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リム・カーワイが描く大阪キタで“行ったり来たり”する人々、新作群像劇を語る

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リム・カーワイ

第33回東京国際映画祭「TOKYOプレミア2020」部門に出品された「カム・アンド・ゴー」が本日11月6日、東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで上映。監督を務めたリム・カーワイが上映後のQ&Aに出席した。

本作は大阪でサバイブするアジア人たちの実像を描く158分の“ノンストップ群像劇”。AV嬢と偽って接待に駆り出される韓国人の女性、夢ばかり大きいネパール人の青年、帰国を許されないベトナム人の青年、借金を抱えた沖縄出身の映画監督といった人々の人生が、日本語、英語、北京語、韓国語、ネパール語、ベトナム語、ミャンマー語という多言語で紡がれる。上映前の舞台挨拶には、キャストの尚玄、ジュン・アマント、森本のぶも出席した。

2011年製作「新世界の夜明け」と2013年製作「Fly Me To Minami ~恋するミナミ~」に続き、大阪を舞台に新作を撮り上げたリム・カーワイ。彼は「大阪で日本とアジア各国の関係を描く映画の3作目。自分は勝手に“大阪3部作”と呼んでます。『新世界の夜明け』は富裕層の中国人女性が新世界のドロドロな部分に迷い込んで日本人と知り合う話。ある意味、僕も彼女と同じように久しぶりに戻った大阪に迷い込む形で映画を撮っていました」と振り返る。「そのとき大阪はアジアに近いことに気付きました。1本目が終わってからも、まだ映画を撮れる気がして、大阪3部作の構想が生まれたんです」ときっかけを明かした。

「新世界の夜明け」では新世界や西成周辺、「Fly Me To Minami ~恋するミナミ~」では難波・心斎橋周辺のミナミ、そして「カム・アンド・ゴー」では都会的な雰囲気の広がる梅田周辺のキタと、大阪の中でも3つの異なる地域の物語が紡がれている。リム・カーワイは「梅田周辺には中崎町や天六のような昔ながらの街、タワーマンションがバンバン立てられている福島、オフィス街の北浜などがあります」とキタの特徴を述べつつ、「この10年近くの間で梅田周辺に東南アジア系の人たちが非常に増えた。彼らを巻き込んでパワーアップした3作目にしようという発想でした」と語る。

タイトルの「カム・アンド・ゴー」は日本語で「行ったり来たり」を意味する言葉。「前の2作も全部行ったり来たりする話。日本に来る人もいれば、出ていく人もいる。短期滞在ですぐに帰らなければいけない人もいますよね」と、タイトルに込めた思いを明かす。また「行ったり来たり」の「来た」の部分は「キタ」にもかけているそうで、「大阪人だったらわかってくれるだろうという思いでそういう意味も込めてます」と続けた。

Q&Aでは劇中で徳島から大阪にやってきて、出会いカフェとマンガ喫茶での生活を繰り返す女性マユミに関する質問も。観客の「ほかの人物には家族なり、仕事なり、コミュニティの絆がある。でも彼女だけは孤独。監督がマユミを登場させた意図や思いを教えてください」という問いかけに、リム・カーワイは「最貧困女子」という言葉を用いながら返答。「実際にネットカフェに行くと、そこで寝泊まりを繰り返す女性と出会うことがある。彼女たちを見ると、1人で都会にやってきて生活しないといけない背景を想像してしまう。どんな生活を望んで、どんな出会いが待っているのか。その観察をもとに作ったキャラクター。たくさんの外国人と並べると、彼女の孤独が浮かび上がる。それは日本の社会の本質的な問題かもしれませんよね。自分でも気付いてなかったので、いい質問ありがとうございます」と答えた。

自ら2週間の自主隔離を経て映画祭に参加したというリム・カーワイ。最後は「今の時期はなかなか“カムアンドゴー”できない。招待してくれて本当にありがとうございます。この映画は、まだ劇場公開が決まっていない。いいと思ってくれた方はぜひSNSで拡散してください」と呼びかけ、Q&Aを締めくくった。

「カム・アンド・ゴー」にはリー・カンション、リエン・ビン・ファット、J・C・チー、モウサム・グルン、ナン・トレイシー、ゴウジー、イ・グァンス、デイビット・シウら国際色豊かなキャストが集結。また日本からも千原せいじ、渡辺真起子、兎丸愛美、桂雀々、望月オーソンらが出演した。

(c) cinemadrifters