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“亡き父に感謝をこめて”鄭義信×松本祐子がタッグ、文学座「五十四の瞳」開幕

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文学座11月公演「五十四の瞳」より。

文学座の11月公演「五十四の瞳」が、本日11月6日に東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで開幕した。

「五十四の瞳」は鄭義信が書き下ろし、文学座の松本祐子が演出する新作。作中では戦後、瀬戸内海のとある小島を舞台として、差別、教育を取り巻くドラマが描かれる。島にあるたった1つの学校(朝鮮人学校)では、27人の生徒が日本人・朝鮮人関係なく学んでいた。しかしGHQが朝鮮人学校の閉鎖と、生徒の日本人学校への編入を決定し……。

鄭は教育熱心だった自身の父を思いながら本作を執筆したと言い、「不肖の息子の僕が、教育の話を書くのはおこがましいことではありますが、思えば、僕が作家なるものに憧れたのは、廃品回収業をやっていた父が、古本の中から『少年少女世界名作集』を見つけ、僕に与えてくれたことでした。その本の中には夢と希望が、ぎっしりとつまっていました。今は亡き父に感謝をこめて、この『五十四の瞳』を捧げたいと思います」と思いを語る。

松本は「全世界が見えないウィルスという敵と戦っている最中に、希望を届けたいという鄭義信さんの熱い想いの溢れる作品を上演出来ることは大きな喜びです」と話し、「他者と触れ合うことに臆病になってしまわざるをえない今だからこそ、観ていただきたい! 心よりお待ちしております」とメッセージを送った。

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA公演は11月6日から15日まで行われ、18日には大阪・八尾市文化会館 プリズムホールでも上演される。なお11月12日18:30からは、本作の生配信がStreaming+で行われる。

鄭義信コメント

今回の文学座さんに「五十四の瞳」を書き下すにあたって、僕は、今は亡き父のことを思いました。

僕の父は十五の歳に、日本で学士になることを夢見て、故郷を離れました。戦争で、大学を中退せざるをえず、その夢は実現しませんでした。けれど、自分の五人の息子たちの教育に、金を惜しみませんでした。四番目の息子である僕は大学を中退してしまったけれど、長兄は薬剤師に、次兄は家業を継ぎ、三男は歯医者に、弟は医者になりました。父の口癖は、「わしらは朝鮮人なんやから、手に職つけなあかん」でした。

在日朝鮮人の親たちにとって、教育は糊口をしのぐための手段だけではなく、子どもたちに託した大いなる希望であり、祈りでもあったのだと、この歳になって思います。

不肖の息子の僕が、教育の話を書くのはおこがましいことではありますが、思えば、僕が作家なるものに憧れたのは、廃品回収業をやっていた父が、古本の中から「少年少女世界名作集」を見つけ、僕に与えてくれたことでした。その本の中には夢と希望が、ぎっしりとつまっていました。

今は亡き父に感謝をこめて、この「五十四の瞳」を捧げたいと思います。

松本祐子コメント

「五十四の瞳」開幕いたしました! 全世界が見えないウィルスという敵と戦っている最中に、希望を届けたいという鄭義信さんの熱い想いの溢れる作品を上演出来ることは大きな喜びです。かつて兵庫県西島という小さな島に実在した朝鮮初級学校をモデルとしたこの作品には、いろんな違いを認めつつ、共生し生活していくことへの願いが込められています。他者と触れ合うことに臆病になってしまわざるをえない今だからこそ、観ていただきたい! 心よりお待ちしております。

文学座11月公演「五十四の瞳」

2020年11月6日(金)~15日(日)
東京都 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

2020年11月18日(水)
大阪府 八尾市文化会館 プリズムホール

作:鄭義信
演出:松本祐子
出演:たかお鷹、神野崇、越塚学、杉宮匡紀、川合耀祐、山本道子、頼経明子、松岡依都美