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ヤバイTシャツ屋さん、SUPER BEAVER、WANIMA……ロックバンドのアティチュード示す、切実なメッセージが光る新曲たち

音楽

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リアルサウンド

 今、ロックバンドがアツいーーなんて言うと、コロナ禍でなかなかライブもできない状態なのに、何を言っているんだと思われるかもしれない。だが、こんな状態だからこそ浮き彫りになっているロックバンドの底力に、私は猛烈に支えられているのだ。今回は、そんな中でもメッセージやアティチュードに惹きつけられた3曲を紹介したい。

 まずはWANIMAの「Cheddar Flavor」。9月22日にZOZOマリンスタジアムで行われた『COMINATCHA!! TOUR FINAL LIVE VIEWING ZOZO MARINE STADIUM』において、「その翌日にミニアルバム『Cheddar Flavor』をサプライズリリースする」という発表とともに披露された表題曲だ。聴いてすぐに〈LaLaLaLaLaLa〉と軽く口ずさめるキャッチーさを誇っており、日々の足取りも弾ませてくれるような楽曲。これだけでも十分、今の時代に必要な音楽の役割を果たしていると思うのだが、この楽曲が含む意味合いはそこに留まらない。〈手伸ばして声枯らしてここに立ってんだ〉から思い出す、彼らが今のポジションに至るまでに重ねてきた数々の試練。〈生きる場所にこだわってる〉に表れている、バンドという居場所やライブのステージを彼らが切実に必要としていること。さらには〈反撃の隙を見計らってる/息を潜め戦ってる/己を奮い立たす〉に見える、彼らの内に滾る想い、そしてライブハウスや音楽シーンの現状。長くも重くもない一曲の中に、これほどズシリと意味を込めた彼らのスキルは圧巻の一言。そしてライブバンドとして窮状にぶつかりながらも、世の中を照らすほどのエネルギーを燃やし続ける彼らは、やはり本物だ。

WANIMA「LIFE」・「Cheddar Flavor」OFFICIAL MUSIC VIDEO

 次は、SUPER BEAVERの「突破口」。10月21日にリリースされたシングル『突破口 / 自慢になりたい』からの1曲だ。彼らはこの春、結成15周年を迎え、さらに6月には再メジャーデビューを果たした。2020年は記念すべき年なのだが、コロナ禍という状況である。それでも彼らは果敢に新曲の発信を続け、10月には日比谷野外大音楽堂にて『SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP~ラクダビルディング&ビルディング~』を有観客&配信という形で行った。そこでも披露された「突破口」は、曲名そのものが言い表す通り、先が見えない今、誰もが欲しているものではないだろうか。サウンド面でも、力強いドラミングを筆頭に、暗闇に穴を開けてくれそうなパワフルさを誇っているのだ。SUPER BEAVERは山あり谷ありの物語を歩んできたバンドだが、何よりもライブを重ねることで力を培ってきた。今年ライブ活動で足踏みをしたとはいえ、培ってきたものは衰えないことを証明しているような楽曲だと思う。さらには〈今をやめない 味わい尽くして 笑おう〉という、酸いも甘いも知る彼らだからこそ歌える歌詞も頼もしい。不器用なほど真っ直ぐなバンドだと思うけれど、〈正々堂々 威風堂々〉という生き方は、こんな時こそ大切だと思う。

SUPER BEAVER 「突破口」 MV

  最後に、ヤバイTシャツ屋さんの「Give me the Tank-top」。9月30日にリリースされた4thアルバム『You need the Tank-top』の1曲目を飾る楽曲だ。2部制など、通常とは違った方法をとりながら『“You need the Tank-top” TOUR 2020-2021』を開催中の彼ら。どんな状況でも楽しませてくれる彼らが、その存在感を思い切り詰め込んだのが「Give me the Tank-top」だ。カラッと明るくパンキッシュなサウンドに、ほんの少し切なさを垂らしたリアルなメロディ。「歌いたいことが溜まってるんだよ!」と言わんばかりに畳みかけてくる歌詞。そのすべてが、まるで砂漠に降るスコールの如く乾いた心身に染み渡っていき、「ああ、やっぱり私にはヤバTが必要だ!」という気持ちが沸いてくる。〈大きい声 合法で発し Going Crazy〉〈うるさくてくそ速い音楽を もっと浴びるように 着るように 聴く〉なんて、ライブハウスを愛するすべてのキッズが涙なくしては聴けないフレーズではないだろうか。そんな想いを、彼らは〈ほらまた帰っといで 激しく飛び込め/いつだって優しく包み込む Tank-top again〉と受け止めてくれる。今、行き場のないキッズーーもしかしたら彼ら自身もそうかもしれないがーーが、心身を解放できる場所がこの曲にはある。

ヤバイTシャツ屋さん – 「Give me the Tank-top」Music Video

 三者三様だとは思うが、どの楽曲からもロックバンドの真価が感じられる。私が大好きなロックバンドというのは、本当にヤワじゃないな、ならば自分も精一杯生き抜いていこうじゃないかーーそんなふうに思わせてくれるのだ。「今こそ、ロックバンドは必要だ」ということが、この3曲を聴けばきっとわかってもらえると思う。

■高橋美穂
仙台市出身のライター。㈱ロッキング・オンにて、ロッキング・オン・ジャパンやロック・イン・ジャパン・フェスティバルに携わった後、独立。音楽誌、音楽サイトを中心に、ライヴハウス育ちのアンテナを生かしてバンドを追い掛け続けている。一児の母。