「RENT」開幕に花村想太「すべての方に刺さる」、平間壮一は「愛おしさ感じた」
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11月1日に行われたミュージカル「RENT」ゲネプロより。
ミュージカル「RENT」が、11月2日に東京・シアタークリエで開幕。ステージナタリーでは、1日に行われた囲み取材とゲネプロの様子をレポートする。
ジョナサン・ラーソンが脚本・作詞・音楽を手がけた「RENT」は、1996年にアメリカ・ブロードウェイで初演された作品。11月1日のゲネプロではマーク役を平間壮一、ロジャー役を甲斐翔真、ミミ役を遥海、さらにコリンズ役を加藤潤一、エンジェル役をRIOSKE(COLOR CREATION)、モーリーン役を鈴木瑛美子が演じた。
劇中では、1991年のクリスマスイブからちょうど1年後までの物語が展開し、古いロフトで暮らす映像作家のマークと元ロックバンドのボーカル・ロジャーを中心に、若者の生き様が描かれる。出演者たちは「Seasons Of Love」をはじめとした名曲群を熱唱し、HIV、ドラッグ、貧困といった問題を抱えながらも、友人やパートナーと手を取り合って暮らす人々の姿を生き生きと立ち上げた。
従来の「RENT」では、モーリーンが抗議パフォーマンスをする「Over The Moon」の場面で、観客に「ムー!」と牛の鳴き声のような声を出すよう求める。しかしコロナ禍での上演となる今回、来場者は発声に代わって拍手をしたり、公式グッズの“Moo Moo ボード”をハリセン状に折りたたんで鳴らしたりすることで、このシーンに参加していた。“Moo Moo ボード”は劇場にて、税込400円で販売されている。
HIVポジティブの友人たちが明日をも知れぬ日々を送り、パートナーとの関係に悩む中、マークは生活のために1人、ニュース番組のディレクターとして働き続ける。平間は、苦しむ人々を前にカメラを回すことしかできない、傍観者としてのマークの疎外感や苦悩を、寂しげな笑顔や静かな語り口で巧みに表現した。
甲斐は自身がHIVポジティブであることに負い目を感じるあまり、ミミに好意を伝えられないロジャーを好演。「One Song Glory」や「Another Day」といったナンバーに乗せ、ロジャーの迷いや葛藤を切なく歌い上げた。遥海はパワフルなシャウトとささやくような歌声を使い分け、強気な態度を見せながらも実は精神的に脆さを抱えるミミの内面を表した。RIOSKE演じるエンジェルのチャーミングな笑顔や、加藤演じるコリンズの包み込むような歌声、そして鈴木扮するモーリーンと宮本美季扮するその恋人・ジョアンヌが歌う「Take Me Or Leave Me」にもぜひ期待しよう。
ゲネプロ前に行われた囲み取材には、マーク役の花村想太(Da-iCE)と平間、ロジャー役の堂珍嘉邦(CHEMISTRY)と甲斐、ミミ役の遥海と八木アリサが登壇。ミュージカル初出演の花村は、普段の自身を「人に弱みを見せるのが苦手な、1匹オオカミタイプ」と分析しつつ、「この“RENTファミリー”では、皆さんが僕の心の扉をこじ開けてくれた」と稽古を振り返る。上演に向けては「心を開いて作り上げた本物の『RENT』をお届けしたい。僕をいつも応援してくださる方にも、僕やほかのキャストを知らなかった方にも、『RENT』が大好きな方にも、すべての方にグサッと刺さると思います」と出来栄えに自信をのぞかせた。
平間は、稽古場に感染予防のためのルールが多数あったことに言及し、「みんな我慢していましたが、“わちゃわちゃ”したり、触れ合ったりしたくてしょうがなかった。その姿に愛おしさを感じました」と目を細める。また過去公演でエンジェル役を演じ、今回マーク役に挑む平間は、稽古中にプロデューサーから「平間のマークは『RENT』を通じて何を伝えたいのか?」と尋ねられたと話す。「すぐには答えられなかった」と言う平間は「場当たりをしていて、ふと見つかりました。以前は『仲間がいるから強く生きていける』と思っていたのですが、そうではなく『個々が強く生きることが必要だ』と気付いたんです。たとえ仲間と離れていても、自分の芯に何か信じているものがあるから1人でも強く生きられるんだと、この『RENT』を通じて伝えたいです」と言葉に力を込めた。
過去公演に続いてロジャー役を務める堂珍は、本作について「キャスト本人の人間性が役と溶け合って、演じながら(人間性が)見え隠れするのが面白い」と語り、稽古の様子を「みんなで夢や悩み事を打ち明けたりして、『RENT』にのめり込んだ」と振り返る。上演に向けては「作品のメッセージをどこまで届けられるかが課題」と話し、「たくさんの方に観ていただき、無事に公演を完走したい」と目標を掲げた。
甲斐は日本版リステージを手がけるアンディ・セニョールJr.が、稽古序盤にキャストにかけたという、「君たちの潜在能力の限界を突破してくれ。苦しくて気持ち悪い作業になるから覚悟してほしいけど、限界の先にあるのは素晴らしいものだから、信じてほしい」という言葉を紹介。甲斐は「言葉通り苦しい稽古でした」と苦笑しながら、「通し稽古で、作品に“血”が通う瞬間を目の当たりにしました。この時代だからこそ汲み取れるメッセージを受け取ってもらえたら」と呼びかけた。
今回ミュージカルに初挑戦するミミ役の遥海は、キャスト・スタッフから「パワーをいただいた」と言い、「開幕を本当にうれしく思っています。『最後はどうなってもいいや』というくらい、すべてを懸けたい。世界観をお届けできるよう、精一杯ぶつかっていきたいです」と抱負を述べる。同じくミミ役の八木は、“Moo Moo ボード”に触れて「今回声は出せなくても、ボードで一緒に盛り上がる、新しい楽しみ方をしていただけると思います」とアピール。「皆さんの感想が楽しみです。全力でがんばります」と期待を寄せた。
上演時間は休憩20分を含む、約2時間50分を予定。ミュージカル「RENT」の東京公演は12月6日までシアタークリエにて。11・12日には愛知・愛知県芸術劇場でも上演される。
なお昨日11月3日に行われたゲネプロには、花村、堂珍、八木らが出演。この記事には同日のゲネプロ舞台写真も掲載している。
ミュージカル「RENT」
2020年11月2日(月)~12月6日(日)
東京都 シアタークリエ
2020年12月11日(金)・12日(土)
愛知県 愛知県芸術劇場
キャスト
マーク:花村想太(Da-iCE) / 平間壮一
ロジャー:堂珍嘉邦(CHEMISTRY) / 甲斐翔真
ミミ:遥海 / 八木アリサ
コリンズ:加藤潤一 / 光永泰一朗
エンジェル:RIOSKE(COLOR CREATION) / 上口耕平
モーリーン:フランク莉奈 / 鈴木瑛美子
ジョアンヌ:宮本美季
ベニー:SUNHEE / 吉田広大
ICHI、コリ伽路、奈良木浚赫、小熊綸、吉田華奈、吉原シュート