Poppin’Party、修行期間の成果を爆発させた『8th☆LIVE』最終公演レポ 全身で伝えた音楽を心から楽しむ姿勢
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2019年5月にメットライフドームで行なったSILENT SIRENとの対バン2DAYS『Poppin’Party×SILENT SIREN「NO GIRL NO CRY」』以降、怒涛の修行期間をスタートし、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』や『COUNTDOWN JAPAN 19/20』といった大型フェスに出演。アニメ/ゲーム文化の外に飛び出して、様々なステージに立ったPoppin’Party。彼女たちが初のワンマン2DAYS公演『BanG Dream! 8th☆LIVE「Breakthrough!」』を開催した。
このライブは、修業期間を終えた5人が初めて立つワンマンライブのステージ。同時に、今年8月の富士急ハイランドでの『BanG Dream! 8th☆LIVE 夏の野外3DAYS』に続いて、新型コロナウイルス禍でも観客の安全を確保するためにキャパシティを大幅に制限した、コロナ禍でのライブ体験を模索する『8th☆LIVE』の最終公演にもなっている。約1年半で様々な経験を積んだメンバーが、自分たちのホームでその成果を伝える舞台となった。
今回は最終日にあたる10月9日の「ドキドキ♪Special Day!」をレポートしたい。
ライブは冒頭、スクリーンに修業期間中の様子を映す形でこれまでの道のりを振り返った後、「Poppin’Party NEXT STAGE」の文字が映し出されて本編がスタート。メンバーがアニメ『BanG Dream! 3rd Season』のカラフルな衣装で登場し、「Breakthrough!」で一気に会場を盛り上げる。
この日まず印象的だったのは、5人の演奏がぎゅっと引き締まった、これまで以上に勢いやライブ感を大切にしたものに感じられたこと。近年のPoppin’Partyはアリーナ~ドームクラスの公演や野外公演が多かったこともあり、この日のライブはどっしりとしたスケール感よりも、演奏の一体感や演奏することの楽しさをストレートに表現するような雰囲気だ。
2曲目は大塚紗英のギターからはじまる、彼女が演じる花園たえと他メンバーの絆を描いた「Returns」。続く「イニシャル」では、歌い出しから手拍子が生まれ、戸山香澄役の愛美を筆頭にメンバーひとりひとりにライトが当たり、最後にスクリーンを5分割して全員が映し出される演出も含めて、Poppin’Partyの“バンドとしてのカッコよさ”を全身で伝えるようなステージが続いていく。
一方Poppin’Partyらしさを象徴するエピソードとして、アニメ3期の5話でメンバーや周囲の人々の映像をコラージュしてMVをつくった「ぽっぴん’しゃっふる」では、その映像を流しつつ、それまでステージの奥側で演奏していた大橋彩香&伊藤彩沙もよりステージの前面に。5人の距離がより近くなり、演奏にもますますポップな一体感が生まれていた。
以降は愛美がコロナ禍での様々な変化や想いに触れた後、「5人が揃って演奏できるのは当たり前じゃなくて奇跡なんだな、と思います」と伝えて「Step×Step!」、「ときめきエクスペリエンス!」を演奏。「キズナミュージック♪」では愛美、西本りみ、大塚紗英の3人がステージ前方の台上で演奏して観客を盛り上げ、スクリーンにはシリーズの他バンドの姿も映し出されていた。メンバーやリスナー、そして『BanG Dream!』シリーズの多くのバンドまで――。周囲の人々と楽しさを共有して、繋がってきたPoppin’Partyらしいステージが続く。
その後は、観客が声を出さなくても楽しめる、ペンライトで答えを伝えるクイズコーナー「ポピパ☆キラドキ!選手権」がスタート。「B.O.F」の作曲者でもあるDAIGO、Roseliaの湊 友希那役でシリーズをともに引っ張ってきた相羽あいな、同じガールズバンドとして刺激を受け合ってきたSILENT SIRENといったポピパ所縁の人々が登場して盛況となった。
そうしたPoppin’Partyらしい瞬間も多くあった一方で、この日だけの新たな挑戦も多数用意されていた。中でも印象的だったのは、中盤に披露された「What’s the POPIPA!?」。ここではギターを置いた愛美がステージに登場して楽曲がはじまると、左の客席付近から西本&大橋コンビが、右側の客席付近から大塚&伊藤コンビが登場。そのままステージに合流し、横一列に並んで歌い踊りはじめ、そこから愛美がワイヤーアクションで空を飛ぶという驚きの展開に。長年言い続けていた「ライブで空を飛びたい!」という夢が叶うことになった。
以降は、そのラストで全員がこぶしを掲げ、そのまま「Time Lapse」の冒頭でのユニゾンのコーラスへ。「Hello! Wink!」では、演奏前に観客に振り付けをレクチャーし、一面オレンジになったペンライトの光を受けながらハロウィンがテーマの楽曲を演奏。続く「ティアドロップス」ではステージ両端の西本りみと大塚紗英が向き合って演奏するなど、スムーズな連携で盛り上げる。ウイルス対策で観客がなかなか声を出せなくても、「色んな形で楽しんでもらおう!」という気持ちが伝わるような、様々なアイデアが全編に詰まっていた。
とはいえ、この日何よりも印象的だったのは、ギターを弾きながら何度となくメンバーを振り返っていた愛美を筆頭に、5人がとにかく楽しそうな表情で演奏していたこと。序盤、中盤の楽曲はもちろんのこと、大橋彩香の怒涛のドラムプレイからはじまって、照明に照らされてまるで光の中で演奏するようだった「Light Delight」、そして会場の隅から隅までみんなに向けて手拍子をうながした「ミライトレイン」など、本編ラストの楽曲にいたるまで、終始楽しそうな雰囲気が全編を覆っていて、その様子に観客も気が付けば引き込まれてしまう。そんなPoppin’Partyらしさが、改めて伝わってくるようなステージだった。アンコールは全員での歌い出しからはじまり、メンバーがひとりずつ歌をリレーする「前へススメ!」と、シリーズのはじまりの歌「Yes! BanG_Dream!」の2曲でライブを終えた。
今年に入って第4のリアルバンド・Morfonicaが活動をはじめた今の『BanG Dream!』シリーズには、音楽的に見ても様々なバンドが存在し、まるでありとあらゆる音楽ジャンルを飲み込んだ小宇宙のようにもなってきている。けれども、その“根本的な魅力=バンド/音楽の楽しさ”を全身で伝えてくれるのは、やっぱりこの人たちしかいない――。改めてそう感じさせてくれるような、素晴らしいライブだった。来年2月には早くもMorfonicaとの対バンライブ『Poppin’Party×Morfonica Friendship LIVE「Astral Harmony」』が、横浜アリーナで開催予定。『BanG Dream!』シリーズの広がりは、ますます加速していきそうだ。
『BanG Dream! 8th☆LIVE「Breakthrough!」』DAY1 写真
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。