櫻坂46、鮮やかな配色で変化した『そこ曲がったら、櫻坂?』 冠番組にも投影されたグループの方向性
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晴れて欅坂46から改名し、様々なところに変化が表れている櫻坂46。公式ページも一新され、全体のデザインも洗練されている。ブログのフォントは繊細かつ柔らかくなり、メンバーが書く内容も心なしか明るくなったようだ。また冠番組もリニューアルされ、桜の花びらが華麗に舞うオープニングのアニメーションをはじめ、スタジオセットや衣装など、随所にグループの方向性が投影されているのが見て取れる。そこで今回は、新しくスタートした番組『そこ曲がったら、櫻坂?』(テレビ東京)で確認できる変化から、同グループの今後を考察してみたい。
まず一見して印象的なのが、色味の“鮮やかさ”だ。全体的にホワイトやピンクを基調としたカラーで統一され、テロップの文字も色彩豊か。紫やショッキングピンクの背景に、言葉の意図に合わせたカラフルなバリエーションの文字が飛び込んでくる。スタジオで着ている新衣装はフォーマルな制服スタイルで、これから新生活を迎える新入生といった雰囲気。大きな桜の木が佇む華やかなスタジオセットは祝祭的でキラキラとした装飾で溢れている。こうした鮮やかな色使いには、メンバーたちの個性を輝かせたいという思いがあるのかもしれない。
企画内容も初回は選抜発表で重いムードが漂っていたものの、第2回放送からは「櫻坂46決起集会」として新しい方向性が見えてきた。なかでも印象的だったのが、メンバーたちが“ぶりっ子キャラ”に挑戦した流れだ。これまであまり前面に押し出されてこなかった彼女たちの王道アイドル的な姿勢に、守屋麗奈や松田里奈といったメンバーがノリノリで取り組んでる様子が見受けられた。そしてここ最近はしばらく自身のキャラに迷走していたという松平璃子が放った“重すぎる”フレーズでひと笑い。逆に彼女の新しいキャラが発掘された瞬間であった。恥ずかしがりながらも完璧な言い回しを見せた小池美波や、しぶしぶやり始めたものの機転を利かせたひと言を見せた藤吉夏鈴、「コツコツ」とかぶせた渡邉理佐など、同じ課題を得意なメンバーだけでなく多くのメンバーにもさせたことで、それぞれの個性が際立っていた。
また、バラエティスキルを鍛えるべくツッコミに挑戦した際に、大園玲が「勇気を出しました」とコメントしたり、山﨑天が「でもボケもやりたいです」といった強い意欲を見せるなど、メンバー自身から自然と積極的な言葉が発せられていたのも印象的。これこそ改名がもたらした大きな収穫ではないだろうか。そして、さらに非常に良い兆候を感じれたのが占いの企画で起きた“痛恨のボケ潰し”だ。すでに名前の挙がったメンバーが元気よく挙手するという台本的なやり取りの中で、間違えて菅井友香が手を挙げてしまう”ボケ潰し”が発生。しかし、逆にそれによって偶発的な笑いが起きた。こうした予定調和でないハプニング的な笑いも、メンバーたちのアグレッシヴな姿勢が生んだ大きな成果と言えるだろう。
編集も力が入っていて、目から飛び出すビームや、途中で差し込まれるグラフィックなど細かな部分で工夫が凝らされている。番組冒頭で流れる陽気な曲は、数年前に復刻盤が発売されて話題となったYAMASUKI(70年代のフランスで発表されたデタラメ日本語ロック)のクラブミックスバージョン。ニッチな選曲だが、放送のテンション感を高めるのに一役買っている。司会陣も以前にも増して力強く進行している印象で、こうしたメンバー以外の周りのスタッフからも熱を感じるようになった。
ウイルスの感染防止対策による空間を広く使った座席配置によって、アイドルバラエティに欠かせない”メンバー間の触れ合い”(爆笑したときなどに体をもたれ掛かかったりする仕草やボディタッチ)が見れないのは少し残念だが、かえってスッキリとした見た目で、リスタート期間にはちょうどいいかもしれない。
鮮やかな配色で明るく変化した番組。そしてそれによって個性を発揮し、実際に変わりつつあるメンバーたち。思うように活動できない期間が続いているが、こうした変化で得た力で、逆境も今後の糧に変えてほしい。
■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)