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『銀魂』なぜ打ち切り寸前から大人気作品に? ギャグとシリアスに生きる唯一無二のキャラクターたち

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リアルサウンド

 2018年に連載が終了してもなお、人気を博している漫画『銀魂』。2004年に連載がスタートして以降、2006年にはアニメ化され、2018年まで断続的に放送されてきた。その他にもアニメ映画化、実写映画化、Web配信ドラマ化、ゲーム化、小説化など様々なメディアミックス展開がされてきている。間違いなく週刊少年ジャンプ史に残る作品である。

 そんな『銀魂』だが、実は連載初期に打ち切りのピンチを迎えていた。原作者の空知英秋はインタビューで「(人気が出るまで10週かかった話を受け)みんなこんなものだろうと思ってたんですよ。今は、最初の段階でアンケートがこれくらいだったら、だいたいは終わってしまうだろうと知っているから、諦めてしまうかもしれない。それくらいビリッケツでした。(中略)よく生き残れたなと思います」(引用元:マイナビニュース)と語ったことがあるほどだ。

 実際筆者も、当時の2ちゃんねる内であまりいい印象の書き込みを見たことがなかった記憶がある。徐々に作品にエンジンがかかっていったものの、アンケート順位の低さは連載時期の影響もあったはずだ。『銀魂』の連載が始まった当時、掲載されていた作品はレジェント級のものばかり。『ワンピース』、『NARUTO-ナルト-』、『BLEACH』、『テニスの王子様』、『いちご100%』、『遊☆戯☆王』……。さらに、1週違いで『DEATH NOTE』の連載もスタートしている。まさに何度目かの「ジャンプ黄金期」の時期である。

 そんな中、8代目担当編集・真鍋廉曰く「勝負をかけようという回」だという第17訓「酔ってなくても酔ったふりして上司のヅラ取れ」、通称・花見回が掲載されたことでアンケートの順位が上がっていった。同話は万事屋メンバーと真選組メンバーが花見の場所取りで競い合うという内容で、空知英秋の「派手なの」という発言の通り、キャラクター同士がギャーギャーと騒ぎ合う、『銀魂』らしいストーリーであった。他にも人気主要メンバーが一斉に登場したり、珍しく銀時が真剣を振るうシーンがあったり、ファンにとってたまらない要素が詰まっていた。

 こうして打ち切りを回避した『銀魂』だが、その後一気に人気作品になっていったように感じる。その理由は何なのだろうか。まず挙げられるのは魅力的なキャラクターたちが次々と登場したことだろう。

 ターニングポイントとなった17訓までに万事屋メンバー、お妙、お登勢、マダオ(長谷川泰三)、桂小太郎、真選組メンバーと主要キャラクターは登場していたが、その後も高杉晋助、坂本辰馬、鬼兵隊メンバー、伊東鴨太郎、神威、阿伏兎、服部全蔵、猿飛あやめ、柳生九兵衛、見廻組メンバーなどが次々に登場。しかもどの人物もクセになる唯一無二の設定・性格があり、魅力的であった。とはいえ、一人ひとりが持つ背景すべてが事細かに語られることは少なかったため、読者はそれぞれに考察することも楽しめた。キャラクターがユニークなだけでなく、こういった考える余白があったことも人々を虜にした理由ではないだろうか。

 そしてもうひとつ挙げられる理由は、今までにありそうでなかった作風だろう。多くの王道作品は連載当初ギャグ要素があっても、バトル系ストーリーに路線が変わるとギャグ要素はほぼなくなっていった。だが同作はバトルシーンやシリアスパートがありつつも、骨子の「ギャグ漫画」という在り方がブレていない。作品のド真ん中に「ギャグ」という柱が立っており、ストーリーが振り子のようにバトルやシリアスに振れても必ずギャグに戻ってくるというイメージである。そこで生まれるギャップが、作品をより魅力的に見せていたのではないだろうか。

 しかも、根底に「ギャグ」があるため、何でもありの状態に昇華することができ、ストーリーに直接関わらない部分も楽しむことができていたように思う。例えば、原作者・空知英秋のコメントだ。巻末コメントで担当編集を弄り倒したり、原作単行本の質問コーナーで真面目に答えているふりをして最後の最後で回答をぶん投げたり(もちろん話題になるほど的確な回答をしたこともある)。空知コメントのファンという人も多いはずだ。仮に『銀魂』がギャグ要素なしの王道バトル漫画であった場合、空知コメントも作品にフィットしていなかったかもしれない。だが、ギャグあり、シリアスありの自由な漫画になったからこそぴたりとフィットし、作品を盛り上げる一つの要素になっていたのではないだろうか。

 作品自体はもちろん、その周りの余白までをも魅力に変えた『銀魂』。原作が終わって2年経った今でも話題に上がり、新しく映画が公開される作品はそう多くはない。レジェンド作品となった『銀魂』の魅力は、まだまだ語り尽くせなさそうだ。