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『24 JAPAN』仲間由紀恵が隠す秘密 桜田ひよりの逃走劇に手に汗握る

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 今週の獅堂(唐沢寿明)はCTUから動かない。と言っても、各話が現実の1時間を描いており、第3話が総選挙当日の午前2時から3時を取り上げていることを考えれば、まったく不自然ではない。にもかかわらず、妻の六花(木村多江)と娘の美有(桜田ひより)は外出中。獅堂家、緊急事態である。

 『24 JAPAN』(テレビ朝日系)第3回。物語の流れを追うと、獅堂とCTU、美有と寿々(柳美稀)、美有を探す六花と寿々の父・函崎(神尾佑)、七々美(片瀬那奈)と神林(高橋和也)、そして朝倉麗(仲間由紀恵)と朝倉家の5つのシーンがリアルタイムで進行している。

 US版『24 -TWENTY FOUR-』を踏襲する本作で、もっとも「JAPAN」らしさが出せるとすれば、麗の登場シーンだろう。オリジナル版の黒人大統領を女性総理候補に変更しており、それによって政治状況や家族関係が変わってくる。麗が終始険しい顔をしている理由は、史上初の女性総理を目指す重圧だけではない。ニュースキャスターの山城まどか(櫻井淳子)に聞かされたあることが頭を離れないのだ。

 こういう時、麗の夫である遥平(筒井道隆)が支えればいいのにと思ってしまうが、麗は夫には相談せず、情報屋の上州(でんでん)に会いに行く。夫婦の間に隠し事があるというと2020年1月期に放送された『10の秘密』(カンテレ・フジテレビ系)を思い出す。同作は、向井理演じる夫が妻役の仲間由紀恵の残した秘密を探っていくストーリーだった。『24 JAPAN』で麗は全てを知って、それを一人で背負い込もうとする。

 コネと学歴のある遥平も決して無能ではないのだろうが、SPの金田一(天野嘉久)に感情的な態度を取る姿を見るにつけ、若干の不安を感じることも事実だ。夫婦の間の溝を知ってか、長男の夕太(今井悠貴)は表向き良い息子を演じるが、それがかえって不穏な空気を醸し出す。今にも倒壊寸前の朝倉家。アップルパイなんか食べている場合じゃない。

 本名を明かさない上州は、いかにも裏の世界にいそうなフィクサー然とした男。上州の登場シーンは良い意味で日本臭さがあり、名バイプレイヤーのでんでんが強烈な存在感を放っている。流れているのが哀愁系の劇伴なのも効果抜群だった。ちなみにこれで総理候補が天海祐希だと『緊急取調室』(テレビ朝日系)になってしまうので、仲間由紀恵で正解だと思う。

 さて、指紋照合やGPSを使った追跡など技術面をアップデートした本作で、東京の街の風景も2020年っぽさを打ち出している。駐車場で麗が出会う不良は半グレとパンクスの中間のようないで立ちで、美有と寿々が逃走中に出会う諫早幸作演じる若者も、生活実態はともかく今の雰囲気をまとっている。それに加えて、ある種の漫画っぽさというか、現実に近未来感をミックスした独自の世界観を構築している。

 剛(犬飼貴丈)と研矢(上杉柊平)から逃れようとする美有たちだったが、道路に飛び出した寿々が車に轢かれてしまう。一連の逃走劇は見ごたえがあり、事故のシーンでは思わず息を呑んだ。銃による殺人よりも交通事故の方がリアリティのある日本で、当然かもしれないが、オリジナル版より優れている描写もある。

 今週の南条。薄暗いCTUオフィスでは池内博之の白目成分が際立つ。郷中(村上弘明)の死を知って獅堂を疑い、伊月(栗山千明)と獅堂が一緒に上がっていく姿を見ていぶかしむところまでは平常運転。ところが思い立って電話をかけたかと思うと上層部に獅童の解任を要求。ついに眠れる男が牙を剥いた。

 オリジナル版には、登場人物のわかりやすい動機や共通の社会的背景が書き込まれておらず、その欠落部分を視聴者が「海外もの」というフィルターで補っていた節がある。日本版で、視聴者は自分たちが生きている社会の出来事として観るので、キャラの動機や共通理解がないことはわかりにくさにも通じる。菫(朝倉あき)が獅堂と伊月の関係を確認したように、会話で文脈をつなぐ方法は今後も有効だろう。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
『24 JAPAN』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜放送
※一部地域を除く(全24話)
出演:唐沢寿明、仲間由紀恵、木村多江、桜田ひより、筒井道隆、今井悠貴、森マリア、栗山千明、池内博之、朝倉あき、村上弘明、片瀬那奈、高橋和也、前川泰之、上杉柊平、犬飼貴丈、柳美稀、神尾佑、でんでん、水野久美、櫻井淳子、内村遥、天野慶久、時任勇気、佐野史郎
日本語版脚本:長坂秀佳
日本語版脚本協力:山浦雅大
音楽:奈良悠樹
チーフプロデューサー: 五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:船津浩一(テレビ朝日)、神田エミイ亜希子(テレビ朝日)、下山潤(トータルメディアコミュニケーション)
協力プロデューサー:藤本一彦(テレビ朝日)
監督:鈴木浩介、木内健人、日暮謙、大塚徹
原作:Based on the U.S. Series “24” Created by JOEL SURNOW & ROBERT COCHRAN (c)2020 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
制作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日