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持田将史&板垣瑞生、『エール』に新風をもたらす歯車に 裕一は再び音楽の道へ

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 戦争の本質に気づかないまま軍歌を作り続けた自分を責める裕一(窪田正孝)だったが、池田二郎(北村有起哉)が持ってきたラジオドラマ「鐘の鳴る丘」の主題歌「とんがり帽子」の作曲を通して、再び音楽の道へと戻るようになる。NHK連続テレビ小説『エール』第19週「鐘よ響け」では、「長崎の鐘」の作曲を通し、裕一に新たな希望が見つかった。

 戦争に敗れ連合国軍に占領された日本では、CIE(民間情報教育局)が検閲や番組指導といった手段でラジオ放送に介入していた。第18週の最後に映し出されたNHKラジオドラマの収録現場では、戦争孤児のためのラジオドラマを作りたいと意気込む劇作家・演出家の池田二郎(北村有起哉)と、その池田をいなすように笑顔で応えるNHK局員の初田功(持田将史)の姿が。同じく局員の重森正(板垣瑞生)は2人のやり取りを心配そうに見守っていた。この初登場シーンから第19週まで、池田、初田、重森は、裕一を音楽へと引き戻す重要な役割を担った。

 明るい雰囲気と特徴的な声で池田の手綱を握るのは初田功。池田に向かって放った「NHKですよ。嘘はつきません」というセリフは、SNS上でも「史上最高のセリフ」「色々と考えさせられる」などの反響を呼ぶ。そんな初田を演じる持田将史の正体は、実は、ダンスパフォーマンスグループ「s**t kingz(シットキングス)」のリーダーであった。ダンスグループではshoji名義で活動、AAA、E-girls、Hey! Say! JUMP、Kis-My-Ft2、Sexy Zone、三浦大知など、多くのアーティストの振り付けを⼿がけ、自身もダンサーとしてステージに上がることが多い。

 一方で役者・持田将史としての経歴は始まったばかり、日曜劇場『半沢直樹』(TBS系)が彼のドラマデビューの場となる。『エール』での個性の強いキャラクターを生かし、役者としてもさらに羽ばたいていくことが期待される。

 さらに「とんがり帽子」の収録シーンで、子供たちの合唱を実にうれしそうに見守る姿が印象的だった重森正は、板垣瑞生が演じている。彼の芝居からは、やや控えめだが一生懸命、好青年であることが伝わってくる。

 板垣は俳優そして歌手としても活躍する19歳。まだ10代でありながら、『エール』では誠実なNHK局員役を好演する。

 板垣は、映画『ソロモンの偽証』(2015年)のオーディションで1万人の参加者の中から準主役・神原和彦役に抜擢された逸材だ。さらに『初恋ロスタイム』(2019年)では映画初主演を務め、11月12日からMBSドラマ特区にて放送される『社内マリッジハニー』で松井愛莉とともにW主演にして連続ドラマ初主演を務めることが決定している。まさにこれから駆け上がっていくホープといえよう。

 裕一と池田たちとの交流を軸に描かれた第19週だが、こうした個性あふれるキャラクターに囲まれ、裕一はまたかつてのように前を向いて、歌でエールを届けてくれるに違いない。今週は、連続テレビ小説の元となるラジオドラマが制作されるまでを描いたことで、興味深く作品を観ることができたのではないだろうか。さらに追記すると、「とんがり帽子」の歌は第100作目の朝ドラ『なつぞら』でも、戦争孤児の咲太郎(渡邉蒼)と亜矢美(山口智子)を結びつける大切な曲として流されていた。

 こうしてみると、裕一のモデルでもある古関裕而が残した功績がどれほど大きかったのかを実感する。最前線での慰問を経験した山藤太郎(柿澤勇人)が歌う「長崎の鐘」もまた、心の琴線に触れるように深く澄み渡る美しい曲であった。古関の曲は実に多くの人の心に寄り添ってきたことだろう。

 裕一は今、長崎で新たなる一歩を踏み出した。音楽への気持ちを取り戻した裕一は今後の人生をどのように歩んでいくのだろうか。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、中村蒼、山崎育三郎、森七菜、岡部大、薬師丸ひろ子ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/