佐藤快磨監督、長編デビュー作『泣く子はいねぇが』は“幼少期のトラウマ”が生んだ?
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サン・セバスティアン国際映画祭(スペイン)のオフィシャルコンペティション部門に出品され、最優秀撮影賞に輝いた『泣く子はいねぇが』が11月3日、第21回東京フィルメックスが開催中のTOHOシネマズ シャンテで国内最速上映された。上映後にはメガホンをとった佐藤快磨監督が登壇し、観客とのQ&Aに応じた。
2014年、『ガンバレとかうるせぇ』でぴあフィルムフェスティバル映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)&観客賞をダブル受賞し、同作で釜山国際映画祭など数多くの国内外映画祭で評価された佐藤監督。劇場デビュー作となる本作では、秋田の男鹿半島を舞台に、覚悟がないまま、父親になった挙句、ある不祥事が原因で、家族と故郷を捨てざるを得なくなった主人公(仲野太賀)の葛藤と成長を描いた。佐藤監督が約5年の歳月をかけ、オリジナル脚本を書き上げ、その脚本にほれ込んだ是枝裕和氏が企画を担当している。
主人公像は「自分が投影されている」といい、「同世代が結婚し、子どもが生まれ、親になっていく中、自分は父親になれるんだろうかと。父親ではない自分が、映画の中で父性を探した感覚だった」とテーマについて言及。映画は男鹿の伝統文化であるナマハゲが重要なモチーフになっており、「泣く子どもを守り、父親としての自覚や責任を芽生えさせる側面があり、テーマとリンクしていた」と語った。
佐藤監督は秋田県秋田市出身で、「男鹿市は、近いようで遠い場所だった」のだとか。幼少期、男鹿市に住む友人の家で、ナマハゲを体験したそうで「怖くても抱き着ける大人がいなくて、ずっと必死に耐えていました。心細い思いをし、トラウマのように残っている(笑)」と映画の着想に至る思い出を明かしていた。
今回、サン・セバスティアン国際映画祭で受賞した月永雄太氏の撮影については「クランクイン前、個人的に男鹿を訪ねてくれて、そこで感じた印象を撮ってくださった。構図やアングルなど、月永さんに頼ったところがあるし、役者さんが一瞬見せる表情や震えを撮ってくれた」。是枝氏の後押しを受けた現場に「恵まれた環境で、好きなように撮らせてもらった。現場の皆さんが、今までにない映画を撮りたいねという思いで、全員で作った感覚がある」と強い手応えを示していた。
取材・文・写真=内田涼
映画『泣く子はいねぇが』
11月20日(金)公開
「第21回 東京フィルメックス / TOKYO FILMeX 2020」開催概要
会期:10月30日(金)~11月7日(土)
会場:TOHOシネマズ シャンテ/ヒューマントラストシネマ有楽町/有楽町朝日ホール他
上映プログラム:東京フィルメックス・コンペティション、特別招待作品
公式HP:https://filmex.jp/
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