あの、“ano”として再び音楽に向き合った理由 「本質の部分は曲を聴いてもらわないとわからない」
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あのが「ano」名義で初めてリリースした配信シングル「デリート」(2020年9月4日)は、鬱屈が渦まくなかに希望も垣間見られるような楽曲だった。ゆるめるモ!脱退から約1年。2020年10月6日からは冠番組『あのちゃんねる』(テレビ朝日)が地上波で始まったものの、時代のアイコンにとどまることをあのは拒み、また音楽に向き合いだした。「デリート」の作詞はあの自身だ。「デリート」の作編曲も担当したTAKU INOUEと組んで音楽活動を始動したあのに、再び歌いだすまでの日々について聞いた。(宗像明将)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】
何年も作り上げてきたものを壊したくなってしまう
ーーグループを辞めてから、音楽活動再開まではどんな感覚で過ごしていましたか?
あの:一回考えをリセットしました。そこで自分がやるべきことを考えて、「表現をしていないと溜まっていくだけだな」って。
ーーSNSだけでは出し切れない、表現したいものが出てきた?
あの:SNSで表現しているつもりは全くなくて。前のグループを辞めてから、SNSにはなるべく自分の気持ちを書かないようにして、そういう気持ちは制作に向けていました。
ーー音楽活動を再開しようと思ったのはいつ頃なんですか?
あの:誰とも会いたくなくて家から出ないで悶々としていたなかで、去年の12月かな。
ーー去年の12月には音楽活動を再開させようとしていたとなると、グループを辞めてからそんなに休んでないですね。
あの:そうですね。前はライブもたくさんやっていたし、収録や撮影も多くてずっと休みがなくて、グループの活動と自分のやりたいことを器用に両立させられる自分じゃなくて。でも、これからソロではもっと自分を見せたり、いろんなことができるようにしたい。辞めた後にちゃんと今後のことを考えられるようになって、そのなかで「じゃあ曲を作ろう」って。
ーー「デリート」を作った時期はどんなモードだったんですか?
あの:ずっと悶々としていました、何もできないし。MVは自分の部屋で撮ったんですけど、あの部屋にずっといて。歌詞は一応明るいとは自分では思っているんですけど、ひとりでとても暗い気持ちで書いていました。あんまり自分自身がポジティブじゃないから、ポジティブになるのが難しい……。
ーーサビの部分では、歌詞とメロディが重なって希望が見えてくる感じがしますよね。これは意図的に?
あの:うん。無理やりではないけど、意図的に明るくしていますね。絶望だけで終わりたくなくて。
ーー「自分の環境を変えたい」という思いが「デリート」には投影されているんでしょうか?
あの:そうかもしれない。自分の悪いところでもあるけど、何年も作り上げてきたものをぶち壊したくなってしまうんです。でも、壊すことによってまた新しいことができたり、また作っていけたりする部分では希望が見えるのかな。自暴自棄ですね。それでもちゃんと前に進めるようになりたい。
ーー「前に進みたい」という気持ちは決してSNSでは書かないですよね。
あの:言ってるんですよ。ツイートを消してますけど。ぼくのツイートは通知を切っていたら見れないです(笑)。今は消さないように頑張っているんですけどね(笑)。
ーー通知を入れます! 歌詞では何度も〈バカ〉と歌っていますが、そういう苛立ちは今も抱えていますか? それとも音楽活動が始まって、ちょっとおさまってきましたか?
あの:全然おさまっていないです。「明るくなった」とか言ってもらえるんですけど、実際は全然真逆で。余計に劣等感も感じる。ここでは「バカ」というワードがいっぱい出てくるけど、やっぱり自分の出来なさや、普通の生活の難しさを前よりさらに感じるようになって日々落ち込んでいるし。前の活動にはメンバーがいたけど、今は本当にひとりで、孤独の中でやることばっかりで。メンタル面も誰かと共有できないし、自分で全部感じ取って、考えて、解決しなきゃいけない感じはありますね。
ーーあのさんに憧れている人は、あのさんが「劣等感」と言うとびっくりする人も多いと思うんですよ。それこそ、テレビであのさんを見ているような人たちは。
あの:そういうところはあんまり見せていないからかな? 無くし物は相変わらずすごく多いしご飯をちゃんとたべたり掃除をしたりも全然出来ないし、道もわからないし電車も辛くなっちゃって乗れなかったりします。それでいいやなんて自分では一切思っていなくて周りは出来てるのになんで自分はできないんだろうと常に思ってしまっていて、劣等感の塊です。自分が欲しいものや自分が目指すものが僕のファンが僕に求めていることが一致してるとは限らないからみんなの理想にもしぼくがハマっているんだとしたら余計にうまくやれてるように見えてるのかもしれない。自分自身に対して本当にゴミクズだと思っているから……。
ーーでも、「デリート」を聴いたファンの人たちから「気持ちを動かされた」っていう声もいっぱいあると思うんですよ。ファン人たちの声はどう受け止めましたか?
あの:「音楽活動をしてくれて嬉しい」とか「また生きる希望が湧きました」って言ってくれる子たちもいて。歌詞も「代弁してくれている気持ちになる」と言ってくれて。Aメロとか死ぬほど暗いことを言っているんですけど、出して良かったです。みんなの反応が嬉しかったです。曲に対して人によっていろんな解釈もあってコメントとか読みながら面白いなと思ったし、今後も好きなように解釈してほしいです。
ーーいろんな思い入れをファンから持たれることは、どんな感覚ですか?
あの:別にそこまで意識はしていない。ぼくはファンにどう思ってほしいかを考えて書いているわけではなくて、鬱々としたものを出しているだけなので。自分の孤独や虚しさだったり、たまに前を向こうと頑張れそうになって、でも、それ自体にめちゃくちゃ違和感を感じたり、息苦しかったり。声が喉に引っかかるような感覚を曲にしていて。それがファンの生きる上で少しでも力になっているんだったら、そんなに素晴らしいことはないな。ありがたい。
ーーInstagramで「なりたくないものにはなりたくない」と書いていましたが、あのさんにとって「なりたいもの」はなんでしょうか?
あの:なりたいもの、と言われると分からないけど、なりたくないものは明確に自分の中にある。でも、それは「やりたくないことをやらない」とはまた違うと思っていて。やりたくないことをさんざんやってきて今があるし、今後もやりたくないことしなきゃいけないんだろうなとも思ってます。でも、「人間として絶対にこれはしたくない」「曲げられないところは曲げたくない」という気持ちでずっといる。「流されたくないな」って。流されたほうが楽なのも知ってるんですけどぼくは流されることで苦しくなっちゃうので。マイペースになっちゃうけど(笑)。
今一番強い気持ちは「期待を裏切っていきたい」
ーーテレビ朝日で始まった『あのちゃんねる』では、カエルをつかんだり、50メートル走をしたり、あのさんがまさに「バラエティ」をやっていますよね。地上波テレビで冠番組を持つのはどんな感覚ですか?
あの:心配(笑)。突然オファーが来て「なんで自分?」と思っていたんですけど、前に『出川とWHYガール』というテレ朝の番組に一回出させてもらって、その時の制作の人が「やりたい」って言ってくれていたみたいで。ファンの人の反響がすごく大きかったらしくて、「みんなの声が実際に形になっていって、自分の可能性を広げてもらえているんだな」って今回は特に感じて。ファンの子の声で自分が生きるためのお仕事をもらえたり、音楽活動ができるようになることに繋がる。本当にありがたいですね。
ーー「デリート」の歌詞の世界と『あのちゃんねる』の世界はだいぶ違いますよね。自分の中ではどうバランスを取っていますか?
あの:バラエティだけを見ているファンと、ぼくの言葉や曲、ライブが好きで、そこを見てくれているファンとで、けっこう分かれるパターンもあって。「あの」という人に対しての受け取り方が全然違くて面白い。ぼくも「バラエティはバラエティだ」という感覚で割り切って前からやっています。
ーー持たれるイメージがあまりにも違って、逆に生きづらくなったりしませんか?
あの:今までずっとバラエティとか関係なしに、生きづらいとは思って生きてきたし、「テレビに出しちゃダメな人間」とか言われたりバラエティのイメージで通りすがりの知らない人に暴言吐かれたこともあって息苦しさや生きづらさも感じていたけど、でもテレビとかを見てぼくを初めて知って、曲を聴いてくれたって人も沢山いるから救われてます。ぼくは割り切ってはいるけど、「本質の部分は曲を聴いてもらわないとわからないな」とも思う。
ーーテレビはテレビで割り切っている?
あの:割り切ってるけどありのままではいる。バラエティだからこうしようとかなくて。ちゃんとしゃべれるようにはしているけど……あれが限界(笑)。まだ始まったばかりですけど『あのちゃんねる』は、本当に自分のままやらせてもらえているバラエティです。
ーーそうなると、『あのちゃんねる』は周りがあのさんをうまく料理してくれて、音楽活動はあのさんが自分から全部出していく感じですね。
あの:音楽もテレビのお仕事もやっぱりグループでやっていた時よりも、ひとりの責任を感じる。いろんな人が関わってくれているんですけどね。でも、自分が自己中になれたらいいな。意外とグループの時はバランスを意識したりしちゃっていたんですよ。「ひとりで曲を作ったり、歌ってもいいんじゃないか」って声があったけど、両立できるほど器用にやれなくて。それが辞めたきっかけじゃないけど、辞めた今、できることをちゃんと、自分が思うままやれたらいいな、と思います。
ーーそんななか、「デリート」をソロの1曲目に選んだのはどうしてですか?
あの:他の曲よりメロディが明るいから。世界観は変わらないけど、今後はいろんな曲もやりたいし。でも、一回はこういうのを出したら、ファンの人にとっても、自分にとっても、ようやくちゃんとスタートする準備ができるのかな、って。まだスタート地点にも立っていないとぼくは感覚で思っているけど。
ーー「デリート」は、1番と2番でAメロの構造が違っていたりして複雑だけど、そこに表現したいことが詰まっている印象がありますね。
あの:そうですね。今ある曲の中では一番ストレートな感じ。タイトルは「デリート」だけどスタートみたいな曲。これからいろんなものが再生していったり、生まれていったりしたらいいな、って。
ーー「デリート」のMVでP-MODELのレコードが出ていましたが、ふだんからあの部屋で聴いているんですか?
あの:うん。置いてあったのをがっつり撮られちゃって、恥ずかしい(笑)。
ーー本当に自分の部屋で撮っている、と。
あの:そうなんですよ。大家さんに怒られなくてよかったです。けっこう暴れちゃってたから。
ーーふだんから家であんなに暴れることは?
あの:時と場合ではありますね。服とかぶん投げたり。虫とか出たら「ギャーッ!」って大泣きしちゃいます。
ーー虫は平気そうに見えるのに。
あの:今ここにいたりするのは平気です。食べてもいいです。
ーー食べなくていいです(笑)。
あの:でも、ひとりの部屋で出た時は本当に叫びます。ふだんはめちゃくちゃ静かです。
ーー部屋でひとりの時は何をしていますか?
あの:部屋はめっちゃ真っ暗です、目が悪いんですけど。映画見たり、ゲームをしたり、寝たり。最近は曲を作ったり、ギター弾いたり。
ーーそんな生活をしながら、今後はどんな自分を見せていきたいですか?
あの:その時その時で生まれた衝動的な感情を曲にして表現したい。新しいこともどんどんしていきたいから、期待を裏切っていきたい気持ちもある。それが今一番強い気持ち。
ーー突然あのさんに映画の主演のオファーが来たり、どこかから「選挙に出ませんか?」と言われたりしたらどうしますか?
あの:いいんならやる。「やらなそう」と思われているものをやりたい。
ーー拒否はしない?
あの:ふふふ、うん。今までずっと拒否してきたんですよ。ニートみたいな生活をしているのが一番いいと思っちゃって。でも、今回曲を出してみんなが喜んでくれたり、生きる希望が湧いてくれたり、人生の手本にしてくれる変わった人たちがぼくのファンの中にはいっぱいいるので(笑)。だから音楽はやりたいな。今までは専属モデルの話とかもあったけど全部断ってきちゃってて。写真集も出せたけど、それまでにも話はいろんなところからいっぱいあって。でも、鞄の中身やメイクの紹介込みの提案が多くて。でも、それはやりたくなくて、自分の好きな素敵な写真家さんと、写真だけの写真集を作りたいということでようやく出せた写真集でした。今回もそうやって『あのちゃんねる』を受けてみました。結果どうなるか分からないですけど(笑)。やっと曲を出せたので、いろんな仕事をやっていこうと思います。
ーーまさに「デリート」してリセットして始まる。あのさんの中では変わり続けることが一番大事?
あの:わかんない。だってその気持ちも変わっちゃうかもしれないじゃないですか。ぼく、けっこう気分屋だから。「めっちゃ一途だけど気分屋」みたいな感じで。根本的なものは何も変わらないんだけど、その時々で感情の起伏が激しいから、自分でも困ります(笑)。そこは何とかなるようにします、自分で。
■楽曲情報
「デリート」
作詞:あの
作編曲:TAKU INOUE
配信リンク
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