Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > LiSA「炎」、勢い止まらぬ『鬼滅の刃』旋風でバイラルチャートも首位奪取 “炭治郎の瞳”を通して聴く者の心揺さぶる歌詞

LiSA「炎」、勢い止まらぬ『鬼滅の刃』旋風でバイラルチャートも首位奪取 “炭治郎の瞳”を通して聴く者の心揺さぶる歌詞

音楽

ニュース

リアルサウンド

参照:https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest

 Spotifyの「バイラルトップ50(日本)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分(11月5日公開:10月29日~11月4日集計分)のTOP10は以下の通り。

1位:LiSA「炎」
2位:Broken kangaroo「水平線」
3位:おさるのうた「セイカツ」
4位:ALI「LOST IN PARADISE feat. AKLO」
5位:平井大「Stand by me, Stand by you.」
6位:NCT U「Make A Wish (Birthday Song) 」
7位:HALLOWEEN JUNKY ORCHESTRA「HALLOWEEN PARTY」
8位:BLOOM VASE「CHILDAYS」
9位:川崎鷹也「魔法の絨毯」
10位:Ryuki「僕の横で眠るキミが」

 今週のバイラルチャート1位を獲得したのはLiSA「炎」。本楽曲が『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の主題歌であることは改めて説明するまでもないだろう。日本国内の映画興行収入ランキングはもちろん、台湾でも封切り3日間の興行収入が歴代1位を記録するなど、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の躍進はコロナ禍で疲弊した映画業界にとって一筋の光明となっている。この勢いは映画だけにとどまらず、主題歌の「炎」もオリコン週間シングルランキング3週連続1位を獲得し、米ビルボードグローバルチャートにおいてもトップ10入りを果たすなど、国内外の様々なチャートを破竹の勢いで席巻している。そして、とうとうバイラルチャートにも『鬼滅の刃』の勢いは伝わってきたようだ。

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 本予告 2020年10月16日(金)公開

 テレビアニメ版のオープニングテーマであった「紅蓮華」のヒットも記憶に新しいなか、LiSAと『鬼滅の刃』の関係は不可分ものになってきている。楽曲を分析すると、両者の結びつきは単にタイアップによる形式的なものではなく、根本的な作品のテーマ部分で繋がっていることがわかってくる(作詞に関しては「紅蓮華」がLiSA、「炎」がアニメ・映画ともに劇伴を手掛ける梶浦由記とLiSAの共作)。「紅蓮華」では、悲劇のなかで守りたい大切なもののために立ち向かう主人公である竈門炭治郎の心情とリンクした歌詞世界が展開されており、いわば当て書きのような楽曲に仕上がっている。ストーリーが進むにつれて竈門炭治郎への感情移入が強くなり、次第に「紅蓮華」の歌詞への共感度も高まっていく構造だ。最終回に向けた物語とともに「紅蓮華」の人気も上昇していく様子は、まさにアニメ作品と音楽が高い次元で共鳴していることを象徴している。このように竈門炭治郎の〈強くなれる理由〉を映し出した「紅蓮華」に対して、本作「炎」はどうだろうか。

LiSA – 紅蓮華 / THE FIRST TAKE

 すでに『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』をご覧になった方や原作を読み進められている方であれば、「炎」というワードからある重要キャラクターを想起することだろう。無限列車編でストーリーの大きな役割を果たしている煉獄杏寿郎だ。煉獄杏寿郎は炎をモチーフにした「炎柱」と呼ばれる最上級隊士。詳細についてはネタバレも含むので控えるが「炎のように熱く燃える正義漢であるとともに、後進である竈門炭治郎らからも厚い信頼を得ている人物」であることを言い添えておきたい。

 「炎」の歌詞を紐解いていくと、「紅蓮華」同様に竈門炭治郎の瞳を通した世界が語られていることがわかってくる。そこには煉獄杏寿郎との出会い、そして別れを示唆するようなラインが垣間見える。たとえば〈僕たちは燃え盛る旅の途中で出会い/手を取りそして離した 未来のために〉というラインでは衝撃的な物語の展開を暗示しているし、冒頭歌い出しの〈さよなら ありがとう 声の限り〉という言葉はまさに竈門炭治郎から煉獄杏寿郎に宛てられた胸を締め付けられるような心情の吐露であるように感じられる。「紅蓮華」とは対照的に重厚なバラードに仕上がった本楽曲は、言うなれば鎮魂歌のような楽曲だ。別れの辛さや前に進むしかない葛藤は、これまでも多くの楽曲で触れられてきた普遍的な題材だが、無限列車編を鑑賞した後に本楽曲に触れると、映画のテーマと強く呼応したメッセージがより立体的に浮かび上がる。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は「炎」があってこそ完全なものになり、やっと消化できるようになるのではないだろうか。映画を鑑賞し、絶望感や悲しみをはらんだ観客へ救いの手を差し伸べるのが「炎」なのかもしれない。

LiSA 『炎』 -MUSiC CLiP-

 年末に向けて流行語大賞へのノミネートやクライマックスが迫るコミック最終巻の発売など、『鬼滅の刃』旋風の勢いはとどまることがなさそうだ。そして、昨年『NHK紅白歌合戦』へ初出場を果たしたLiSAの2年連続出場を期待せずにはいられない。国民的コンテンツに成長した『鬼滅の刃』が、暗いニュースの多かった2020年を大きな炎で明るく照らし出していく様子を全集中の呼吸で追いかけたいと思う。

■Z11
1990年生まれ、東京/清澄白河在住の音楽ライター。
一般企業に勤務しながら執筆活動中。音楽だけにとどまらず映画、書籍、アートなどカルチャー全般についてTwitterで発信。ブリの照り焼きを作らせたら右に出る者はいない。
Twitter(@Z1169560137)