アニメ映画『ウルフウォーカー』に細田守、山村浩二、森本千絵ら賛辞
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©WolfWalkers 2020
アニメーション映画『ウルフウォーカー』の著名人コメントと新たな場面写真が到着した。
アイルランドのアニメーションスタジオ「カートゥーン・サルーン」の最新作となる同作は、中世アイルランドの町キルケニーを舞台にした作品。イングランドからオオカミ退治のためにやって来たウルフハンターを父に持つ少女ロビンが、森の中で友だちになった「ウルフウォーカー」のメーヴとある約束を交わすが、その約束は父を窮地に陥れるものだったというあらすじだ。日本語吹替版では、ハンター見習いの少女・ロビン役を新津ちせ、人間とオオカミが1つの体に共存し、魔法の力で傷を癒すヒーラーでもあるメーヴ役を池下リリコ、ロビンの父・ビル役を井浦新が演じる。10月30日から公開。
コメントを寄せたのは、細田守、山村浩二、指出一正、森本千絵、伊藤有壱、蟹江杏。
場面写真には、豊かな森を焼き尽くそうとする護国卿や兵士たち、森の中で炎に囲まれるオオカミの姿などが写し出されている。劇中では街と森は対立する関係にあるため、街は正方形や長方形、直線や角張ったもの、森は曲線や手描きの線で描枯れている。トム・ムーア監督は「現在の危機の大部分は私たちグローバル社会が動物に対して行ってきた、無計画かつ好ましくない態度が生んだものだ」とコメント。また森を守ろうとするオオカミたちと、森を焼き尽くそうとする人間たちとの闘いについて「最大のチャレンジは、これがアクション映画だということです」と語っている。
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細田守のコメント
美しい映画でありながら、力強い映画であることに感銘を受けました。
冒頭1カット目から当たり前のカットが1つもない。
1カット、1カットが驚きの連続で、本当に素晴らしい作品でした。山村浩二のコメント
成熟し、完成度の高い形式美、その造形の妙味は、視覚の快楽を与えてくれる。
近代ヨーロッパの「理性」の光で照らされた社会、その反動としてのケルト文化の原始的な自然崇拝の精神が、自在な造形や変形が可能な「アニメーション」がもつ可塑の力とリンクし、甘美な中世の変身譚へと誘う。
少女のイニシエーションの構造を持つ古典的な物語だが、それに呼応する父親の変化が現代的で優しい。指出一正(『ソトコト』)のコメント
オオカミと人との関係性を、分断から共存へと変えていくやわらかな視点。
できるなら、ぼくもウルフウォーカーになって、自然の一部としての存在の喜びを感じ、
アイルランドのあの美しい森のなかで遊んでみたいです。森本千絵(goen°)のコメント
トム・ムーア監督、ロス・スチュアート監督の美しい色彩と造形の世界に、今作はさらに躍動の光が加わった。
狼と人間。自然と人間。
いつも愚かで臆病な人間社会を浮き彫りにさせながら、美しい魂を魅せてくれる。母性に強く響く。
怯えて目を背けて壁を作るより真っ直ぐに見つめて飛び込むことで真実の愛を見つける。人と自然は分かり合えるのかもしれない。
『ブレンダンとケルズの秘密』『ソング・オブ・ザ・シー海のうた』に続きケルトの伝説から着想を得た『ウルフウォーカー』は、私たちに生きるために必要な大きな愛を伝えてくれた。
この三部作の中で、もっとも愛の深い作品である。伊藤有壱のコメント
嗚呼、なんて「描く喜び」に溢れたアニメーションなのだろう。
そして、観る者に惜しみなく親愛を注ぐ映画なのだろう!
自然界を描く鉛筆タッチの重ねが表す動きの柔らかさ(「101匹わんちゃん」でディズニーが目指したマシントレスの開発を彷彿とさせる)と、城下街の木版画調で硬く冷たい世界の対比、極端にデフォルメされた画面構成、魂の動きの可視化 etc… 本作の為の表現開発は、彼等の母国アイルランドに色濃く残るケルト文化を反映しつつ、全てがちゃんと物語の言語として機能している。
ロス・スチュアートを共同監督に迎える事でその表現力はより昇華し「ブレンダンとケルズの秘密」を思わせる神秘性が全編に満ちていることも嬉しい。
一方、カートゥーン・サルーンがただのロマンチストでない事は「ブレッドウィナー」に至る作品系譜を見れば明らかで、テーマソングのスキャットに狼の遠吠えを感じながらこの美しい物語に身を浸していると、奥底から沁みてくる「警鐘」に気づく。
生き生きと走りまわる狼達はすでに絶滅しているのだ。
それを単なる感傷・批判に終わらせず観客を置き去りにせずに描ききった本作は
アニメーションの魅力に満ちている!蟹江杏のコメント
この作品は全ての「命」を肯定する物語。
そして、2人の少女の友情を賭けた壮大なアクションムービーです。
絵画の世界に迷い込んだかのような色彩豊かな森を背景に、光や雨の表現をケルト音楽がより一層美しく魅せてくれます。
勇敢な少女達の姿に、今私たちが、未来のために戦うべき相手を問われた気がします。