浜辺美波、コメディエンヌとして成長し続ける演技幅 『ピュア!』から『タリオ』への進化
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浜辺美波演じる元弁護士の白沢真実×岡田将生扮する詐欺師・黒岩賢介がバディを組み、“復讐代行”を遂げる『タリオ 復讐代行の2人』(NHK総合)。第5話の依頼は時効になった殺人犯への復讐。余命半年と宣告された古沢社長(伊武雅刀)から、自分の妻を殺した犯人を捕まえてほしいとの依頼が入る。ラストは「真の復讐とは?」を問われるような切ない展開だった。
後半戦に突入した本作では、すっかり白沢と黒岩の息もピッタリだ。冒頭の古沢社長の鼻に詰められたティッシュがコーヒーに浸かったことに気付き、2人して笑いを堪えるシーンは、今までに見たことのない浜辺美波、岡田将生の表情が溢れ、呼応して互いの面白みを引き出し合う様子はまさに演技の上でもバディそのもので見事だった。
浜辺美波のバディものといえば、昨年放送された特集ドラマ『ピュア!~一日アイドル署長の事件簿~』(NHK総合、以後『ピュア!』)での東出昌大との共演が挙げられる。こちらも『タリオ』の脚本を手掛ける蒔田光治が担当した作品だ。
ライバルを蹴落とすことばかり考えているちょっと腹黒い売れないアイドル・黒薔薇純子(浜辺美波)が、「一日署長」に抜擢されるも事件に遭遇し、手を組むことになる捜査一課の東堂刑事(東出昌大)とともに事件を解決していくというストーリー。プライドが高く傲慢な刑事よりも、アイドルの腹黒さの方がしばしば事件解決に役立つという皮肉でコミカル、鮮やかな推理劇がクセになる。強い正義感ゆえに融通が利かない微笑ましき暴君を東出が、一方正義感の欠片もなくズル賢い少し残念なアイドルを浜辺が演じていたが、本作では男女の関係は見事逆転する。
奔放で子供のように無邪気なアイドル役は浜辺から連想しやすいところだが、今回は正反対側の正義感が強く堅物の元・弁護士役を見事好演している。『ピュア!』でのキャラクターは、かなりあざとく、立ち回りも上手くて、自身の武器の生かし方をよく理解しているアイドルだけに、持てるものを極端に振り切って表現する、“足し算”“掛け算”の演技が求められるような役柄だったと言えるだろう。
だが、本作での彼女は完全に“ボケ”る側で“オチ”に当たる存在。どちらかと言えば、“引き算”“割り算”の要素が必要になる、よりコメディエンヌとしての才が問われる難しい役回りを立派に演じている。比較しやすいこの2つの作品だからこそ、この1年でまた格段に広がった浜辺自身の演技の幅がありありと感じられる。
人一倍強い正義感を持ち、自身は至ってまともだと思っているものの実際には一般教養に著しく欠けており、美形なのに無頓着という突っ込みどころ、抜け感、余白を常に備えておかねばならない。ただ、イニシアティブを取りながら事件の真相に迫る様子や、突然作動する鋭い着眼点、犯人と対峙する際に突如見せる至極真っ当さなど、本作内で毎話用意されている緩急も、バディとの掛け合いで違和感なく共存させられている。
最終話まで残すところあと2話。次回はシリアスな内容になるようだが、白沢の父親の失踪事件の真相にも近づけるのだろうか。
■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter
■放送情報
ドラマ10『タリオ 復讐代行の2人』(全7回)
NHK総合、BS4Kにて、毎週金曜22:00〜放送
出演:浜辺美波、岡田将生ほか
制作統括:川田尚広、高橋練、岡本幸江
演出:木村ひさし、山本透
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.jp/p/ts/78YR8PJXJ5/