「私をくいとめて」橋本愛がのんとの“言葉以上のやり取り”回想「本当に快感だった」
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第33回東京国際映画祭の「私をくいとめて」舞台挨拶の様子。左から橋本愛、のん、林遣都。
第33回東京国際映画祭「TOKYOプレミア2020」部門に出品された「私をくいとめて」が本日11月5日、東京・EX THEATER ROPPONGIで上映。舞台挨拶にキャストののん、林遣都、橋本愛、監督の大九明子が登壇した。
綿矢りさの同名小説を大九が映像化した本作。脳内に相談役・Aを持つ黒田みつ子にのん、彼女が恋をする歳下の営業マン・多田に林が扮し、イタリアに嫁いだみつ子の親友・皐月を橋本が演じた。
のんは「原作を片手に台本を読んで、大九監督の書かれたセリフとそこに流れる感情を探ろうとしました。原作を攻略本として、台本を解釈していったという感じです」と振り返る。のんと初共演を果たした林は「普段は穏やかな印象ですが、スタートの声が掛かると一気に目の色から変わるんです。吸引力がありました。撮影では大事に大事に細かい瞬間を共有できている感覚があって、楽しかったです」と当時の雰囲気を説明。また「多田は脚本上ヒントの少ない人物だったので、自分なりに想像を膨らませつつ、現場で監督の演出を楽しもうと臨みました。でも序盤のうちに自分の浅はかな想像を超えた演出をされて、それが楽しくてたまらなくて。もっと演じたいという気持ちがピークに達するくらいで撮影が終わってしまいました。……僕もっとやりたいです」と大九にねだる。大九は「こちらこそです」と言って互いに笑顔を見せた。
橋本は7年ぶりにのんと共演。「私の現場初日が、みつ子と皐月の劇中ラストシーンだったんです。物語上はエンディングなのに、会うのが久しぶりだったので照れてへらへらしてしまって。セリフのないシーンでアドリブで作り上げなくてはいけなかったのに、お互いにやにやしながら段取りしてしまいました(笑)」と反省する。続けて「これじゃヤバいと思って、本読みをお願いしました。そうしたら軽く読み合わせただけなのに関係性が一気に埋まっていって、魔法のようだなと思ったんです。一緒にお芝居をして、彼女の瞳からはいろんな情報が入ってきました。セリフ以上のやり取りを毎シーン実感して、本当に快感だったんですよ」と興奮気味に語った。
のんは当時を振り返り、「すごくうれしくて、撮影の前日は『明日は愛ちゃんとだ』ってワクワクして。でも実際に顔を合わせてみると、すごく恥ずかしくて緊張して、目が合わせられないほどドキドキしました」と述懐。「でも撮影が始まったら、愛ちゃんと演技を交わしていることがすごく自然なことだと感じたんです。何も不自然なことも抵抗もなくて、すごく楽しかったです」と絆の深さを垣間見せるシーンも。
MCから大九に対しては、「勝手にふるえてろ」に続いて綿矢の作品を映画化した経緯について質問が飛んだ。大九は「『勝手にふるえてろ』を仕上げていた頃に『綿矢さんの新作読みましたか? とんでもないことになっていますよ』といろんな人に言われたんです」と説明。「『勝手にふるえてろ』では原作のモノローグの部分を会話劇にひらいて演出したんですが、『新作の本でもう脳内Aとしゃべってるよ』と。書店にすぐ走りました(笑)」と回想する。最初は何も考えずに楽しく読んでいたと言うも、「もしほかの人が映画化して私の期待しているものと違うものになったら嫌だなと思い、すぐにシナリオを書いてしまいました」と綿矢作品への惚れ込みっぷりを明かした。
最後に橋本は「人と関わることはどれだけ努力が必要なものなのか、苦しみや痛みを乗り越えてつながっていくのかということを感じていただければうれしいです」、のんは「世の中にいるみつ子のような方々を全肯定してくれる映画です」と作品をアピール。林は「大九監督ワールドにはユーモアと遊び心が満載なので、何度も観ていただきたいと思っています。……明日も元気にお過ごしください」と観客を気遣い、笑いを起こした。
「私をくいとめて」は12月18日より全国でロードショー。
(c)2020「私をくいとめて」製作委員会