Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > ゴールデンボンバー、全国各地のファンへ思い届けた『エアーツアー』 地方民を大事にするエアーバンドならではの奇策

ゴールデンボンバー、全国各地のファンへ思い届けた『エアーツアー』 地方民を大事にするエアーバンドならではの奇策

音楽

ニュース

リアルサウンド

 10月16日から18日にかけて、『ゴールデンボンバー全国縦断無観客ライブ「エアーツアー」』3daysが開催された。

 「エアーツアー」とは何なのか? 公式サイトにはこうある。

「長距離移動が何かと難儀なこのご時世に、せめて配信上だけでもツアー先でのライブの雰囲気をお届けできないものかという考えから、今回は毎回「これでもか」というくらい各地の要素や雰囲気を醸し出したライブや、ご当地名物を食べながら行うトークを都内からお届けします。」

 数多のバンドが様々な形でのライブ配信を模索するなか、エアーご当地ライブを開催するとは、地方民を大事にするエアーバンドならではの奇策といえる。

 初日「~気持ちは北海道~」は、全国縦断ツアーのために東京脱出を試みるも、「自粛警察」に妨害されてしまうゴールデンボンバー……という映像からスタート。追手から逃げ切り、無事に到着。鬼龍院翔(Vo)による、北の国から流れてきたようなBGM、ぶらり途中下車したかのようなナレーションとともに、牛やクマと戯れながら、北海道を楽しむメンバーが微笑ましい。

 そして1曲目は、「やんややんやNight ~踊ろよ北海道~」でスタート。まさにこの公演にピッタリの曲である。

 無観客ながら、画面からは「ファンの念が強すぎる」ことにより、観客の姿も映し出され、声援も聞こえてくる。そんな親切設計でおなじみのゴールデンボンバーの配信ライブ。演奏中にノートパソコンを手にし、コメントチェックする鬼龍院の姿もおなじみになりつつある。部屋でひとりで観ていても、なんだかひとりじゃないような気がしてくるのが不思議だ。

 ライブハウスの壁が薄いとのことで、はからずも札幌名物の時計台が透けて見えてしまうステージに立つメンバー。そう、これはけっしてビジョンにうつしだされた映像ではないのだ。ここは気持ちの上では北海道なのだから。

 久しぶりの遠征ライブということで、おおはしゃぎのメンバー。「抱きしめてシュヴァルツ」では、喜矢武豊(Gt)、樽美酒研二(Dr)による、身体を張ったご当地ギャグを披露するのが定番であるが、今回、喜矢武はスープカレーを一気飲みしたのち、歌広場淳(Ba)の手助けで「流しスープカレー」に挑戦したかと思えば、尻にキツネの顔を描き「キタキツネ」ならぬ「キタケツネ」に扮し、ピンポン玉を産卵する樽美酒。あまりのカオスさに「想像以上の見た目の悪さ」と鬼龍院も困惑。

 その後も「なまら(方言)」と連呼した後にサッポロ一番をそのまま食べる(生ラー)というダジャレ、スノーボード、そして曲中にに乱入する乳牛と蟹……。連想ゲームのように北海道要素を詰め込むだけ詰め込む濃密な1時間。3日間このテンションでやるとのことで、一体どんな3日間になるのだろうか……。

 翌日の「~気持ちは大阪~」も、前日同様大阪にたどり着いて、ビリケンさまに挨拶し、串カツを堪能するゴールデンボンバー御一行。串カツ屋の店舗に「水道橋」と書いてあったが、それは見なかったことにしよう。そう、ここは気持ちの上では大阪なのだから……。

 「ライブハウスの壁が薄(以下略)」ということで、道頓堀を背にし、「やんややんやNight ~踊ろよ大阪~」からスタート。続いての「綺麗になりたくて」では「汚」の旗を振る鬼龍院。昨日の疲れを見せないテンションだ。

 この日も「抱きしめてシュヴァルツ」の「ユニバーサルスタジオジャパンのミニオンズ」ならぬ、「シリオンズ」を披露する樽美酒。「粉もんが好き」という前フリから、お好み焼きを作るのかと思いきや、粉をそのままかぶる喜矢武から始まり、続いて阪神タイガースならぬ“半身タイガース”と化する喜矢武。

 自身が愛してやまない激安ご当地スーパー・スーパー玉出のキャラ「玉出くん」に扮してお惣菜を配り歩く樽美酒。なおそんなキャラは実際には存在しない。続いては大坂なおみ選手(?)に扮する喜矢武……というか、それはご当地ではなく名字だけじゃないか。

 しっとり「ごめんね、愛してる」を歌い上げようとするも、背景の道頓堀ダイブに邪魔をされ、ステージに登ってきた大阪のおばちゃんに勢いよく絡まれてしまう……などなど、抱腹絶倒のご当地ネタの連打に、思わず感心してしまう。

 最終日は、沖縄で三線を楽しむゴールデンボンバー御一行の映像を経て、「やんややんやNight ~踊ろよ沖縄~」でスタート。この日は青い海やシーサーを背景にしたステージとなっていた。

 沖縄ということもあり樽美酒はいつもの挨拶をアレンジし、「ちんすこう~」と高らかに叫ぶ。それぞれの自己紹介を挟んで「抱きしめてシュヴァルツ」へ。曲間のソロタイムでは、「本場のシークヮーサーサワー」を作るために、自慢のお尻でシークヮーサーを絞り、それを一気飲み。喜矢武は紅芋を早食いしたかと思えば、懐に仕込んでいたゴーヤを貪りだす。もちろん生だ。

 「ゴールデンボンバーにも南国っぽい曲があったよ」という鬼龍院の言葉から、「じれったい」を披露。曲間ではHYのファンだという喜矢武が客席に登場……したかと思えば、「H(羽生)Y(結弦)」の格好でローラースケートでプーさんのぬいぐるみを抱えて疾走する。「楽しそうだからいいけど」と歌広場は呆れ気味だ。

 MC中に背景に突然ハブが見切れ、困惑するメンバー一同。そして、沖縄といえばダイビングという前フリから、「海山川川」では水中でダイビングを楽しむ喜矢武の映像が映し出されるが、引きで見ると海ではなく客席に設置してある風呂だったというオチへ。それにしてもこの3日間の喜矢武の身体の張り具合ときたら……。

 「忙しくてよかった」を切なげに演奏する中、先程のハブが再登場したかと思えば、ついでにマングースも乱入し喜矢武に襲いかかる。情報量が多すぎる!

 そして、ゴールデンボンバーの「笑い」に振り切った3日間は「女々しくて」で締めくくられたのであった。なお、8月のワンマンライブに続いて、ライブ終了後に金テープに書かれたメンバーのメッセージがQRコードから確認できる親切仕様も健在だった。

 アンコール前には、歌広場(初日)、樽美酒(2日目)、喜矢武(3日目)による「とあるバンギャの自宅中継」映像を挟むという演出も心憎い。それを挟んで、毎ライブ後に行われた「打ち上げパート」では、カニやたこ焼き、シークヮーサージュースなど各地の名産を用意。このメニューのうち一部は事前告知されており、ファンも同じ食べ物を用意することで、同じ時間を共有している感覚が楽しめるのも、こういった形の配信ライブならではといえるだろう。なお筋トレや食事制限に余念がない樽美酒も、この3日間ばかりは「チートデイ(何を食べても良い日)」とのこと。

 この3日間、最初の「やんややんやNight ~踊ろよ●●~」と最後「女々しくて」、定番の「抱きしめてシュヴァルツ」以外はすべて異なるセットリストな上、細かい部分にネタを仕込み、観るものを楽しませたいという彼らの気概に、笑いながらもなんだか感動してしまった。「~気持ちは●●~」というタイトルのとおり、全国各地のファンへ気持ちを届けてくれるような3公演だった。

 なお、本公演はアーカイブも配信されているので、見逃した人も是非その目で確認してほしい。諸事情によりレポートに書けないネタもありますので……。

■藤谷千明
ライター。ブロガーあがりのバンギャル崩れ。執筆媒体は「ウレぴあ総研」「サイゾー」「SPA!」など。Twitter