A.B.C-Z、初主演映画主題歌がオリコンチャート上位に 手練れのプレイヤーによる演奏・編曲と“作詞家”江頭2:50の魅力
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参考:2020年11月2日付週間アルバムランキング(2020年10月19日~2020年10月25日)
2015年に初シングル『Moonlight walker』をリリースして以来、常にオリコンチャートのベスト3に送りこんできたA.B.C-Z。彼らの9枚目のシングル『頑張れ、友よ!』は、11月2日付のオリコン週間シングルランキングで2位に初登場しました。
表題曲「頑張れ、友よ!」は、A.B.C-Zの初主演映画『オレたち応援屋!!』の主題歌。そして、作詞が江頭2:50ということも話題になりました。彼自身も「A.B.C-Zの作詞をしてくれって聞いた時は、とうとうジャニーズも頭がおかしくなったかと思ったぜ!」とコメントを寄せています(参照:ポニーキャニオン)。
意外な人選ですが、作詞家としての江頭2:50は、メロディの構成をかなり意識しながら書く人だとも感じました。具体的には、たとえば1番のAメロでは葛藤していた〈あの日〉を描きます。いわば個人の内面の描写です。そこからBメロでは〈誰だって悩んでいるのさ〉と視点を周囲へと向けます。そしてサビはメッセージで構成されているわけです。この構成は2番でも繰り返されています。初の作詞作品だそうですが、かなり考えられた構成です。
作曲はミライショウ。そして編曲は、東京事変のメンバーとしても活動中の亀田誠治。ストレートなロックナンバーである「頑張れ、友よ!」のサウンドをブラッシュアップしており、特に低音のタイトな締め方には、さすがベーシストとも感じました。
今回は通常盤を聴いていきましょう。カップリングの「また出会える日まで」は、Tommy & Sammyが作詞・作曲・編曲を担当したバラード。Tommy & Sammyとは、ともにシンガーソングライターであるsugarbeansと伊沢麻未によるユニットです。ストリングスやコーラスの配し方、アクセントとしての水の音の入れ方など、随所に職人芸が光っています。バラードという曲調も含めて、メンバーのボーカルの表現力も堪能できます。
なお、「また出会える日まで」のレコーディングメンバーは、ギターに設楽博臣、ベースに千ヶ崎学(KIRINJI)、ドラムに今村慎太郎、ストリングスに美央ストリングスと猛者が名を連ねています。ピンと来た人は聴いて損のない楽曲です。
もう1曲のカップリング「Go For All」は、「頑張れ、友よ!」と同様の前向きな楽曲ですが、トラックのビートはテクノ寄り。編曲の生田真心は、ジャニーズ関連の多数の楽曲を手がけてきたほか、AKB48の「ポニーテールとシュシュ」「フライングゲット」などの編曲で有名です。
さまざまな職人芸の集合体のなかに、江頭2:50を参加させているシングルが『頑張れ、友よ!』だとも言えるでしょう。
■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter