グループ魂、ロックバンドのパワーとエンタメ性備えたステージ “水入らず”な単独公演を振り返る
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グループ魂の約3年ぶりのワンマンライブ『東京、水いらず』が9月5日に豊洲PITで開催された。フェスでも対バンでもなく、さらにゲストもいない、メンバーと観客だけのまさに“水入らず”なライブ。しかも事前に募集したリクエストから上位曲を演奏するという、グループ魂のいちばん濃いところがパンパンにつまったステージとなった。
(関連:グループ魂『東京、水いらず』ライブ写真)
最初に登場したのは、黒柳徹子に扮した港カヲル(MC / 皆川猿時)とバイト君(村杉蝉之介)。リクエスト上位曲をランキング順に演奏するということで、ライブ全体が伝説的某音楽番組のパロディとして構成されていたのだが、ふたりの微妙なモノマネに早くも笑いが起こる。最初に演奏された第10位の曲は、「君にジュースを買ってあげる♥」。『第56回NHK紅白歌合戦』(2005年)でも演奏されたグループ魂のもっとも有名な曲のひとつだが、まさかの10位という結果にメンバーの破壊(Vo / 阿部サダヲ)も「一体、どうなってんだよ。ライブで毎回やる曲なのに」と戸惑っている様子。さすがにグループ魂のファン、一筋縄ではいかない。
その後もベスト10に入った曲を中心に、23年に及ぶキャリアを代表する楽曲が次々と披露される。まず印象的だったのは、「幼稚&DESTROY」(20位~11位にランクイン)。シングル『だだだ』のカップリング曲として収録されたこの曲は“ダメと言われるとやりたくなってしまう幼児の習性”をテーマにしたパンクナンバーで、今回がライブ初披露となった。曲名は明らかに「Search And Destroy」(イギー・ポップ)のパロディ。アレンジ、歌詞、タイトルを含め、さまざまなアーティストからの引用のセンスもグループ魂のおもしろさなのだ。
ライブ中盤でも、このバンドならでは、というか、グループ魂以外では絶対に見られないシーンが続く。第8位の「服部」(ユニコーンのカバー。カバー曲がリクエスト上位に入っているのもなんだかすごい)の途中では、「中村屋」(破壊が“九代目中村屋華左右衛門”に扮するおなじみのコント)がいきなり挿入される。さらに「これはね、唯一“売れたい”と思って出した曲なんだよね。石鹸(Dr / 三宅弘城)がどうしてもこの曲をシングルにしたいって言い出して」(港カヲル)という渾身のロックバラード「べろべろ」で感動を生み出したあとは、もっとも下ネタ濃度が高い「押忍!てまん部」。「手! と言ったら手を上へ。マン! と言ったら手を●●●へ持っていけ!」(破壊)というコール&レスポンスにしっかり応える観客も素晴らしい。そして初期の名曲「竹内力」も披露。まるでジミヘンみたいなギターリフとともに“力!力!竹内力”“翔!翔!哀川翔!“漣!漣!大杉漣!”と俳優の名前を連呼するこの曲は、“人名タイトルシリーズ”のきっかけになった重要なナンバーだ。この日は先日亡くなった名優・津川雅彦の名前をタイトルに冠した「津川雅彦」も演奏。グループ魂ならではの追悼にグッときた。
パンク、パロディ、下ネタ、人名などと並び、グループ魂のライブに欠かせないもうひとつの要素がコント。今回のリクエストにはCD作品に収録されたコントも対象になっていて、もっとも票を集めた「ハイテンションパブの反省会」が生披露された。破壊扮するパブの店長が「売り上げ目標に届かないのはなんでだ?!」と裏声で叫び、店員役の石鹸、バイト君、港カヲル、遅刻(Gt / 富澤タク)が「テンションが低いからです!」と絶叫するコントなのだが、脚本は暴動(Gt / 宮藤官九郎)で、演者は実力派の俳優ばかりなのだからおもしろくないわけがない。
ライブ後半では7年半ぶりのニューシングル「もうすっかりNO FUTURE!」、に続き、リクエストの上位3曲「ペニスJAPAN」(第3位)、「ラブラブ♡マンハッタン」(第2位/TOKIOへの提供曲のセルフカバー)、そして「モテる努力をしないでモテたい節」(第1位)。パンク、ハードロック、歌謡曲などを自在に取り入れたサウンド、“ネタ”満載の歌詞、そして、キレキレ&ハイテンションのバンドサウンド。ロックバンドとしてのパワーと爆発的なエンタメ性を備えたステージは、まさに唯一無二だ。
アンコールでは、破壊、暴動、バイト君によるギター漫談風のコントも。じつはグループ魂は、この3人による漫談スタイルのコントグループとして始まったのだ(当時は老舗演芸番組『笑点』にも出演した)。「このコントがいちばん気がかりだったんだよね」(暴動)と3人とも少し緊張していたようだが、グループ魂の原点である3人のネタを堪能できたことも、このライブの大きなポイントだった。
ラストはグループ魂そのものをテーマにした「TMC」。「あー、おもしろかった!」という声があちこちから聞こえるなか、ライブは終了した。超売れっ子の脚本家、俳優が中心になっているバンドだけに活動を続けるのはめちゃくちゃ大変だと思うが、ぜひ、この先も継続してほしいと心から願う。そして筆者は、ここで改めて宣言したい。“エルレより、普通に、魂が好き!”と。(森朋之)