模索し、自らの出身地でもある秋田県の、世界的にも有名な伝統行事「男鹿のナマハゲ」に着想を得て書き下ろしたその物語は、まさに監督のいまのリアルな感覚を伝えていて面白い。
男鹿の港町で生まれ育った主人公・たすくは娘が生まれたというのに大人になれず、親になることからも逃げ出すように姿をくらます。そんな彼が2年後、過去の過ちと向き合いながら、妻・ことねと娘との家族を取り戻すために奮闘するが……。
そんな男の格闘のドラマと「男鹿のナマハゲ」がどうリンクするのか? そこは見てのお楽しみだが、その物語がいかに独創的で面白いのかは、第71回カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールに輝く『万引き家族』(18)の是枝裕和監督が脚本を読んで唸ったということからも明らかだ。
佐藤監督の才能に惚れこみ、是枝監督率いる“分福”がバックアップ!
しかも、佐藤監督に可能性を感じた是枝監督は、自らが率い、『永い言い訳』(10)の西川美和監督、『エンディングノート』(11)の砂田麻美監督、『夜明け』(19)の広瀬奈々子が所属する映像制作者集団“分福”で『泣く子はいねぇが』の映画化を全力でバックアップ! その期待通り、主人公のたすくに仲野太賀、妻のことねに吉岡里帆、さらに共演陣に寛一 郎、余貴美子、秋田県出身の柳葉敏郎らを迎えた本作は、カンヌ、ヴェネチア、ヴェルリンに次ぐ権威ある映画祭=サン・セバスティアン国際映画祭のオフィシャルコンペティション部門にて、最優秀撮影賞受賞という快挙を達成。世界の映画人も、佐藤監督のただならぬ才能を認めたのである。
果たして、映画界に新風を吹き込む佐藤快磨監督とは何者なのか? そして『泣く子はいねぇが』の独創的な面白さとは? その新たなる才能の誕生を、私たちもまもなく知ることになる。
(文:イソガイマサト)
主題歌は音楽界の新進気鋭・折坂悠太が担当!
本作のために書き下ろした主題歌『春』も注目の本編予告編