「おらおらでひとりいぐも」沖田修一がQ&A登場、釜山映画祭でワールドプレミア開催
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沖田修一
「おらおらでひとりいぐも」のワールドプレミアが本日10月27日に第25回釜山国際映画祭の会場である韓国・映画の殿堂で行われ、監督の沖田修一がリモートQ&Aイベントに登場した。
若竹千佐子の同名小説を実写化した本作では、夫に先立たれた主人公・桃子さんの日常が描かれる。田中裕子が75歳の桃子さん、蒼井優が20歳から34歳までの桃子さんを演じ、東出昌大が夫・周造に扮した。また濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎が桃子さんの心の声である寂しさ1、寂しさ2、寂しさ3役で出演している。
同映画祭のアジア映画の窓部門に正式出品された本作。リモートで参加した沖田は約1分で完売したチケットを手にした観客およそ50名とQ&Aを繰り広げた。若竹の小説を映画化した理由を「僕にも桃子さんと近い年齢の母親が1人で住んでいることもあり、まるで自分の物語でもあるかのような気がしました」と語る沖田は、桃子さんの心の声である寂しさについて「原作では年齢不詳で性別も不詳。映画化するにあたり桃子さんの心の中の寂しいという気持ちを、女性ではなく異性がやるほうが面白いと思いました」と述懐。イメージしたものは「白雪姫」に登場する7人の小人だったと明かし「心の声を演じているお三方は僕が大好きな俳優さんであり、彼らが陽気にはしゃぐ演技も面白くなるだろうと感じていました」と言及した。
また桃子さんが地球の歴史に造詣が深いという設定に関して、沖田は「桃子さんのひとりぼっちの生活が、地球の誕生や宇宙の誕生、太古のマンモスなど、地球の歴史の果てにあるという解釈」と説明。「桃子さんは歴史の中で自分の命の意味を探していて、過去の歴史から自分が今そこにいる意味を探しているのだと僕は理解しています」と続ける。
観客から「演出や装置が舞台的」という指摘が数多く出ると、沖田は「1人でいる75歳のおばあさんの寂しい心の葛藤を描いた作品で、大きな出来事が起こるわけではありません」と言い、「桃子さんの日常生活の中で仕掛けができないかと考え、同じ室内に時代が2つあるかのように見せたり、場所が2つあるように演出しました。その仕掛けの数々が舞台のように見えると言われるのはわかります」と話した。
なお観客からは「老いたときに見る景色が必ずしも憂鬱なものではないと思えた」「人はいつでも『やりたいこと』を始められるし、夢見てもいいのだと思った」などの声が寄せられ、沖田は「今回はリモートでの参加という形にはなりましたが、映画祭の雰囲気に触れることができてうれしかったです」と喜びを伝えた。
「おらおらでひとりいぐも」は11月6日より全国ロードショー。
(c)2020 「おらおらでひとりいぐも」製作委員会