下北沢に紫テントが出現! 令和の時代にこそ観たい「アングラ演劇」の雄 新宿梁山泊『唐版 犬狼都市』開幕
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新宿梁山泊『唐版 犬狼都市』チラシ
役者・演出家の金守珍(きむ・すじん)を中心に、1987年から活動する劇団「新宿梁山泊」の意欲作『唐版 犬狼都市』が11月14日(土)に開幕する。
日本の演劇界に失われつつある「物語(ロマン)の復権」を目指す彼ら。その劇世界は実に圧倒的で、観客はしばし別世界に飲み込まれる。今回、その没入感の一翼を担うのは「テント」である。公演期間だけ突如現れるテントの中で、夜な夜な繰り広げられる濃密な物語。芝居は、テントに足を踏み入れる瞬間から、すでに始まっている。
今回、彼らが根城とする「紫テント」が立てられるのは、再開発が盛んな「下北沢線路街」だ。選ばれた作品は、1979年に状況劇場が初演した『唐版 犬狼都市』。かつて演劇界を席巻した「アングラ演劇」の熱い息吹を、令和の現代に引き継ごうとする高い志が透けて見える。
東京都大田区の地下にある、「犬田区」という幻想都市。大田区と、「しゃべる犬」がいる地下の犬田区は、地下鉄の暗い空洞を通して自在に行き来できるという。地下鉄工事で行方不明になった「あの人」の遺体をさがすメッキーという女は、背中に形見のような「ヒモでくくりつけられた爪跡のあるコンクリのかたまり」、地下鉄の枕石を背負っている。メッキーは、臆病で人のいい保健所員の田口呆と出会い、ふたりして犬田区を目指し旅立つ——。
もちろんこのご時世、かつてのように、テント内に観客をぎゅうぎゅうに詰め込むことはできない。座席数を半数に減らしたテントの中で、彼らの演劇がどんなふうに響くのか。あらゆる意味で演劇史に刻まれるであろうこの困難に、新宿梁山泊は磨き抜かれた力技で挑もうとしている。
公演は22日(日)まで、下北沢特設紫テントにて。
文:小川志津子
新宿梁山泊 第69回公演
本多劇場グループ テント企画2020
新宿梁山泊『唐版 犬狼都市』
作:唐十郎
演出:金守珍
2020年11月14日(土)~2020年11月22日(日)
会場:東京・下北沢 特設紫テント(下北線路街 空き地)