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玉木宏、綾野剛、松坂桃李ら“アウトロー俳優”の系譜を追う “悪い”オーラが生むギャップの魅力

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リアルサウンド

 「主夫、ナメたらあかんで」と、実にオールドファッションな“極道”のイメージでメンチを切りながら、料理や洗濯、掃除、さらにはバーゲンセールへの特攻など、バリバリと家事をこなしていく主人公の姿がなんともシュールな日本テレビ系列の日曜ドラマ『極主夫道』。同名のウェブコミックを原作に、裏社会に数々の伝説を残した“不死身の龍”が足を洗って専業主夫として奮闘する姿を描いた本作のコミカルさをより駆り立てていくのは、龍役を演じる玉木宏の演技に他ならないだろう。

 前クールにカンテレ・フジテレビ系列で放送された『竜の道 二つの顔を持つ復讐者』では、育ての親を死に追いやった大企業に復讐を遂げるため、整形手術で別人になり変わる男を演じた玉木。シリアスなサスペンスだった同作と、コントのようなドタバタギャグが繰り広げられる『極主夫道』は対極の位置にあるような作品だが、どちらも玉木が“アウトロー”な役柄に挑んでいるという共通点がある。もっとも、細かく見れば前者は復讐という目的のために正しい道を少しずつ踏み外していくのに対し、後者はアウトローながらも正しい道を歩もうとトライ&エラーを繰り返しているという違いはあるのだが。

 いずれにしても、玉木のように“イケメン俳優”枠として活躍してきた俳優が、年齢を重ね円熟味と貫禄を携えていくと同時に広義のアウトロー演技で新境地を開拓するというケースはこれまでにもいくつもあった。少し前では『闇金ウシジマくん』シリーズの山田孝之や、『新宿スワン』や『日本で一番悪いやつら』の綾野剛、『任侠ヘルパー』(フジテレビ系)の草なぎ剛あたりが代表的なところか。近年では『孤狼の血』や『不能犯』での松坂桃李や、『初恋』での窪田正孝、『DIVER -特殊潜入班-』(カンテレ・フジテレビ系)での福士蒼汰と、10代や20代前半の頃にキラキラとしたオーラを放っていた俳優が、対照的なオーラでがらりとイメージチェンジを図るという例さえも見受けられるようになっている。

 たしかに従来の“アウトロー俳優”の系譜を辿っていけば、いかにもな強面俳優も数多く存在しながら、その一方でまるで正反対の、いわゆる美形俳優たちも存在感を示していた歴史がある。60年代から70年代に隆盛を極めた東映の任侠映画や実録路線における高倉健や菅原文太しかり、とりわけ『ギャング対Gメン』や『人生劇場 飛車角』などで知られる鶴田浩二は、若い頃にはアイドル俳優としてその名を轟かせ、その後アウトロー俳優としてのイメージを定着させたあたり、前述した近年見られる流れの先駆者と言ってもいいのかもしれない。

 屈強なアウトローというのももちろん魅力的ではあるが、顔立ちが凛々しく整った美形俳優だからこそ放たれるどことない儚さを携えたアウトローというのは、意外性もあり殊更魅力的に映るものだ。玉木も『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)でイケメン俳優としての地位を絶対的なものにし、その後も三枚目な役柄を厭わないキャラクター性で好感度が高く、時代劇などで落ち着いた演技もこなしてきただけに、“悪い”オーラを放つアウトローな役柄となれば否応なしにギャップが生まれ、作品にとっても俳優キャリアにとってもプラスになるというわけだ。

 もちろん、このようにイケメン俳優からアウトロー俳優へステップアップしていく道筋が切り開かれていくことは、俳優界全体にとっても大いにプラスに働くことだろう。将来性のありそうな若手俳優たちがひしめき合っているとはいえ、彼らがゆくゆくはどんな俳優に成長するのか具体的なイメージがつかないのが正直なところだ。中にはライダー出身俳優など身体能力の高さを備えた者も数多くおり、彼らがアウトローな役柄もこなす俳優へと転身を遂げれば、日本の映画やドラマはこれまで以上に豊かなものになるような気がしてならない。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『極主夫道』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~23:25放送
出演:玉木宏、川口春奈、志尊淳、古川雄大、玉城ティナ、MEGUMI、安井順平、田中道子、白鳥玉季、中川大輔、片岡久迪、水橋研二、本多力、新津ちせ、橋本じゅん、滝藤賢一、稲森いずみ、竹中直人
原作:おおのこうすけ『極主夫道』(新潮社『くらげバンチ』連載中)
脚本:宇田学ほか
監督:瑠東東一郎ほか
チーフプロデューサー:前西和成
プロデューサー:中山喬詞、小島祥子、清家優輝(ファインエンターテイメント)
共同プロデューサー:池田健司(日本テレビ)
制作協力:ファインエンターテイメント
制作著作:読売テレビ
(c)読売テレビ
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